VOICE for FUTABA オンライントークイベント《レポート》 後編
2023年1月22日に開催されたVOICE for FUTABAのオンライントークイベント。レポートの前編では、参加者の「今後の双葉町との関わり方」と「復興へ向けて課題に感じていること」についての会話の模様をお届けしました。そして後編では、住民の帰町が始まった双葉町でどのようにコミュニティをつくっていくのかについて、みなさんに話し合っていただいた様子をお伝えします。
双葉町における「場」の活用法について
髙崎 僕は今、双葉町の実家をリノベーションしていますが、その実家の活用法について、みなさんからなにかアイデアやご意見はありますか?僕としては、アーティストに長期滞在しながら作品をつくってもらえるアーティストレジデンスにするのが良いかなと思っているのですが。
キャンドル・ジュン なんのためにアーティストに双葉町に滞在してもらうかという定義がちょっと難しいのではないでしょうか。私はギャラリーにしたほうが良いかなと思います。LOVE FOR NIPPONのメンバーのアーティストが双葉町で絵を描いたりしているので、そうした子たちが個展を開催することもできますし。双葉町で制作した作品を発表する場があるといいですよね。
髙崎 なるほど。そうですね。双葉町の「止まっている時間」に触れ、なにもしない時間を過ごし、その時間をアートで表現してくれたらおもしろいのかなと個人的には思っています。
島野 私はkibitakiクリエイターズラボみたいなのを立ち上げたいと思っていて、すでにイラストレーターによる作品やボーカロイドでの楽曲制作を進めています。歌い手が双葉町に集まってその曲を歌うとか、ダンサーが踊るとか、ひとつの作品から双葉町に関わる人を増やしていきたいとも思っています。ギャラリーとして使用するのであれば、そうした活動の作品を発表したりもできますよね。
トリシット(Rurio) 絵も食も小説も全部アートとして捉えることができるので、活用の方法には幅広い可能性がありますよね。ただ、髙崎さんの実家単体でアートに関する活動を始めても、どこまで持続性があるかということについては疑問に思います。僕としては、山形ビエンナーレなどの東北の他のアートフェスなどと連携することで、より活動が盛り上がっていくのかなとは感じます。
小林(Rurio) これはアートと関連しないアイデアですが、僕は、双葉町に気軽にみんなが集まれる場所があればいいなとずっと思っています。「双葉町ダルマ市」に参加したときにも改めて感じたのですが、僕らが住民の方々と会話できる機会がすごく限られているんですよね。住民の方々が談笑できて、そこへ僕たちが気軽に混じっていけるような場所があると嬉しいです。
髙崎 そうですね。僕のアートレジデンスのアイデアも、本質的には外部の人と住民が交流できる場所をつくりたいということなんですよね。関係人口を増やせる場所。そういう場所をつくって、「民間ベースで交流人口を増やしていますよ」ということを行政に示したいです。
小林(Rurio) スペースを運営していくには、収益をあげられる仕組みが必要になってきますよね。ただし、せっかくなら双葉町の温かなコミュニティの特性を活かした仕組みにするといいのかなと思います。例えばですが、仕事ができるコワーキングスペースをつくり、利用料は募金制にする仕組みなんかも考えられるのではないでしょうか。そうすれば、「髙崎さんにいつもお世話になっているから、今月はこれくらい寄付しようかな」という善意から、スペースにお金を払ってくれる方が出てくるはずです。
双葉町のコミュニティづくりへの想い
島野 「ふたばプロジェクト」さんの活動はコミュニティづくりと密接に関係していると思うのですが、小泉さんは今後の双葉町のコミュニティづくりについてどのように考えていますか?
小泉(ふたばプロジェクト) 私たちは双葉駅の旧駅舎を開放していますが、そこでは双葉町に戻ってきた住民の方々との日常会話が生まれています。「昨日、いちごの苗を買ってきてプランターに植えたよ」とか。そういうのは、すごく貴重な時間だと思います。
また、「ふたばプロジェクト」では、有形文化財に指定されている洋館を改修し、住民の交流など多目的に使える場にするプロジェクトも進めています。役場と連携し、“地域の公民館”としてみんなが集まる場所にしていく予定です。
キャンドル・ジュン 小林くんが先程言っていたように、現在のさまざまな活動が補助金ありきになっているのが課題であると私も思います。今日みなさんから出ているアイデアも、収益をあげる方法を考える必要がありますよね。経済的な活動を双葉町でしっかりやっていかないと。そう考えたときに、例えば髙崎くんが一番得意なことは飲食業なのですから、双葉町でバーを開業し、夜に交流できる場所をつくるといったアイデアなども検討すべきではないでしょうか。そうした場をつくるのには補助金は必要ありません。補助金に頼れば、どうしても活動に制約が生まれますから、補助金ありきの考え方はやめるべきです。補助金に頼らずに活動したい人が集まってくれば、それが正しいコミュニティーになっていくのではないでしょうか。
五木田 「ちいさな一歩プロジェクト」の会場から発言してくださる方がいらっしゃるので、これからコメントをお願いしますね。
現地参加の双葉町民 私は避難指示の解除にあわせて双葉町に戻ってきましたが、こうして双葉町のために活動してくれる若い人がいることに本当に感謝しています。先程から、みんなが気軽にコミュニケーションを取れる場についてお話しされていましたが、ぜひ実現してほしいと住民の立場からも思います。今双葉町に戻ってきている住民は年配の人が多いので、みんなで助け合っていけるようにコミュニケーションを取れる場は絶対に必要だと思います。そして、若い人の文化的な活動を楽しませてもらえるような町になると楽しいですね。
髙崎 学生も住民もお互いにコミュニケーショを取れる場がほしいと思っているなかで、今はそういう場がない。みんながどのようにコミュニケーションを取っていいかわからない状況のわけですよね。そうした課題を私たちで変えていきたいですね。
小林(Rurio) これは個人的なお願いになるのですが、住民の方々にはぜひ双葉町の歴史や文化を教えてほしいです。私たちが制作している雑誌は双葉町の歴史や文化を発信するというコンセプトでやっていて、町史などで昔のことを調べているのですが、文献では追いきれない情報も多いです。結局、町民の方からいろいろ教えてもらうのが一番だと思っています。みなさんが知っている町についての情報を共有してもらえると嬉しいですね。
加藤(まるごと文化祭) 私は双葉町の住民の方々から昔の町の思い出話などを聞くと、「ここには本当に素敵な町があったんだな」という想いで胸がいっぱいになります。これから双葉町がどうなるかはわかりませんが、みんなで想いをひとつにしてがんばっていければと思っています。私自身も、双葉町のためにできること、そして町民のためにできることは、なんでもやっていきたいです。そのためにも、町民の方々と交流し、みなさんの声を聞ける場が必要だと感じます。
髙崎 そろそろ時間になってしまいましたね。今日はみなさんありがとうございました。このトークイベントが、みなさんがひとつのコミュニティとしてつながっていくきっかけになればとも思っています。これからみなさんと新しい関わり方ができるのではないかとワクワクしています。これからも引き続きよろしくお願いします。