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僕は、スイッチひとつで諦めずにすみました。

突然ですが、みなさんは入力装置というものを聞いたことはありますか?
装置?機械?僕は初めてこの言葉を聞いたとき大掛かりな機械かなと思いました。一般的に入力装置と言われるものは人が操作して入力するマウスやキーボードなどを指すようです。へぇ~勉強になりますね(笑)

また一つ。今まで出来ていたことが…

僕は、指先5センチの範囲でしか手先を動かすことができません。
筋力が徐々に低下していく進行性の筋ジストロフィーは今までできていたことも少しずつ自力ではできなくなります。また一つできないことが増えようとしていました。
それは、スマートフォンの操作です。今までは残された筋力を駆使して持ち方を変えたり、握りやすく押しやすい端末に機種を買い替えたり、スポンジや滑り止めを貼ったりと工夫をしながら自分で操作をなんとかしてきました。
なぜなら長期の入院生活を送っていた当時の僕にとってスマートフォンは外の世界を繋いでくれる唯一の手段でした。幼馴染や友人、家族、大切な人ともスマートフォンを操作できなければ連絡を取ることができません。
できないのなら代わりに人に操作をしてもらえばいいんじゃない?と思う方もいるかもしれませんが、大切なひとや友人に送るメールを代わりに打ってもらう訳にはいきませんよね(;^ω^)
自分で操作をして、はじめて本当の気持ちも込められると思うのです。
ですが、日に日に指先は動かなくなり、いよいよ自力ではスマートフォンを持つことが困難になったとき。出会いました。

入力装置「ワンキーマウス」との出会い。

当時入院をしていた病院のリハビリの先生から入力装置を提案してもらいました。この時、はじめて入力装置という言葉を耳にしましたが、医療や介護の現場では結構、耳にするようです。入力装置にはさまざまな種類があり 僕が教えてもらった入力装置は 「ワンキーマウス」という機器です。この入力装置は一般的なマウスやキーボードとは異なり、手に力が入らなくても軽い力で押すことができてスイッチひとつですべての操作を行うことができます。

ワンキーマウスでiPadを操作


筋疾患の僕たちにとって通信機器や電子機器を自分の意思で操作ができなくなることはとても死活問題です。このスイッチがあれば自分の手で持って操作ができなくなったとしても、あきらめることなく様々な可能性に繋げてくれます。
自分で持って、指先で操作することができなくなってきた時は悔しさよりも悲しさが大きく、もう打てない現実に落ち込む気持ちが大きかったです。でもこのスイッチに出会えて諦めかけていた自分での操作に希望を持つことができました。

「ワンキーマウス」ってどう使うの?

ワンキーマウスは、福士 幸弘さん(機器ルーム)が開発と製造を行っている福祉機器です。ワンキーマウスに限らず様々な支援機器や入力装置を作って販売をされています。

スイッチのカラーは「ヱヴァンゲリヲン」カラーにしてもらいました。

ワンキーマウスはすべての操作を1つのスイッチで行うことができます。
スイッチを短く押すとカーソルが右に動きだします。カーソルが動いている時にスイッチを短く押すと、移動する方向が直角に変わります。移動する方向は押すごとに右→下→左→上→右と変わってゆきます。四角形の動きを繰り返しながら画面上の目的の場所までカーソルを移動させていきます。スイッチを長く押すとカーソルは止まります。
スイッチは長押しや短い押しを組み合わせることで、ダブルクリックやドラック、選択、ピンチインアウトなど様々なことができます。
ただ難点なのが、クリックの組み合わせを覚えるのに時間がかかったことですね。カーソルの動きやタイミングを合わせるのはゲーム感覚で、設定の速さもどんどん使っていくうちに速めていき今では爆速です!!数少ない動かせる身体の機能を機器の力を借りることで自分で操作ができるようになることはとても嬉しかった。

できるようになったけれども大変!?

ワンキーマウスを使い自身で操作や文字の入力をすることは可能になりましたが、今までのように手で持って操作をしていた時よりも、どうしても時間がかかってしまいます。スイッチを押す回数も多いため指先や手の疲労が大きいのです。
例えば「おはよう。今日は天気がいいね。」と打つとしましょう。
手で持って打つなら5秒もかからないかもしれません。ですがワンキーマウスだと一文字一文字選択して打つため2分程度かかります。長文ならさらに時間も体力も使います。
手先の小さな動きから「できないをできるに変える」ので仕方がないことではありますが、使い勝手や効率がまだ中々追いついてこないのは歯がゆい。

スマートフォンやタブレットをワンキーマウスで操作をしてきましたが、もちろんパソコンだって操作することができます。普段のパソコン操作は、車いすに乗り、起きた姿勢で感度を上げた小さなマウスを手で握り操作をしています。

座位の姿勢で感度を高めたマウスを操作しています。

ですが、体調が優れないときや車いすに乗れないときには、ベッドの上でパソコンを使います。寝た姿勢でもモニターが見られるように角度調整が可能なモニター台(パソッテル)を使用しています。

臥床時のパソコン使用の様子

寝ている姿勢ではマウスを握れないので、ワンキーマウスを使います。車いすでもベッドの上でも体調によってパソコン環境を臨機応変に変えることができるのは仕事を続けていく上でとても重要だと考えています。
ですが、前にも述べたようにワンキーマウスでは、入力の速さやマウス操作の正確性で仕事の効率がどうしても下がってしまいます。体力も消耗してしまうので車いすの時とベッドの時とでは作業の順番などの工夫が必要になってきます。

新たなチャレンジ「視線入力」

ワンキーマウスでは補えないことは別の方法で補わせてみよう。ということで新しく視線入力装置を導入してみました

モニターの下に設置して視線と合わせます。

視線入力装置は視線の動きを読み取るセンサー(アイトラッカー:トビーPCEye5)とアプリケーションを導入することで使えるようになります。
目的は、マウスポインターを視線で動かす!クリックは今まで通りワンキーマウスで操作をしてとにかく早く文字の入力をできるようにしたい
でも、そんなに甘くなかった…
しっかり目で見て凝視しているつもりでもポインターはズレたところにとどまり、止まって欲しい時に動く。目を見開けば乾燥して目が痛くなり、気がつけば手のマウスを動かしている状態。アイテは手強いです。まだ、全然使いこなすことが出来ていないので普段使いができるように特訓していきます。もし視線入力をお使いの先輩方、アドバイスなどありましたらよろしくお願いします。

そして、今年度中に視線操作が上達したら密かに目論んでることがひとつあります。それは視線入力装置を使って任天堂Switchを操作すること。(桃鉄がやりたい!)上達したら自分へのご褒美にSwitchを買ってあげたいと思います。

未来の機器に期待

病気の進行により自分ではどうすることもできないことがたくさんあります。ですが、僕は、ワンキーマウスを使うことでスマートフォンやパソコン操作を諦めずにすみました。このワンキーマウスのように、僕たちのどうすることもできないどうしようもない状態から、どうしようもある状態に変えることができる素晴らしい機器が、これからもサポートしてくることを望み期待したいですね。





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