美月ちゃん

 まだ西川口が東日本最大の“性都”であった頃のお話。

 風俗店が建ち並ぶメインストリートに、人気オーディション番組の名前をそのまま店名にした“色々大丈夫か!?”なお店がありまして、客引きも立たせずに入りやすいから、という安易な理由で何度か通ったものであります。

 当時は突然平日が休みになる、という仕事をしていたもんですから、そんな休みの日の昼間に通っておりましてね。
 これは人によりますでしょうけれど、私、風俗店での待ち時間が嫌いでありまして、それと後で御説明しますが巷では『NK流』などと称された西川口特有のプレイ内容からしまして、何人もお客さんをこなした後の嬢と、いくらその都度シャワーを浴びて念入りに洗ってあるとはいえ、スるのは嫌だったので、行くときは正午の開店直後にしていたんであります。

 美月ちゃんは、職歴8年目になる、業界的にはベテランさんでありまして、開店直後の“早番”から夜遅くまでお仕事する『頑張り屋さん』でありましてね。
 二十歳から仕事を始めたといいますからこの時も…まぁ、そんなおトシであります。
 『NK流』と言いますのは“む~どんこ”さえ装着してあってアブ○ーマルなプレイでなければ何でもOKという事であります。
 風俗の世界ではお店によって、又は嬢によって、一般の方々が通常の“営み”でする事でもNGなプレイがあったりするんです……例えば「キスはダメよ」みたいに……けれども、西川口にはそれが無い。何でもアリだと。
 だからこそ西川口は東日本最大の“性都”たり得た訳ですがね。

 さて、私が美月ちゃんを「プロだな~」と感心しましたのは、とにかく彼女の【秘蜜の花園】……それで判らなければ山口百恵さん唄いますところの「お~んなの子の~一番大切な~モノ」の事……が、

 無味無臭

である事!

 これ、奧さん!なかなか出来る事じゃございませんでしょ?
 杉本彩さんが、
 「ソコ舐めてくれない男からは愛情を感じない!」
なんて名言を残されておりますが、男の立場から言わせて貰えば、
 「まずソコを無味無臭にしてから言いやがれ!」
って話ですわ。

 更に彼女から「来てよ!」とせがまれて大晦日の昼間に行ってみますと、これから閉店までずっと勤務だ、と言います。
 「いやいや、これからだと12時間だぞ?!12時間使いっ放しだと壊れちまわないか!?」
 当時は毎年大晦日にさいたまスーパーアリーナで格闘技イベントが開催されており、西川口は東京以西へ帰宅する際の途中下車の街となります。
 いい加減長時間労働でくたびれ切った所で格闘技観てテンションがヒートアップしとる連中なんぞ相手にしたら……壊れますやろ?自然とプレイも荒くなるだろうし。
……聞けば、他の嬢は皆帰省する人、友達や家族と旅行する人なんかで出払っとるらしい。
 大晦日のお店は美月ちゃんと他の二人で守っていくしかない。それも他の二人は早番・遅番の交替制だそうな。

 そんな頑張り屋さんの美月ちゃんにも唯一最大の欠点があります。
 それは、

 口臭がキツい

 ……何で“下のおクチ”は完璧な無味無臭に出来んのに、“上のおクチ”はおいにぃがキツいねん?!
 どっちか言うたら“上”の防臭の方が難易度低いやろ!!

 ちなみに、風俗店同様に今はそうではないのですが、この当時、風俗と並んで西川口名物だったのが【焼肉ライス】だったのです。
 今でも立ち食いそばチェーンの『どん亭』さんで焼肉ライスを味わう事が出来ますが、当時は西川口駅西口の駅前ロータリーに沿って立ち食いそば屋さんが三軒あって、その三軒何処でも味わう事が出来ました。
 スーパーのタイムセールで安く買ったお肉をお母さんが安物の焼肉タレを絡めてフライパンで焼いてごはんに乗っけた、そんなジャンクな、それでいてどんな高級店にも出せない美味さがあります。
 
 西川口に行く度にこれを食べないとおさまらない気がしたもんですが。
 ……ただね、プレイ直後に食べるのはオススメ出来ませんよ!

 思い出すのよ!リアルに!!

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