衣装
あの~、ここ最近で一番びっくりした出来事なんですけれど。
ご高齢の入院患者様がお亡くなりになりまして、危篤状態の時に駆けつけて来られたのがお子さん方。ま、詳しく詮索する訳にはいきませんが外見上から推測しますにお姉さんと弟さんなんでしょう。
お亡くなりになりますと担当医と御家族によります『死亡確認』というのが行われます。映画やドラマでよくある、医師が患者さんの脈とった後に「御臨終です」言う場面ですわ。
それで医師が死亡診断書を作成し、病棟スタッフが患者様を送り出すための身だしなみ“エンゼルケア(死後処置)”を行っている間、御家族は1階のロビーで待機しつつ葬儀社さんの手配をなさる訳なんですけど。
弟さんの方がね、1階に降りて来るなり、
「ちょっと(外へ)出て来ても良いですか?」
と訊いて来まして、こっちもそれは想定内でしたんで、「ああ、大丈夫ですよ」と。
でも気になりましたのは出しなに弟さんが、
「衣装をもって来ないと」
と呟かれた。
衣装?
これは想定外です。今まで私も10年近くこの仕事に携わって、衣装を取りに御家族が一旦外に出る、なんて事は一度も無いんですよ。
衣装って……まぁ、無理矢理考えますと、信仰されている宗教の関係かお家柄の家風かでご遺体に着させる“装束”が決まっているのかもしれません。
弟さん、5分もせんうちに戻って来られたんですが、手にね、45リットルの透明なポリ袋、その中に衣類がパンパンに詰まってるのを提げておられる。
明らかにご遺体に着させる装束などではなく、洋服やら靴下やらそんなのが“手当たり次第に捩じ込みました”と言わんばかりにギューギュー詰め。
で、お姉さんが座っておられる長椅子に座りますと、
「やっぱりちゃんと着替えないとね」
『え?衣装って、お前のかい!』
それで更にびっくりしましたのが、ゴソゴソ~ッ袋の中に手エ突っ込んでいの一番に取り出したのが、
まッ黄色のネクタイ
『え~ッ?!』声出そうになりましたよ。
そらね、ここは葬儀会場ではありませんし、これからすぐにお通夜が始まる訳でも無い。だから黒いネクタイとは申しませんけど……まッ黄色は無いんと違うか?と。
紺とかダークブラウンとか、もうちょっと落ち着いた色があるやん。
そいで、すぐその場で真っ裸になって着替えるのはやめいッ!と。
スーツというよりは思いっきりカジュアルなジャケットにパンツ的な服装でしたですが。
結婚式の新郎新婦じゃないんだから、こういうタイミングで『お色直し』は必要か?
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