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VOICE for FUTABA vol.03 《20代学生編》 前編「若い世代の双葉町との関わり/若者が考える復興のあり方」

双葉町のかつての町民の声を聞き、人々の心を置いてきぼりにしない復興のあり方を考えるVOICE for FUTABA。トークセッションの第3回目となる今回は、双葉町で生まれ育った2人の学生と一緒に、若い世代の町民と双葉町のつながりや今後の復興について話し合いました。

【参加者プロフィール】
・加藤 佑規
関東在住の大学院生。大学院では建築を専攻し、双葉町の復興計画をテーマに修士論文に取り組んでいる。
・澤上 美羽
福島県在住の大学生。双葉町の復興に関わりたい想いから、町役場への就職を目指している。
・高崎 丈 KIBITAKI代表
双葉町出身。元「JOE’S MAN 2号・キッチンたかさき」のオーナーで、2022年に「高崎のおかん」をオープン。日本酒のお燗を広める活動を展開中。株式会社タカサキ喜画を双葉町に設立。
・小祝 誉士夫
株式会社TNC 代表取締役/プロデューサー
海外70ヵ国で展開するライフスタイル・リサーチャーを運営し、国内外での事業クリエイティブ開発を行う。
・伊比 友明
UR都市機構 福島震災復興支援本部 復興支援部 地域再生課
原子力被災地での持続的なまちづくりに向けて、関係人口の拡大や誘導による地域再生に取り組む。町内外のさまざまな人が関われるコトづくりを目指し、多様な主体との協働・連携を進めている。

若い世代の双葉町との関わり

高崎 まずは加藤君と澤上さんが、現在どのような生活を送っているのかと、東日本大震災のときの年齢を教えてもらえますか。

加藤 僕は関東に住んでいて、現在は大学院生です。大学院では建築を専攻していて、修士論文は双葉町の復興計画をテーマにしています。震災があったときは中学1年生でしたね。

澤上 私は福島市に住んでいて、大学2年生です。卒業後は双葉町の町役場に就職したいと思っていて、大学では行政の勉強をしています。震災があったのは小学3年生のときでした。

高崎 今回のトークセッションの参加者を募るため、加藤君には双葉町時代の同級生たちにも声をかけてもらいました。ですが、参加してもらうのが難しかったようで……。

加藤 そうですね。震災から10年経って、みんなも新しい生活環境が当たり前になっているので、双葉町について考え直すことは簡単ではないと思います。避難指示が解除になったとしても、帰還する人はほとんどいないのではないでしょうか。

澤上 双葉町時代の友人たちとは、交流がほとんどなくなっています。震災時が小学3年生なので、私たちはすでに人生の半分は双葉町の外で過ごしたことになりますし、どうしても震災後に移住した土地で築いた友人関係のほうが中心になっています。ただ、もうすぐ成人式があるので、久しぶりに双葉町時代の友人とも連絡を取り合っています。

伊比 2人のような若い世代の方は、双葉町の記憶よりも避難先の記憶や思い出のほうが強くなっている世代なのかなと思っています。なので、上の世代の町民の方とは双葉町に対しても異なる想いを持っているはずですし、今後の双葉町の復興を考える上で2人の意見は非常に参考になると思っています。

小祝 震災から10年経って、みんな新しい土地での生活が安定してきた中で、また双葉町に思いを寄せるのは簡単なことではないですよね。ただ、せっかく生まれ育った町なので、若い人にもなにかしらの関係を双葉町と保ってもらいたいと思います。加藤君や澤上さんと連携して、復興に関するさまざまな企画ができたらおもしろそうだなとも私は思っています。

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若者が考える復興のあり方とは

伊比 加藤君は双葉町の復興に関わるテーマで修士論文を書かれているとのことですが、どのような研究をしているのですか?

加藤 駅の東側の空き地の復興計画をテーマにしています。町の建物の老朽化が進み、かつての町の景色が失われていく中で、どう復興を進めていくべきかについて考えています。役場の機能が駅前に集約されて、今後はさまざまなお店もできてくるとのことですが、駅の東側と西側がよい形で連携し、働く環境や住宅環境を整備していくことが重要ですよね。働く環境が整わなければ、特に若い世代は双葉町に戻ることはないと思います。

伊比 澤上さんは現在の双葉町の状況をどう見ていますか?

澤上 私はお墓参りで定期的に双葉町に帰ることがあるのですが、空き地が目立ってきている印象です。震災前は建物があったところが更地になっていたりして、そういうのを見ると寂しい気持ちになりますよね。記憶の中の景色がどんどん消えていくので。ただ、寂しがっているだけではしょうがないので、もう一度新しい町をつくっていくことが重要かなと思っています。

伊比 町民の方々はみなさん長期避難しているので、もう一度コミュニティをつくるところからのスタートですよね。そうしたコミュニティづくりに若い人に参加してもらうことが重要かなと私たちは考えています。

加藤 誰でも参加して自由に会話できる場が、定期的に設けられるといいのかなと思います。オンラインとかで、そのときに予定が空いていれば気兼ねなく参加できるような場があれば、若い世代の人も気軽に参加して自分の意見を言えるはずです。

小祝 そうやって集まって会話するときに、なにかテーマがあったほうがよいと思いますか?

加藤 ただ話をするだけでは思い出話になってしまいそうなので、テーマが決まっていたほうがよいと思います。テーマがあれば、それに関心を持った人が集まってくれると思いますし。

高崎 なるほど。避難指示が解除になっていろんな大人たちが双葉町にやってくると復興はどんどん進んでいくと思いますが、町民の声を汲み取らないで復興が進んでいってしまうのではないかと私たちは懸念しています。若い世代も含めた町民の声をしっかり聞いていける環境づくりが重要ですよね。

後編に続く

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