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対話vol.01 《30〜40代男女編》 後編 「震災後の感じた想い/双葉町の復興についての印象」

「対話で育む 心の復興プロジェクト」の第一回目のトークセッションの後編。前編に引き続き、双葉町で生まれ育った30〜40代の4人が双葉町に対する想いなどを語り合います。

・藤井さん(仮名) 男性
双葉町で育った高崎の同級生。現在は南相馬市で家族と暮らしている。
・篠田さん(仮名) 女性
現在はいわき市で暮らし、福島県の火力発電所に勤務中。高崎の同級生。
・池内さん(仮名) 男性
いわき市在住。双葉町の復興プロジェクトにも携わる。高崎の3つ下の後輩。
・高崎 丈 KIBITAKI代表
双葉町出身。元JOE’S MAN 2号・キッチンたかさき オーナー(新規店舗開店準備中)。日本酒のお燗を広める活動を展開中。株式会社タカサキ喜画を双葉町に設立。

震災後に感じた想いとは

高崎 みなさんは震災後、どんな想いを持ちましたか? なにか印象に残っていることがあれば聞きたいです。

藤井 このようなことを言っていいのかわかりませんが、私が最もショックだったのは、福島第一原発に対する手のひら返しですね。双葉町は原発の恩恵を受けて何十年もみんなが暮らしてきた町で、震災まで多くの人が原発に感謝していたはずです。なのに震災が起きた途端に、ものすごく原発を非難する風潮になって。

篠田 確かに。すごく悔しかったですよね、あれだけ叩かれるのは。双葉町の人たちは、みんな身内や知り合いが原発関連で働いていて、命をかけて復旧作業にあたっているのに、テレビやメディアであんなに叩かれて。

高崎 新しい原子炉の建設にもみんなが賛成していた町なのに、震災が起きた途端に「お前のせいだ!」っていきなり怒り出しましたからね。

藤井 本当に振れ幅がすごかった。それに、働いている人はそもそも悪くないですよね。みんな原発を安全に稼働させようとがんばって働いていたわけで、原発で働く人に対してまでバッシングがあったのはやっぱりおかしい。

池内 私もそう思います。もちろん地元に住めなくなったのは極めて悲惨な話ですが、今まで電力関係の仕事でみんなが生活をしてきた町なのに。

高崎 メディアは視聴率を取るために、一斉に原発を批判しましたからね。地元の人たちがみんな原発を恨んでいるわけじゃないのに、あたかもそのような印象を与える報道をする。原発と共存してきて感謝している人もいるのに、そういう人の想いは報道しません。それもすべて、視聴率を稼ぐストーリーに仕立て上げるためだと思いますよ。

池内 震災があっても原発に感謝している人もいるわけで、そういう人の声がまったく伝わってこないのは不自然ですよね。

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双葉町の復興に対する印象とは

高崎 双葉町は今復興を進めているわけですが、そのことについてはどう思っていますか?

篠田 正直な気持ちを言えば、復興についていろいろ考えてくれている方がたくさんいますが、私が求めているのは震災前の双葉町なんですよね。昔私たちが暮らしていた双葉町に戻ってほしいだけ。でも、今進んでいる復興は、昔の双葉町とは違うものをつくろうとしているように感じます。

藤井 今思えば、あのなにもなかった双葉町が良かったんですよね(笑)。人間的にもみんな素朴で。

池内 なにもなくても、ちゃんと生活できていましたからね。ただみんなで集まるだけで楽しかったですし。

藤井 でも、昔のなにもなかった双葉町に戻すほうが、やっぱり難しいんじゃないのかな。一度リセットされてしまった町だから、新しくつくり直すほうが簡単なのだと思いますよ。ただ、新しい双葉町がどこに向かおうとしているのかは、よくわかりませんが。

高崎 私の主観で言えば、町長の考えを含め、双葉町が目指しているのは新しく町を再生させる方向性だと思いますよ。

池内 復興でいろんな建物を建てていますが、温かみのない冷たい街になってしまうんじゃないかと私は危惧しています。新しいものをつくるのがもちろん悪いとは思っていませんが、それらが町民の想いとかけ離れてしまったらさびしいですよね。

篠田 私も同意見。「あれもつくりました」「これもつくりました」と見える形での復興は進んでいるけど、大切なのはそこじゃないと思います。

池内 震災前の双葉町に戻すのは難しくても、昔の双葉町を大切にしながら新しいものを取り入れていってほしいとは思っています。

藤井 新しく双葉町に参入する企業に対しても、「ビジネスのために来るんでしょ」って思ってしまうんですよね。双葉町に来てくれるだけでありがたい話なのでしょうけど、そうした贅沢な不満を持ってしまう(笑)。

高崎 町長や町は、そこの選別はかなり厳しくやったと思いますよ。単にビジネスのために双葉町に参入するのではなくて、復興に対するちゃんとした想いのある企業だけに参入してもらうことになっているはずです。

藤井 双葉町民ではない外部の人たちが完全に主導して復興を進めるのは嫌なんですけど、双葉町の町民だけで復興を進めるのもうまくいかないと思います(笑)。双葉町の人間だけでうまくいくなら、震災前の双葉町はもっと成功した町になっていたはずですから。

高崎 双葉町の町民は本音ではこう思っているという声を丁寧に拾い上げて、それを外から来る企業や人々の想いと融和させて、復興を進めていくのが理想の形だと思いますね。

藤井 町民は主張する人が少ないから、声を拾い上げることは大切ですよね。強く主張すると変わり者って思われる地域だったから。皮肉な話ではあるかもしれないけど、双葉町はゼロからの復興のモデルケースになる町だろうし。日本の、もしかすると世界の復興のモデルになるかもしれないわけですよね。

高崎 そろそろこの対話も終わりになりますが、双葉町の復興に関してなにか他に思うことはありますか?

篠田 私は走ることが好きなので、マラソン大会の開催などを通して復興に関わりたい想いはあります。

藤井 どうして走ることが復興になるの?

池内 人が集まりますから。今、マラソン大会は人が集まるんですよ。

高崎 震災で人のいなくなった町を走るのは、世界的に見ても話題性があると思います。双葉町は今、世界的に注目を集める町になっています。その状況を活かし、より良い形で復興を進めていくためにも、町民の声を聞きたいんです。今ならまだ間に合うので。

藤井 そうですよね。このタイミングで、いろいろ話し合ったほうがいいですね。

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