カネコアヤノさん神奈川県民ホール公演
2023年が始まった寒い冬にカネコアヤノさんの新しいアルバムが出た。
タイトルは「タオルケットは穏やかな」
このアルバムを電車の中や寒くて凍えそうな街路樹、忙しい年度末の帰り道の中ずっと聞いていた。聞くたびにこのアルバムの深みにハマり自分にとって大切な作品となっていく。
そんな中、春に自分がいちばん好きなホール会場である神奈川県民ホールが、このアルバムを記念したツアーのライブ会場と決まった。
わたしは、嬉しいと思う反面、仕事で忙しくて行けるかなと不安を抱きながら日々を過ごしていた。
そしたら、バンドメンバーが離れツアーが延期し、10月の25日に変更となった。
少し悲しいなあ…と思い、それから短かった梅雨の時期や暑過ぎる夏の季節が来て、フジロックでカネコアヤノさんのバンド編成ライブを見て大号泣して、夏が過ぎ去り、10月がやってきた。
10月に入ってから、このライブは行く気が無くなっていた。それはフジロックでのライブが素晴らしすぎたこと。それを超えるとかではなくもう充分なのではないかと考えてたから。それとツアーのセットリストを見て、ほとんどフジロックでやった曲順だとわかり、いいかなあと思っていた。
しかし、日が近づくにつれて、神奈川県民ホールでやるカネコアヤノさんのバンド編成を本当に見なくていいのか?という疑問を何度も自分に投げかけた。神奈川県民ホールは5回以上行っている。1階の1番前の方の席で聞く音と1階の1番後ろの席で聞く音と3階のいちばん後ろの席で聞こえる音が変わらなくて、とても大好きな場所だ。
そんな場所でやるのに行かなくていいのか?もしかしたらここでやるのは最後かもしれない…悩んだ挙句、開催する1日前にチケットを取った。後悔しないために。
そして10月25日を迎える。
当日、仕事を早めに済ませて会場へ向かう。
着いて10分くらいで開場の時間が来てしまう。
わたしは入場して、安い100円のコインロッカーに荷物を入れて、県民ホール内の写真を撮りまくり、自分の座席に座ってSEを聞きながら待っていた。SEではニールヤングやレッドツェッペリンなどが流れていた。
19時になり会場が真っ暗になり、舞台袖からメンバーが出てきて演奏が始まった。
1曲目は「りぼんのてほどき」
この曲は「燦々」に収録されている。
「燦々」は2019年の今くらいの秋の季節に出たアルバムで、わたしはこのアルバムからカネコアヤノさんを聞き始めた。今日のライブで「燦々」に含まれている曲を4曲もやってくれた。
「明け方」「車窓より」など大好きな曲をやってくれて嬉しかった。その中でも「りぼんのてほどき」がいちばん好きな曲なので、一曲目から涙が溢れてしまう。
3曲目は「よすが」に収録されている「爛漫」
1曲目から3曲目まで涙が止まらずにいた。
2019年の秋に転職して不安なまま横浜の職場へ向かった日々や、2021年の秋に東京から神奈川へ引っ越して、もやもやした気持ちを沈めるために帰りの電車の中で「よすが」を聞いたりと、その時の情景といまの気持ちとカネコアヤノさんの歌にこもった気持ちが重ね合わさってぐわーーーっときた。それから「タオルケットは穏やかな」に収録されている曲を中心に演奏していく。
このアルバムの中でいちばん気に入っている曲が「眠れない」、バンドメンバーがせぇので演奏が始まった瞬間胸がざわざわした。カネコアヤノさんがギターから手を離して「宝物だね」とマイク越しで歌っていたのがいまだに忘れられない。
周りは立っていたが、わたしは座りながら聞いていた。天井を見ると照明が天の川のようにこの会場を包んでいて少し心が温かくなった。
「ゆくえ」をバンドアレンジで聞いて驚いて、それから「もしも」「車窓より」とだんだんバンドサウンドがゆっくりゆっくりとなっていった。そのゆっくりとしたサウンドの中に林さんの気持ち良いFuzzサウンドのギターソロやカネコアヤノさんの胸に刺さる歪みのギターの音にやられた。途中ながいドラムソロも入り、じわりじわりとオーディエンスが盛り上がってきて、それまで座っていた人たちが、ひとりふたりと立ち上がっていく。わたしもそこから立ち上がって聞いた。
「わたしたちへ」が始まると照明とオーディエンスが大盛り上がりし始めた。演奏もそれに負けないくらいの残響音、一声一声一音一音が気持ちとなり魂となりオーディエンスが盛り上がっていく。わたしはその光景を見ながら、なんて美しいんだと思いながら涙をたらたら垂らしていた。
MC無しで1時間50分演奏し終わり、「ありがとう。地元なので出来てよかったです。気をつけて帰ってください。」と話して、黄色いピックを客席に投げて会場から去った。オーディエンスは拍手喝采。素晴らしいものを目撃してしまった。
カネコアヤノさんのツアーライブへ行くのが、これがはじめてだった。セットリスト、カネコアヤノさんの歌声、バンドメンバーの演奏、音響、照明、オーディエンス、すべてにおいて芸術と言ってもいいのではないのか。
次回もしこの会場でライブがまたやるとしたら、迷わず行こうそう決めた気持ちの良い半月の夜でした。。。