ハングリー精神 vol.45
私の息子は、現代の子にしては珍しく
強いハングリー精神を持っていると思う。
今も、凄く過酷な仕事を自ら選び、東京で一人暮らしている。
入社して間も無くから、どんどん同期は辞めて行く中
ここで経験できる事を、自分のモノにしようと、必死でくらいついていく。
息子は、メンタルが強い方でも無いし、だからと言って凄く弱いわけでも無いけれど、何でそんなに、がんばれるのか?聞くと
自分の夢を叶えるため!なんだそうだ。
その夢からの逆算の道を、今歩んでいるだけ。
ただの通過点やから、今の仕事は習い事やと思っていると話す。
そして、その夢を叶えたい!と言う強烈なエネルギーはどこから湧いてくるのか。
それは、私が体験させた…いや、正しくは、体験させてしまった貧乏生活にある。
結婚して5年程で3人の子供に恵まれたので
子供が巣立つまでの貯蓄に必死になり
おかげで、どんな道へでも背中を押してやれるだけの
貯蓄は出来たけれど、決して贅沢な暮らしとは呼べなかった。
※子供の学費を親が全額普段する事に関しても
良し悪しはある。
その後、離婚し、しばらくは、私の実家でお世話になり
それなりに裕福な暮らしをしたけれど
その後、私が再婚し、蓋を開けてみると、家庭は火の車
自分の浅はかさを思い知った瞬間だった。
意を決して、立て直し計画を実行する他なかったのだが
その頃を思い出すと、真冬でも水で顔を洗い
寒さは上着でしのぎ、夏は暑いものやと誤魔化す。
6本入りの箱アイスを買って来た日には、サンタさんのプレゼントかと思う程喜び
一人一個のアイスを買った日には、最後の晩餐かと思う程、皆んなが噛み締めながら食べたのを覚えている。
再婚により、かなり自由な風潮の学校から、田舎の固い学校へと転校したため、沢山の自由を手放した
アパートのエントランスの天井からは、千匹を軽く超える蜘蛛がぶらさがっていて
『これだけ蜘蛛おったら…ハロウィンの飾り付けいらんなぁww』と笑ったら
『もぅええて』と全く笑ってなかった息子の顔を今でも思い出す。
そんな体験と、もう一つ、彼を突き動かす重要な原動力は、私の家族や親戚は、商売一家で、それぞれに会社やお店や、個人経営をしていて
成功している人を身近で見て来た事にある。
貧乏体験と成功が身近にある事。この両方が彼が頑張れる原動力になっている。
最近は、ハングリー精神のある若者が少ない
と言われているけれど
その背景には、食べ物に困らない
物に困らない、低価格で何でも手に入る
映画だって、音楽だって、低価格で楽しみ放題!
それが当たり前の時代。
昭和生まれの私達は、CDシングル一枚千円!
あー!もうちょっと我慢してアルバムが出るまで待つか!
と葛藤して買ったCDはエンドレスで聞いた!
そして、次のCDを買うために、映画を見るために
またコツコツとお金を貯める。
だから一つ一つの物に対する思い入れも深かったし
ドラマがあったし、また、それを手に入れたくて、必死で働いた。
そして、インターネットの普及によって
情報は欲しいだけ、手に入る。
わざわざ図書館へ足を運ばなくても
重い辞典を何冊も買わなくても
スマホに触れたら完結する。
そんな時代の中で、わざわざ苦労をしようと思う若者は少ない。
多様化が進み、街の本屋さんやネット上にも
好きな事を仕事に!好きな事をして生きる!
などの文字が飛び交い
何でも出来るし、何にでもなれるよ!
さぁ!何になる?と言われても、殆どの子が『わからない』と答える。
それは、縛りが無いがゆえの、苦しみなのかもしれない。
私の失敗はあくまでも失敗。
それは、正当化できるものではない。
けれど、今の息子を見ていると、人間にとって
不自由さを体験する事は、本当に自分が求める生き方と向き合うきっかけとなる重要なものだと、私は思う。
子供達には、辛い体験をさせてしまい、不甲斐なかったな…という気持ちは、今もありますが、それでも私が生き抜いて背中を見せ続けるしか無い。
強く、逞しく生きる我が子を、誇らしく思います。