VOICE for FUTABA オンライントークイベント《レポート》 前編
2シーズン目の全4回のトークセッションを終えたVOICE for FUTABA。1年間の活動の締めくくりとして、2023年1月22日にオンラインでのトークイベントを開催しました。 2022年度のトークセッションに登場いただいた方々にご参加いただき、それぞれの想いを改めてお話しいただきました。また、双葉町でUR都市機構が開催した「ちいさな一歩プロジェクト」の会場でもトークイベントの模様をライブ中継。多くの町民にも観覧いただきました。
今後の双葉町との関わり方について
髙崎 今日はご参加いただきありがとうございます。今年度もみなさんとトークセッションを開催でき、いろいろと有意義なお話をお聞きできました。そのおかげで、昨年度よりもさらにプロジェクトを前進させられたと感じています。
島野 まずは、トークセッションにご参加いただいた後のみなさんの活動や、今後の取り組みの予定についてお聞きしたいと思います。
小林(Rurio) 「双葉町ダルマ市」にブースを出展して、双葉町の町民をはじめとしたさまざまな方々とお話しできました。町民の方々の気持ちも伝わってきて、双葉町は温かい人柄の住民が暮らしていた町だったことを再認識しました。今後については、そうした双葉町の住民や文化についての情報を世界に発信していきたいと思っています。マスメディアは“復興”という視点からの報道が多く、町の文化や歴史、人々の露出が少ないように思うので、私たちRurioはそのような報道されていない双葉町の魅力について伝え、「双葉ブランド」を創っていくことを目標にしています。そして、地域の正しい姿や魅力が伝わっていないという問題は双葉町に限らず世界共通だと思うので、私たちは双葉町を中心に活動しながらも、世界中のさまざまな地域の課題を解決していきたいという目標もあります。
トリシット(Rurio) 私はインド出身ですが、小林くんが言っていたようにまちづくりの課題はどこの国にもあるものだと思います。ゼロから再スタートを切る双葉町のまちづくりは、世界各地の地域振興に影響を与えられるはず。双葉町は世界中の自治体とつながることができると考えています。
川上(まるごと文化祭) Rurioと同様に、僕たちも「双葉町ダルマ市」に出展し、地元の方々の想いを聞くことができました。こうして住民の方々の声を聞く活動をこれからも重視したいと思っていて、僕は「双葉まるごと文化祭」プロジェクトのメンバーと一緒に、双葉町に滞在する機会をつくろうと思っています。そして、双葉町に戻ってきた住民の方々の声をじっくり聞きたいです。現在取り組んでいる就職活動が一区切りついたら実行に移したいと考えています。また、Rurioとはお互いの強みを活かし、協力しながら活動していけたらいいですね。
小泉(ふたばプロジェクト) 私は、双葉町に観光に来た方に充実した一日を過ごしてもらえるようになるといいなと思っています。具体的な計画があるわけではないのですが、観光地を訪れたり、なにかを体験したりすることで、新しい刺激を受けられる町にしていきたいです。双葉町は、震災や原発に関する「学びの町」とだけ思われがちなので、そこを少しでも変えていければと。
島野 山根さんは以前のトークセッションで、復興には「喪失したものを取り戻す復興」と「新しいものを創出する復興」の2つがあるとおっしゃっていました。今後、その2つをどのように融合させていこうと考えていらっしゃいますか?
山根(町議会議員) 観光で双葉町を盛り上げていこうと思い、私は2019年に会社を設立しました。どうして観光事業を選んだかというと、双葉町の個性を残さなければ外から来る人にとって魅力的な町になりませんよね。双葉町固有の文化などの地域の資源を再定義することを観光業でやりたいと考えていて、それによって2つの復興の融合が可能になると思っています。私は今、神社の氏子青年会みたいな組織に所属させてもらっていて、お祭りを新しい形で再び開催しませんかと提案しています。もともとあった文化を踏襲しながら、新しいものを創出する。そのように、喪失した昔の双葉町を再生するには、部分的には以前の双葉町になかったものを創造していく必要があるはずです。
髙崎 みなさんの話を聞いて、ジュンさんはどう思われますか?
キャンドル・ジュン Rurioさんが制作している雑誌を私も読みました。社会課題を克服する糸口が双葉町にあるのではと考えている点などは、私の考えとも近いのかなと感じました。そして、双葉町への想いがあるのは、本当に全員に共通していますよね。3月11日に開催するLOVE FOR NIPPONのシンポジウムにもぜひみなさんに参加してほしいです。
ただ、私がまちおこしのためのイベントなどに数多く携わってきたなかで感じるのは、理想と現実は異なり、その間には大きな壁があるということ。みなさんが双葉町の魅力や個性と思っていることも、外の人から見たら「他の地域と大きな差がない」と見られてしまうものです。そうしたときに、双葉町の最大の特徴はなにかと言えば、原発があった町であり、帰町が一番遅れている町であるということ。双葉町=原発のイメージがつくられていることが、むしろこれから双葉町のまちづくりを行っていくうえで強みになると思います。
双葉町の復興へ向けて課題に感じること
キャンドル・ジュン まちづくりの活動も収益事業にしていくことが不可欠だと思っています。収益化できないと継続していくことができません。また、大学生がいろんな地域でまちづくりの活動をしてくれていますが、熱量を持った大学生が卒業してしまうと、その団体の精神性みたいなものが失われていくのを何度も見てきました。なので、双葉町のまちづくりを進めていくうえでも、継続性が非常に大切になってくると思います。
小林(Rurio) 学生が団体を立ち上げても継続性に問題があるというジュンさんのご指摘は、まさにそのとおりだと思います。福島における活動でもそれを感じていて、補助金を使ってイベントを開催しても、その後になにも続かないケースがたくさんあります。僕たちRurioは、その補助金ありきになっている現状を変えていきたいと思っています。そして、それを解決できる場所が双葉町だと思っています。Rurioの雑誌も今は補助金で制作していますが、企業とのスポンサー契約などによって資金を調達し、持続可能な体制をつくっていきたいですね。
髙崎 どの地方にも素晴らしいプレーヤーはいるけど、それを縦割りの組織である自治体では上手くフォローできないのが問題だと僕は思っています。双葉町のまちづくりにおいては町とうまく連携し、ボトムアップの熱量が続く体制をつくりたいと思っていて、そのために必要なのは実績づくり。まずは民間で実績をつくれば、自治体がそれをサポートしてくれるはずです。だから、今年は実績をつくりたいと考えていますが、ひとりでつくるのは難しいので、みなさんと一緒につくっていきたいです。
島野 川上さんは先程、就職活動中と言っていましたが、就職後は双葉町での活動はどうする予定なのでしょうか?
川上(まるごと文化祭) 就職してもずっと双葉町と関わり続けたいと思っています。就職活動も、テレワークと副業を認めてくれる企業から就職先を探していて、いくつかすでに内定をいただけました。なので、卒業後は就職先の仕事と双葉町のまちづくりの両方に携わっていきたいと思います。
山根(町議会議員) 継続性を実現するには、川上くんの方法がひとつの「解」ではありますよね。私の会社も、メンバーの住む場所や働く時間に縛りを設けていません。さまざまな地域に居住しながら、双葉町での仕事に携わってもらえる体制をつくっています。
島野 トリシットさんとスワスティカさんは、卒業後はどうされますか? インドに帰国されるのでしょうか?
トリシット(Rurio) 私は今、博士課程の2年なので、来年卒業予定です。卒業後も双葉町に関わっていきたいので、帰国する予定はありません。もし帰国しなければならなくなったとしても、双葉町とはつながっていたいですね。インドのどこかのまちでコミュニティをつくり、それを双葉町とつなげていきたいです。
スワスティカ(Rurio) 私はインドに戻ったら、小学校や中学校で双葉町のまちおこしやコミュニティづくりについて紹介したいと思っています。双葉町のことを子どもたちに知ってもらいたいですね。
後編に続く
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