お前が言うな!
以前もお話した事があるかと思いますが、私、どエラい親不孝者でありましてね。
25年ほど前ですが、そんな私を諫めよう、説教しようというので母親の弟にあたります叔父に呼び出されまして。
指定されたファミレスの四人掛け席に着きますともう叔父は来ておりまして説教がすぐに始まったんですが、どうにも話が入って来ない。
私の対面に叔父が居る訳ですが、その横に見慣れない女性が座ってるんですよ。
色白で大きめの眼鏡をかけたポッチャリさんな、明らかに叔父より10歳以上は若いであろう“全身これ地味”としか形容しようのない女性が。
『誰だ?嫁さんじゃないし……』
私が記憶している叔父の奥さんは色黒でガラッガラに痩せた中南米系の「お父さん、ゴメス?」と言いたくなるようなファンキーな性格の方でして、この時最後に会ってから15年以上経ってましたから中年太りやらホルモンバランスの変化やらでポッチャリさんに変貌する可能性は否定出来んとしても、ですよ。
色黒から色白には変わらんでしょ?
洗濯物じゃあるまいし!
で、悶々としているうちにその女性が御手洗いに立ったタイミングがあって、思い切って叔父に訊いたんです。
「あの人、誰?」って。
そうしたら叔父が事もなげに「嫁だよ」。
「いやいや、アンタの嫁さん言うたら色黒でスリムを超越した痩せ方しとったやん?」
「あ、お前知らないか。俺、離婚してな。彼女と再婚すんだよ」
「離婚した?いつよ」
「ん~、半年前かな?そうそう、彼女な、お前と同い年♡」
…………半年前と言うと、老老介護の果てに叔父の両親にあたる祖父母共々重度の認知症となり瀕死の状態で発見されて大騒ぎになった頃です。
「で、あの人と付き合ってどれくらいなん?」
「ん~、かれこれ1年になるかな」
これ聞いた瞬間、私のコメカミ辺りでプチン!と音がしましたわね。
どう考えてもあの“ポッチャリさん”との不倫がバレて色黒の“ガリガリさん”から三行半を突き付けられた、その上での離婚でしょ?
それも両親が生きるか○ぬかの瀬戸際に立つ騒ぎの最中に!
「なぁオジキ。確かにワシも大概親不孝じゃが、親が生きるの○ぬの騒いどる最中に娘みたいな年齢のネエチャンと不倫して離婚とは…………お前が言うな!!」