身の程
前回お話した“人の昼飯時に『脱〇ショー』を強制的に見せる猫”の後日談でありましてね。
あの陰惨な事件が起こりましたのが土曜日の昼下がり。週が明けました月曜日にAさんが出勤しますと、例の児童公園の外周部を彩っております立ち木の一本、その根元に“奴”即ちガンメタリックな毛色を持つデブ猫が居りまして、天に向かって伸びて居ります枝先をジッと見上げて居ります。
あまりにも真剣な様子で身じろぎもせずに見つめて居るもんですから、Aさんも釣られて立ち木のテッペンを見上げた。
するとそこには一羽の雀がとまって居りまして、“奴”めはどうやらそれを狙っているらしい事が分かったんです。
その立ち木というのが根元辺りの太さが直径20cmあるか無いかの、若いというのか細いのは間違いないんでありまして、勿論空に向かって伸びて行けば伸びて行くほど幹にせよ枝にせよ細くなって参ります。
「お前さ~、無理だって。雀に近寄れば近寄るほど木の枝がお前さんの体重を支え切れなくなるのは目に見えてるやん!?」
Aさんの言葉に反発するかのように、“奴”は一瞬Aさんの顔を見上げた刹那、パッと立ち木の幹に飛び付きますッて~とスルスルスル~と登り始めた。
これがまた体型に似ず速いの速くないの!
アッという間に雀との距離を残り50cm余りにまで詰めてしまった。
……ところがね、ここから先ってのは幹と言ったって生えて来てまだ間もない部分ですから、太さで言えば枝並みでしか無い訳です。
そこへデップリと太った“奴”が全体重を乗っける訳ですからワサワサワサ~ッ言うてグワングワン揺れるのも当然!
そら~雀も驚いて逃げて行っちまいますわね?
一人(?)取り残された“奴”はしばし呆然と雀の飛び去った辺りを見つめるしか無いんですが、まぁいつまでもほっそい木にしがみついても居られませんからスゴスゴと下りる事になります。
で、クルリと方向転換して気付く訳です。
「俺、高所恐怖症だった」
と。
そっからへっぴり腰でノロノロと、
「ナマケモノだってもっと機敏に動くゾ!」
ぐらいの、“石橋を叩いて壊す”並の慎重さでね。
ま、目先の欲に駆られず身の程をわきまえて行動せい!言う見本ですわな。
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