カラオケ
30代の前半までは結構飲みにも行きましたんでそこでカラオケもよく唄いましたですが、スナック……当時はキャバクラ、あったかもしれませんがそれほど認知されてなかったんじゃないですかね。
今は飲みに行くと言っても焼き鳥屋さんとか回転寿司とかですからトンと唄う機会もありませんし、カラオケボックス言うのも自発的に行こうとまでは思わないんですよ。
上手いか下手かで言いますと上手い部類なんじゃないですかね。
当時行きつけのスナックで、基本カラオケは1曲100円の有料だったんですが、ママさん……小柄で小太り、髪の毛が金に近い茶髪でクリンクリンだったせいで後ろ姿はピグモンにしか見えない……の「アンタは別!」言う“ピグモンの一声”で私だけ何曲唄ってもタダでしたから。
その代わり月に1曲ペースで“課題曲”を覚えさせられるんですけどね。懐かしのムード歌謡とか当時飲み屋さん界隈で流行ってた大人歌謡とか。
同じお店に居合わせた別テーブルの見ず知らずなおばさまから「デュエットして頂けませんか?」なんて声が掛かったりもしましたけど。
その時居た会社の取引先の新年会というのが毎年『成人の日』に行われまして、とある割烹料亭の大広間で大々的に催されるんですけどね。
一人づつの御膳がブワーッと列びまして、子会社の私なんかは隅の席で小さくなってるしか無かったですが。
でまぁ所詮は素人が催す宴会ですから偉いさんの新年の挨拶やら、前年の功労者への表彰なんかがチョロチョロッとあるだけで大半の時間はカラオケ大会に費やされるのがお定まり。
その年、たまたま私も表彰されておりまして「表彰されたんだから唄え!」と。
表彰とカラオケに何の関係があるんじゃい!?言うんでカチンときまして、ホンイキで唄うとお店のお姉さんですら涙をポロッと零す、やしきたかじんさんの『やっぱ好きやねん』で一発カマしてみたんですが、それで場の空気が「オッ?!」というんで変わった。
私としてはそれで満足で、後は宴会終了まで大人しくしとこ、思ってたんですけどね。
暫くしたらマイク🎤突き出されまして、アン?と思ってマイク持ってきた兄さんの顔を見上げましたら兄さん、顎でクイッと主賓席……社長さん会長さん御一家の席ですな……を示しまして「もう一曲、ご指名です」。
『ご指名って、わしゃホステスか!?』
これでカッチーン、スイッチが入りましたんで今度はガチのホンイキで、前川清先生の『男と女の破片(かけら)』を。
唄い終えた途端に主賓席から“極彩色の何か”がこっちに向かって驀進して来るのが見えまして『何かいな?』と思いますと晴れ着姿の会長夫人(少なく見積もっても70オーバー)が振り袖振り乱しながら……70オーバーの人妻が振り袖って、エエの?……そこいらの御膳を蹴ッ飛ばさんばかりの勢いで突進して来てたんですな。
怖いですよ。顔がマジですから。
そいでゼーゼー息きらしながら私の前まで来ますと、ポチ袋にすら入れない裸の10万円を私の手に握らせまして泣いとるんです。
「良かった……久し振りに濡れたわよ🖤」
『買われるんかな?』思ォてゾッとしましたですが。