プロの視力検査

 眼鏡をね、10年前からかけ始めたんです。
 老眼鏡では無しに。
 まぁ、20代の後半あたりから「見難いな~」とは思ってたんですが仕事にさしたる影響は無く、ゲームのやり過ぎ、後にはケータイの見すぎで視力が落ちただけだと思い込んでましてね。
 2000年前後って『自分で好きな着信音打ち込めますよ』と言うて《着メロ本》というのが流行りまして、しまいにはコンビニの雑誌コーナーにも列ぶ騒ぎになり、本とケータイの画面と両方ガン見しながら打ち込んでたもんですわ。

 で、それから10年15年放置してまして、これはいよいよ視力低下と老眼がダブルで来たな、と。
 ところがね、街中で老眼鏡を試してみても、ルーペ言うんですか?拡大鏡。あれをかけてみても、目の前がね、曇りガラスにウォーズマンのベアクローで引っ掻き回したような景色にしかならんのですよ!
 でもこの仕事を始めてパソコン画面を見た時に、一文字一文字が滲んで熔けとる、と。
 これはイカン!

 それで眼科に行ったんですよ。「眼鏡、作りたいんです~」言うて。
 そしたら「診察の前に視力検査をしましょう」となって座らされたんです。薄暗い部屋に通されて。
 ……プロの視力検査は違いますよ!
 学校で、とか一般的な健康診断の時みたいに、
 「そんなん持ち出したらオフクロさんにド突かれんで!?」
みたいな杓文字で片目隠して…そんなんじゃない!!
 普通の眼鏡フレームの三倍ぐらい分厚い、レンズ無しのをかけさせられまして、なんでそんなに分厚いかと言うとそこにレンズを次から次へと差し込んで行くからでありましてね。

 検査技師さんなのか若手のお医者さんなのか定かではありませんが、担当してくれたのが【だいたひかる】さんを20倍根明かにしたような、テンションが不自然に高いお姉さんでありまして、検査表の指されたやつを答える度に「そうで~す」…これはまぁ、エエとして…「正解!」…こっちは別にクイズやってる訳じゃない!ッちゅ~ねん。
 で、この視力検査がガッツリ1時間。
 流石に最後の方は「そうで~す」の度にカチンときてましたですがね。
 
 ようやく終わりました時にお姉さんが、
 「あ~、《らんし》入ってますねェ」
 ね、1時間イライラさせられた挙げ句にこんな事を女性から言われたら、そら~男としてここはビシッと返したらなあきませんやん?
 だから言うてやりましたがな!

 「男なのに?!」

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