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【インタビュー】蕎麦屋パートから住宅リペア職人への転身で自分らしさに近づいているケイナさん

家族も仕事もあって、休みもあって、友達もいて今日明日に困る状態でもない。
かといって、この仕事を10年20年続けていくイメージも持てない。このまま何も行動せずにこの停滞した状況が上昇するわけがないけれど、何をどうすればよいかも分からない…。

転職か…?転職しても、所属する会社が変わるだけで、今より状況が悪化するかもしれないと不安が浮上し、頭がグルグルして永遠ループ。

こういう悩みを抱えている人は多くいると思う。そんな人たちを尻目に、驚異の行動力で蕎麦屋のパートから住宅リペア職人に転身したケイナさんに起業までの話を伺った。

▼ケイナさんnote

前から起業には興味があったんですか?
ネイリストの資格を持っているのですが、20代前半で知人に声をかけられ、ネイリストで個人事業主として1年程働いたことがあります。
ただ、値付けや仕入れをどんぶり勘定してしまったので、最終的にほとんど儲けがない状態でクローズしました。

そこでやはり雇われる方がよいとなったんですか?
そうですね。その後も色々な仕事をしたんですけど、どうしても雇われると尊厳を踏みにじられる面があるなとも思い始めたんです。

「尊厳を踏みにじられる」とは?
私、凝り性な面があって、仕事でも何でもとことん突き詰めてやってしまうんです。
バイトでも求められている以上のことをやってしまい、勝手にやってしまっている自覚はあるので褒めてほしいとは思わないのですが、店長から少しでもキツイことを言われたりすると『こんなにやってるのに!』と、尊厳を踏みにじられたような気持ちになってしまうんです。

それで、雇われる雇用形態からの脱出を試みたわけですね。
そうです。2つの軸で考えました。
ひとつめは、自分の尊厳を守りたい。
ふたつめは、こだわらなくてもいいと言われる仕事をやらない。

まず、軸が決まったところでその次はどうしたんですか?
蕎麦屋で働いていたんですけど、店の前に大きな水車があるんですね。

ちょうど水車が壊れて修理が必要になったんですけど、水車って釘を使わないので普通の大工ではできなくて、宮大工に頼まないといけないんですよ。宮大工って本当に数が少なくて、いつも頼んでいるその人に頼むしかなくて。

その宮大工さんは、全然来てくれなかったり約束の時間もしょっちゅう遅れたりして、でも「チョリーッス」みたいに全く悪びれることなくごきげんに登場し仕事しているんです。

この宮大工さんが、自分のペースでごきげんに働いているのを見たのはひとつ大きなヒントになりました。

また、当時の蕎麦屋で働いていて思ったのが、飲食業は一日3回もありお客さんに一回ずつを大事にしてもらえない。だから建築関係など一生に何度もない買い物ならもっとお客さんもこだわるし、私のこだわりたいという気持ちが合致して気持ちよく仕事ができるんじゃないかと。

建築関係を目指そうとなったんですね。宮大工ってどうやってなるんですか?

調べたところ2つ方法がありました。
ひとつめは、現職人の下で10年修行。技術だけでなく、仏教についても学ぶ必要があり、通常住み込みで修行する方法。
ふたつめは、宮大工の学校に行く方法。ただし年齢制限があり30歳までで私には申し込み資格がありませんでした。
ひとつめも現実的ではなく、宮大工を目指すのはあきらめました。

宮大工をあきらめてどのように住宅リペア職人を目指したんですか?
周りの人に相談してみたところ、リペア職人、設計関係などの意見が出てきて、設計はあまり興味がわかなかったので、リペア職人を目指すことにしました。

リペアのフランチャイズに申し込み、約3ケ月かけて、研修所・自宅・オンラインでリペア職人のフランチャイズの研修を受けました。

研修を受ける一方で、銀行からの融資を受けるための準備、プライベートでは自宅の建築も同時進行されていました。

畑違い・未経験の仕事の技術習得、融資を含む開業準備、さらにご自宅の建築と、相当多忙な日々だったと思われますが、涼しい顔で「そこまで大変というわけでもなかったですよ」と言うケイナさん。

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研修が終わり、いよいよ開業。最初はどんな苦労がありましたか?
開業するだけでは、お客さんは来ないので営業する必要があるのですが、とにかく営業が嫌いだということにその時初めて気付きました。
営業しないといけないとなると蕁麻疹が本当に出てきたので、一週間で営業はやめました。

住宅リペアの加盟店としての仕事も、思ったより依頼が少ないため、他に住宅リペアの見積ポータルサイトに登録してそこからの集客を得たり、また自身のホームページを作ったりなど工夫をしている最中です。

他にも、実際に仕事を初めてからお客様の持ち物をお客様に見られながら修理をしなければならないプレッシャーがあることにも気づいたそうです。実際に仕事をしないと分からないことはたくさんありそうですね。

一方、お客様の持ち物を預かって自宅で修理する時は、好きな音楽を聴きながら納得するまでとことん完成度を高められることが出来て満足したそうです。

ご自身のとことんこだわりたいという気持ちを満たしつつ、値付けのバランスをどう取っていくかはこれからの課題だそうです。

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ケイナさんは、開業にあたり数百万単位の融資を受けているが、その返済やフランチャイズ加盟店料など、月々の支払を超える売り上げをあげるにはまだ至っていない。

ただ今は赤字でも特に不安はないと言う。それは「今まで過去なんとかしてきたし、なんとかなってきた」から。いざとなればなんとか乗り越えられる自信が今を支えている。

次の試みは、「フリマサイトで椅子など古い家具を仕入れきれいにリペアして販売すること」だそう。

リスクをとって自分の特性に合わせた働き方を自ら開拓し、イキイキと働くケイナさん。彼女には、リスクをとって行動を起こすことで未来が切り開けられることを教えてもらった。


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インタビュアーココロノトモは、あなたのお話を聞いて相関図を書く活動も行っています。


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