【有料級】どこにも書いていない歌ってみたの大切なこと
はじめまして。
音楽活動を行っている情音-kokorone-と申します。
音楽に携わって25年ほどになります。
今はミックス・マスタリングの依頼をメインにインスト制作や動画編集などいろいろなことをしています。
今まで歌ってみたのミックスで数多くの歌い手さんと関わりました。
その中で数多くの歌い手さんができていない大切なことを書いていこうと思います。
歌ってみたの録音からミックスを頼む際の注意点まで、一通りの流れです。
かなりの長文になるのと個人的な主観も含まれる、さらに厳しい意見も言うので気分を害される可能性もあります。
読んでる途中で「なんだこいつ」と思われるのであれば途中で遠慮なく読むのをやめてください。
ただ、最後まで読んで理解すれば歌い手として確実にレベルアップします。
それだけは頭の隅に置いておいてください。
本来であればお金を払って教えてもらうような情報もあります。
タイトルにはどこにも書いていないことのみ書かれているような書き方ですが、他の情報サイトにも書かれている内容も含みます。
説明するために書いてあった方がわかりやすいので、ご了承ください。
専門用語も出てきますが、知らない言葉は調べてください。
今の世の中ネットで調べれば出てこない情報はほぼないほど落ちています。
疑問に思ったことは自分で調べる自主性も大事です。
ではまず1つめの項目です。
①インスト音源のテンポとプロジェクトのテンポを合わせる。
音源のテンポを変えるのではなく、DAWでクリックを鳴らした際に音源と合うようにする、が正解です。
簡単に言葉で説明すると読み込んだインスト音源の位置をズラして調整すれば終わりです。
テンポがどうしてもわからない場合は調べましょう。
「楽曲名 BPM」「楽曲名 テンポ」
などで調べれば大体の曲はテンポを書いているサイトがあります。
ただネットに書いている情報もすべてが正解ではないので、合わないのであればテンポを少しずつ変更して合わせましょう。
コツとしては小節の頭になっている箇所(わかりやすい箇所で大丈夫です)でカットして前の部分を削除して、プロジェクトの小節の頭(仮に4小節目とします)に合わせます。
そうするとテンポを変えても4小節目の頭からはズレないので、微調整がしやすいです。
そうして合わせた後にカットした部分を前に伸ばせば切った部分が復活します。
DAWは読み込んだ音源は4分なら4分の長さで記録されていますので、カットして不要な部分を削除してもイベントの端っこにカーソルを合わせてドラッグすれば元の情報が復元されます。
どうしても合わせられない場合、どうすればいいか。
合うまでやるんです。
最初から完璧に出来る人なんていません。
みんなわからなくても経験を積んでこの曲はこれくらいかな、という基準がわかるようになるんです。
私もテンポ設定は早くても5分から10分は掛かります。
もっと時間を使っても無駄にならないくらい重要なことです。
クリックを聴くことの大切さは、例えばバンド経験があるような方だと生のドラムや人の演奏を聴きながら歌うことになるのでテンポ感というものが体に刻まれています。
そういった方でもレコーディングではクリックを聴くことが多いです。
例外でクリックを一切聴かなくてもとんでもないテンポ感で歌える方もいますが。
こちらの重要性は
「テンポ感が体に刻み込まれていないのにリズムのガイドとなるものがない、クリックはタイミングのガイド」
ということです。
例えばドラムが鳴っていれば何となくリズムは掴めても、演奏が無音になって歌う箇所やピアノ伴奏のみになった場合にどこを基準に歌えばわからないと思います。
その際にリズムのガイドになるクリックが鳴っていればどうでしょう?
「タイミングがズレてもタイミング補正でどうにかしてもらおう」
そう思っていませんか?
確かにすごくズレていても時間を掛ければ直せます。
ですがタイミング補正では出せない「間」というものがあります。
これは各々の個性になる部分で、歌い手の魅力になる部分です。
プロの歌手でもタイミング補正はしていますが微々たるもので、多くの歌い手さんはボカロ打ち込みをしているのかと錯覚するレベルで調整が必要です。
そこまで手直ししたものを「歌ってみた」と呼べるのでしょうか?
リズムがきちんと取れているだけで格段に聴こえ方は変わります。
それを自然と理解しているからタイミング補正を頼むのではないのでしょうか?
料理に例えると、素材の鮮度が良いものほど完成品のクオリティは上がりますよね?
鮮度が悪いものは手間をかければおいしくなります。
ですが鮮度の良いものと比べた時にどうしても越えられない壁が出てきます。
必ず鮮度が良いものを万人がおいしいというわけではないですが、お寿司だと多くの人が良い魚を使っている物がおいしいと感じるはずです。
歌もそれと同じで素材が良ければそれだけ最終的なクオリティは上がります。
リズムが悪くてタイミングを直したものときちんとリズムが取れている音源。
どちらが素材としてクオリティが高いかはわかりますよね?
そういうことです。
次に2つ目の項目です。
②ガイドメロディを用意する。
こちらも多くの歌い手さんが準備していないものになります。
「きちんと練習したからそんなもの必要ないよ」
そう思う方はプロのレコーディング現場を見に行ってください。
プロの歌手でも何か月も1曲の為に練習をして、それでもガイドメロディを聴きながらレコーディングする方が多いです。
そこまでしてやっと納得のいくクオリティになっています。
「カラオケでは歌えてる」
そう思う方も多いと思います。
カラオケでは耳障りにならない程度にガイドメロディが流れているからきちんと歌えている感覚になっているだけです。
スマホのDAWでもMIDI打ち込みはできる物が多いので、歌ってみたを録音する環境があるならガイドメロディを作るくらいできます。
「音程や音符の長さがわからない」
当たり前です。
そんなに簡単に理解できるなら音楽家になるのは容易なことで、もっと一般的な職種になっています。
難しいからサラリーマンのように多くの人が就けない仕事です。
これもある程度経験を積めば自然とできるようになります。
どうしてもピアノの音や機械音を聴きながらは歌いにくい、ガイドメロディを作るのが面倒だいうのであれば、原曲からボーカルだけを抜き出したものを聴きながら歌うといいです。
Youtubeなどのサイトから音源をダウンロードして、音源からボーカルを抽出するだけです。
きちんと調べれば無料でできます。
Youtubeから音源をダウンロードすることは違法と思われがちですが、個人的に利用する分には何の問題もありません。
これをネットにアップすれば問題になりますが、私も事前に調べて問題ないことを確認しています。
配布されているインスト音源と原曲では書き出しのタイミングが違ったりします。
その場合1つ目の項目で書いたイベントをずらすということをきちんとできるようになれば合わせられます。
ガイドメロディを聴きながら歌わないからピッチが迷子になって、ボカロ打ち込みをしていると錯覚するレベルのピッチ補正が必要になるんです。
ピッチ補正も大幅にずれていたりすると不自然な補正になってしまいます。
歌のプロでも何か月も練習してさらにガイドメロディを聴きながらレコーディングしているのに、歌を職業をしていない歌い手の方々が歌ってうまく歌えると思いますか?
リズムの面でも言えますが、歌い手の方々は基本的に練習時間が足りていません。
一度ミックスの依頼を受けた方にどれくらい練習しましたか?と聞いたことがあります。
1週間だと言われました。
短すぎます。
最低でも毎日2時間同じ歌を歌って1ヵ月は練習してみて下さい。
今までの歌ってみたのクオリティとは確実に違うはずです。
これも先ほどのお寿司の素材の話と同じで、元の素材が良ければクオリティは格段に上がります。
ミックスをしてもらって歌のレベルが上がっているように感じているかもしれませんが、加工の力です。
本当に歌のうまい方のミックスは、ほぼ触ることがありません。
もちろん処理はしますが、余計な処理をしない分それだけクリアな音になります。
写真と同じで加工して良く見せていても、実物を見たらがっかりしたと言われたらどう思いますか?
歌も同じで生で聴かせたら下手だったと思われたら悲しくないですか?
ピッチ補正で作られた歌声が「歌ってみた」と呼べるのでしょうか?
ハモリ生成も同じです。
ピッチ補正で作ったハモリ音源よりもきちんと歌った方がクオリティは段違いです。
ハモリの音程がわからないのであれば、音楽の基礎知識を付けましょう。
これも調べれば基礎的な部分はわかります。
お金をかけてもいいと思うのであれば、ボーカルスクールに通いましょう。
お金をかけたくないのであれば、時間を使いましょう。
何かを得るためには対価を支払う必要があります。
いい歌を手に入れるためには時間は必ず必要になります。
3つ目の項目です。
③録音して書き出した音源の確認。
私はX(旧Twitter)でもこの内容を何度も書いていますが、これができていない人が一番多いです。
書き出した後に自分のDAWに読み込んで、書き出したインストと頭出しはズレていないか、音割れしていないか、不要な音声は入っていないか、などの確認です。
これは製造業で例えると、出来上がった製品を検品せずに出荷していると同じことです。
そんな会社の製品を使ってトラブルになったら、また使おうと思いますか?
私なら検品すらできない会社の製品は使いたくありません。
歌ってみたのミックスの依頼を受ける中で、頭出しがズレていて確認とやり直しをしてもらうことが多々あります。
もちろん頭出しがズレていても直せますが、余計な手間がかかるのと、前述のクオリティの高いトラックになっていて素晴らしい「間」で録れていたとしても、頭出しがズレていると本来のタイミングに合わせることは難しいです。
「直せるならごちゃごちゃ言わず直してくれよ」
そう思うかもしれません。
ミックスエンジニアも人間なので歌っている方の姿勢も見ます。
過去にミックスの依頼をしたいけど歌が下手なのでミックスできるか確認して欲しいと言われました。
確かにあまりうまいとは言えませんでしたが、現状の歌ならこのくらいのクオリティになります、とサンプルを渡しました。
そこからその人はきちんと練習をして、すごくいい歌に仕上げてからミックスの依頼をしてきました。
確かに上を見ればもっとうまい方はいっぱいいますが、私はその練習をして上手くなりたい、という姿勢に感動しました。
お金をもらっている以上できる限りのクオリティにはしますが、そういう姿勢が見える方と見えない方はやり取りも違います。
姿勢が良い方は礼儀もきちんとしています。
お互い気持ちよく取引がしたいですよね?
ネットとPC、スマホの普及で以前よりも音楽は身近になりました。
だから音楽に携わっている身としては嬉しいです。
でも私たちのような人は真剣にやっているからこそ、きちんとした知識を身に付けてほしいと思っています。
わからなければ調べて、それでもわからなければわかる人に聞けばいいんです。
それよりも問題なのは「作られた歌」で満足してしまっている人が多い点です。
個人的に楽しむためだけに作っているのであれば問題はないと思うのですが、Youtubeなどに「作品」として上げている以上「アーティスト」になると思います。
そのアーティストの手助けをしているのがエンジニアです。
皆さんが好きなものが軽率に扱われたら気を悪くしませんか?
まともに練習をせず歌って補正をしてアップする行為は、音楽を卑下しているのと同等の行為だと感じます。
私は音楽が好きです。
なのでもう少し真剣に取り組んでください。
最後に練習方法について記載します。
それは録音して客観的に自分の歌声を分析することです。
音階を鍛えるトレーニングも効果的ですが、歌は表現力も大事です。
日本に古くからある演歌というジャンルがあります。
「演じる」「歌」と書きますよね?
まさに字のごとく歌の世界の主人公や歌っている自分など、さまざまなものを演じています。
演歌ではないジャンルでも演じることが大事です。
棒読みでいいならみんな歌手になれますよね?
歌の上手い歌手の方は皆さんそれぞれに演じているものがあるから表現できているものがあるんです。
それが説得力になり、「歌」というものになっています。
この表現力に差があるから、同じ歌を違う歌手が歌うと違う雰囲気になるんです。
自分の歌を録音して客観的にみると、ここはピッチが甘いな、とか、タイミングが甘いな、とかいろんな部分が見えます。
サビはもう少し迫力が欲しいけどどうすればいいんだろう、みたいに疑問になることもあると思います。
それでいいんです。
歌う前でも実際に歌ってみてからでもいいので、自分は最終的にこういうイメージでこの歌を表現したいという部分をまとめてみてください。
そうやってまとめてみると静かに歌う箇所、迫力を出す箇所、など頭の中で整理できて世界を構築しやすくなります。
それをしないでただ歌っているだけでは「歌」ではなく「声を音程に載せているだけ」です。
音楽は芸術です。
絵画は目に見える表現の芸術ですが、音楽は耳に訴える表現の芸術です。
もちろんそれだけではありませんが。
表現力豊かな作品の方が多くの人の目に止まると思いませんか?
そのためには考えることがいっぱいあります。
それをこの記事に書きました。
もちろんこれが全てではないですしこの通りにやったからといって必ずプロになれるとかアップした作品の再生数が伸びるというわけではありません。
ですが、音楽に対する姿勢を変えるだけで周りのサポートや見てくれる人が増えるのも事実です。
今まで100人以上の歌い手さんと関わりましたが、本当にうまいと思ったのは数人です。
私のように影響力がない人間が書いても心に響かないかもしれません。
でも25年間音楽が好きで続けてきた経験からの言葉なので、間違いだとは思っていません。
すでに全部実行している人がいるかもしれません。
それでも実力が伸びない方は違った目線で考えてみるといいです。
同じことを繰り返しても伸びないのであれば、違う方法を見つける時期になっているはずです。
ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます。
ここに書いたことを実行すれば必ずあなたのためになります。
一気に全部やろうとせず、1つずつ少しずつやっていけば必ず実力は伸びます。
音楽が好きだから歌い手になろうと思ったんですよね?
音楽は楽しいですが、辛いこともあります。
「音」を「楽しむ」ためにはひつような辛いことです。
もう一度、「歌」というものを考えてみて下さい。
よろしくお願いします。