VOICE for FUTABA Season3 – Vol.3《元町民編》前編「震災から現在までの生活/双葉町や町民との関わりについて」
東日本大震災で被災し、双葉町からの避難を余儀なくされた方々のほとんどは、今も町外で生活を続けています。そうした元町民のひとりである稲本さんに参加いただき、Vol.3のトークセッションを開催しました。
震災から現在までの生活
髙崎 今日はトークセッションに参加いただきありがとうございます。私も双葉町出身で、両親が『キッチンたかさき』というお店を営んでいました。
稲本 私は髙崎さんのお父さんと同級生、ご両親のことは良く知っています。双葉町は小さな町なので、同級生でなくてもみんな顔見知りでしたけどね。
島野 稲本さんは、震災のときも双葉町で暮らしていたのでしょうか?
稲本 そうですね。双葉町で両親や子どもとみんなで暮らしていました。私は金融機関に勤めていたので、地震があったときは外回りに出ていました。釣具屋さんにいたのですが、すごい揺れだったので慌てて外に逃げ、立っていられなくて地面に座り込んだのを覚えています。
島野 その後、どのように避難生活に入ったのか教えていただけますか?
稲本 地震のあとは急いで帰宅して、その日は自宅で過ごしました。うちの家族は車のなかで寝ましたね。
髙崎 小学校や公民館ではなくてですか?私の家族は小学校に避難していましたが……。
稲本 近くの公民館に行ったら、もう人がいっぱいで。だから諦めて車で寝ました。それで、翌朝に家のなかを片付けようとしたら、防災無線で避難指示が出て。原発が危ないということなので、うちの家族もそのまま避難しました。そのときは「2〜3日したら戻って来られるだろう」と思っていたので、ほとんど着の身着のままで自宅を離れましたね。
髙崎 稲本さんが避難したのも川俣町ですか?
稲本 そうですね。川俣町の小学校に避難しました。まだ寒い時期でしたがダンボールと毛布だけで寝たので、「避難生活ってこんなに大変なんだ」と痛感しました。川俣の小学校にいたのは2〜3日です。「原発が爆発した」という情報が入って、みんながどんどん小学校からいなくなって、私の家族も川俣を離れることにしました。
島野 次の避難先は自分で見つけたのですか?
稲本 親類が栃木県のホテルを予約してくれて、まずはそこに2〜3泊しました。次に、娘が教えてくれた、被災者を受け入れてくれる老人ホームに行きました。その老人ホームには2週間くらいお世話になりました。無料で3食の食事も用意してくれて。
清水 それはありがたいですね。
稲本 ただ、ずっとお世話になるのも申し訳なくて、そろそろ出ていこうと思っていたときに、勤務先の金融機関から電話がありました。「会津支店でしばらく勤務してほしい」という指示だったので、会津に行きました。そこでアパートを借りて、3年ほど住みましたね。そのあと、金融機関を退職して現在も住んでいる仙台に移りました。
町井 仙台には、どうして移られたのですか?
稲本 長男夫婦が青森に避難していたのですが、どこかで近くに住もうということになりまして。それで、会津と青森の間の仙台にしました。今は長男夫婦と同じマンションの別の階に住んでいます。
双葉町や町民との関わりについて
島野 今も双葉町の元町民の方々とは頻繁に交流があるのですか?
稲本 仙台には、双葉町から避難してきた元町民がつくった「双萩会」という団体があります。会員は30名ほどいて、月に2回集まっています。毎回、15〜20名くらいの方が集まりますね。そこで、双葉町に関する情報を交換したりしています。
髙崎 仙台には元町民の方がたくさんいらっしゃいますよね。私が知っている方も何名かいらっしゃいます。
清水 10年以上経った今もみんなで集まって、つながりを維持しているのはすごく素敵ですね。
稲本 やっぱり双葉町の人とはなんでも話せます。健康のこともそうですし、被災者に対する賠償などについても境遇が同じだから話しやすいですよね。
髙崎 双葉町に行かれることもありますか?
稲本 行きますよ。高速を使えば1時間半くらいなので、2ヵ月に一度くらいのペースで行っています。お彼岸のお墓参りなどは必ず行きますし。
島野 双葉町の様子はどうでしょうか?以前と比べて随分と変わりましたか?
稲本 すごく変わりましたよね。もう震災前の町の面影はなくなってしまいました。やはり多くの建物が解体されてしまいましたから、同じ道を車で走っていても、町の景色が全然違います。
髙崎 国が建物の解体費用を助成したので、それでみんな自宅を解体してしまいましたからね。それが大きいのかなとは思いますが。
稲本 ただ、ずっと放置されていた家は、やっぱり解体するしかなくなってしまいますよね。私の家もいろんな動物が家のなかに入り込んでいて、あちこちカビだらけになっていましたし、再び住める状態に戻すのはとても無理でした。
―後編へ続く―
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