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VOICE for FUTABA−Vol.1 《「ふたばプロジェクト」若手メンバー編》前編「双葉町で働く理由/避難指示解除への想い」

2022年8月30日の避難指示の一部解除によって、新たな一歩を踏み出した双葉町。VOICE for FUTABAでは双葉町の町民が抱える想いをお聞きしてきましたが、2022年度は双葉町で活動する若い年代の人々の声を聞くことから始めていきます。第1回目の今回は、双葉町でまちづくりを進める一般社団法人「ふたばプロジェクト」の若手メンバーとのトークセッションを開催しました。

【参加メンバー】
・小泉 良空
「ふたばプロジェクト」の若手メンバー。双葉町の隣町である大熊町出身。

・加藤 奈緒
「ふたばプロジェクト」の若手メンバー。双葉町出身。

・中林 万穂子
「ふたばプロジェクト」の若手メンバー。神奈川県川崎市出身。

・髙崎 丈(ファシリテーター/KIBITAKI代表)
双葉町出身。元「JOE’S MAN 2号・キッチンたかさき」のオーナーで、2022年に「高崎のおかん」をオープン。日本酒のお燗を広める活動を展開中。株式会社タカサキ喜画を双葉町に設立、その中でKIBITAKI プロジェクトを立ち上げて双葉町の再出発における様々な活動を企画・プロデュースしている。

・官林 春奈(ファシリテーター)
双葉町出身。ポストプロダクション・地方テレビ局勤務の後、株式会社omegane(映像制作会社)代表取締役を経て現在はフリーランスの映像ディレククターとして活動中。千葉県在住。

・五木田 隼人/町井 智彦
UR都市機構 東北震災復興支援本部 福島復興支援部 地域再生課
原子力被災地での持続的なまちづくりに向けて、関係人口の拡大や誘導による地域再生に取り組む。町内外のさまざまな人が関われるコトづくりを目指し、多様な主体との協働・連携を進めている。

・島野 賢哉(オンライン参加/KIBITAKIメンバー)
株式会社サムライジンガ 代表取締役/プロデューサー
ブラジル、台湾における芸術文化を中心としたプロジェクトに携わる。クリエイティブサウンドスペース『ZIRIGUIDUM(ジリギドゥン)』創設者。
髙崎とともにKIBITAKI プロジェクトに参画し、様々な事業推進に携わっている。

双葉町で働く理由と活動内容

髙崎 「ふたばプロジェクト」さんは双葉町でまちづくりに関するさまざまな活動をしていますが、まずは、みなさんが双葉町とどのように関わり始めたのかをお話しいただけますか?

五木田 私たちは「ふたばプロジェクト」さんと一緒にお仕事をする機会も多いのですが、みなさんは多岐にわたる活動をしていますよね。今日はせっかくなので、さまざまな活動に携わる中でのみなさんの正直な想いや率直な意見をお聞きしたいですね。

小泉 私は隣町の大熊町出身です。祖母が住んでいたこともあり、幼いころから双葉町は身近な存在でした。私が地元に戻ってきたのは、地元の活性化に貢献したいという想いよりも、とにかく生まれ育った地元に帰りたいという想いからでした。現在は「ふたばプロジェクト」で双葉町のまちづくりに携わりながら、休日には東日本大震災・原子力災害伝承館で語り部の活動をしています。「ふたばプロジェクト」で働き始めたのは2021年の5月です。

加藤 私は双葉町の出身です。「ふたばプロジェクト」では2022年の3月から働いています。震災が起きたのは私が小学校6年生のときです。双葉町のために自分ができることをしたいと考え、「ふたばプロジェクト」で働いています。

中林 私は神奈川県の川崎市出身です。メディアで報じられているのを見て、私は双葉郡の文化に興味を持ちました。すごく人々の心が温かで、住民同士が心を通わせていた地域があったというのを知り、私も復興に関わりながら文化を学び、継承していきたいと思って「ふたばプロジェクト」で働いています。「ふたばプロジェクト」に入ったのは2022年4月です。

官林 双葉町出身の私としては、みなさんのような若い世代が素敵な想いを持って双葉町に関わってくれているのがとても嬉しいですね。

髙崎 この双葉駅旧駅舎の拠点で活動されているのは何名ですか? そして、みなさんはそれぞれどのような業務に携わっていらっしゃるのですか?

小泉 双葉町の旧駅舎に常駐しているのは、私たち3人を含めた4名です。私と加藤は主に情報発信などを担当していて、伝承事業は私がひとりで行っています。アイデア出しや協議が必要な案件に関しては4人で話し合いをします。

加藤 「ふたばプロジェクト」はさまざまなイベントなどに関わっていますが、私は本来、イベントを開催するスタッフとして働くのは苦手です(笑)。ただ、「ふたばプロジェクト」の活動は双葉町の復興のために行っていることなので、がんばって取り組んでいます。

中林 私は双葉町のファンクラブの運営などを担当しています。現在、ファンクラブの会員は330名ほどです。避難指示解除になったのをきっかけに、これからはファンクラブでの情報発信をもっと頻繁に行おうと考えています。

島野 すでに300名以上も会員がいるんですね。会員には、なにか特典などをご用意しているのですか?

中林 双葉町と継続的に関わっていけることを、会員の方には特典のひとつと考えていただけたらと思っています。そのための情報発信を私たちが行います。その他の特典については今後検討予定です。

避難指示の一部解除に合わせて双葉町で開催されたイベントの様子。

避難指示の一部解除への想い

髙崎 8月30日に双葉町への避難指示が一部解除になりました。そのことに対してはどのような想いを持っていますか?

官林 「ふたばプロジェクト」のみなさんも参加されていましたが、私も避難指示解除を祝うイベントには参加しました。町長の挨拶などを聞いて私も胸に来るものがあったのですが、日頃から双葉町で活動しているみなさんはどのように感じましたか?

中林 双葉町の復興に携わる方々がとても嬉しそうで、私も感動しました。後日、「さびしい」と言いながら準備宿泊を続けていた町民の方が笑顔になっている光景などを目の当たりにして、双葉町に新たな希望が見えてきたのを感じました。

加藤 中学生までしか双葉町で過ごせなかった私でも感動したので、私たちの親世代や祖父母の世代は思い出がもっと深い分、避難指示解除に特別な想いがあるのだろうと思いました。そうした世代の町民のためにも、自分にできることをしていきたいという気持ちが強くなりました。

小泉 実家がある大熊町の避難指示が解除になったときに、とても嬉しかったのを私は覚えています。同じような嬉しさを感じている方が、双葉町の町民の方にもきっとたくさんいるのだろうと思いました。

官林 町長が挨拶した際に、町民の方と内輪ネタで盛り上がっていたのに私は感動しました。「昔はみんなでキッチン高崎に行って酒を飲んで……」というなんてことのない日常の話なんですけど、これから多くの人にそうした思い出を双葉町でつくってほしいと思いました。

町井 私は思った以上に大きなイベントになって驚きました。ニュースで全国的に報じられて、双葉町が世間から大きな注目を集めていることを改めて実感しました。

島野 避難指示解除を受けて、みなさんの活動や心境になにか変化はありましたか?

小泉 双葉町を訪れた中高生に町を案内することも多いのですが、以前は「双葉町は日本で唯一、まだ誰も住めない町なんです」と案内していたのを、今は「住民はまだ少ないのですが、ようやく住めるようになりました」と伝えられます。それはすごく大きな一歩だと感じています。

中林 双葉町のある福島の浜通りには、人々の温かいつながりがあると私はずっと感じています。コミュニティは多様な人が存在する場所であることが大切だと思うので、さまざまな人が温かい気持ちでつながれる町に再びなってほしいと改めて思いました。

加藤 私がSNSで双葉町の情報を発信すると、かつての町民からも「その地域って立ち入りできるんだ?」というようなコメントをもらうことがあります。せっかく避難指示も解除になったので、避難先で暮らしている町民にも、双葉町の現状を知ってもらえるように活動していきたいです。


後編へ続く

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