「恵」のひと

 私の経験から申しますとグループホーム、介護施設と名の付く所で利用者さんやその御家族、或いは一般の方々が期待する事やそうした所謂『社会福祉法人』と聞いてイメージする事を叶えている事業所というのは“ごく僅かしかない”のが実情ではないかと思うんです。
 そうした所にお勤めの、特に“現場”で頑張っておられる方に限れば真摯に利用者さんと向き合い、業務に励んでおられる方もいらっしゃるかと思います。
 しかし、肩書き持ちの上層部については殆どが『利用者は人じゃなく金と思え』と考えている輩に思えてならんのですよ。

 例えば今話題の「恵」グループですと元職員の証言によりますれば、ここが運営する施設に入所された利用者さんは月額6万6000円を利用料として支払いますが、このお金は一度全額グループ本部に集められ、その後必要な経費として各施設へ再配分されますけれど、その時には利用者さん一人当たりの経費が1/3、およそ2万2000円しか配分されていない、といいます。
 具体的には、利用料金の内訳として食費は月額2万5000円と示されているのに実際は月額5128円しか施設に降りてこない、と。

 更には国や自治体から受け取る報酬を過大請求もしていて、愛知県内で展開する5ヶ所の施設で総額4億円の不当請求が分かっている、といいます。

 しかし、ではこの「恵」グループだけがこのような“福祉”や利用者さんを食い物にしてるのか?となりますと、これは【氷山の一角】に過ぎないと考えます。
 厳正に監査してみればこんな事をやっている福祉団体は、額の多寡や規模の大小はあれど、いくつも出て来るでしょう。

 何故私がそう思うかと言いますとね。
 こうした福祉団体が運営する施設は大抵病院と提携しているものですわ。ホームページや“ご利用案内”のパンフレットに「医療体制は万全!ご安心を!!」の正体がコレです。
 まぁ、病院側からしても患者さんが安定供給されるメリットがありますからWIN-WINの関係ではありますけど。

 しかし内情はなかなかに酷いもので、夜間や休日に怪我をしました、具合が悪いんですというんでヘルパーさんや看護師さんから病院に診療依頼の電話が来る訳ですが、その病院に罹った事があるなら診察券を片手に電話するのが一番手っ取り早いんですよ。
 診察券には病院が患者さんに割り振った通し番号、所謂IDが書かれていますからそのIDさえ教えて貰えればカルテを見る事が出来て患者さんのプロフィールから病歴、最近の状態などが即座に分かる訳です。その上で患者さんの症状がこの病院で対処可能か、一般病院では扱い切れない危険な状態かが判別出来て患者さんにベストな医療体制を敷く事が出来ますのでね。
 ところが、仮にも“プロ”である看護師さんや介護ヘルパーさんにもかかわらず診察券を携えて電話してくるケースは皆無で、それどころか患者さんの年齢や生年月日すら言えず「え、年齢?ん~……80歳、くらい?」って、年齢に「くらい」なんてあるか!?
 仮にもプロが、病院で受け入れの可否を判断する材料ぐらい分かってる筈なのに一般のいわば“素人さん”と同レベルな電話内容っていうのは真剣さと緊張感をまるで持ち合わせておらん!としか言えませんわな。

 で、いざ病院に来ました。
 まぁ、病院に担ぎ込まれたというのでご家族も駆けつける訳ですが、ご家族が到着はらた途端に「じゃあ私はこれで」と言って病院まで付き添って来た施設スタッフはそそくさと帰って行く……そういう施設も少なくないんです。
 つまり施設の当直スタッフが一人しか居ない為、現状で施設は管理スタッフが無人であり、一刻も早く戻らないといけないんだそうで。
 でも、中には車イスの方も居ればストレッチャーで運ばれて来た半寝たきり状態の患者さんも居られて、処置が終われば施設に帰らないといけない。
 そうなるとご家族が送り届ける訳ですが、車イスやストレッチャーごと送り届けるとなると一般のタクシーでは無理で介護タクシーを手配しないといけないんですが、これがご家族が自力で介護タクシーを探して呼ばないといけない……なんて所も実際にあるんです!

 更には患者さんの保険証を拝見しようとすると本証ではなくそのコピーを持って来る施設もあります。ま、お預かりしてる物ですから万が一にも紛失なんて事態だけは避けないといけない。それは分かるんですがね。

 「なぁ、最悪コピーだとしてもそれは良しとするが、せめて有効期限内のコピーを持って来いや!これ……3年前に切れとるやないか!!」

っていう事を何度も繰り返す不誠実な所もありましてね。
 月額利用料金がかなり高額な、所謂“高級施設”という所ですけど。

 とはいえ、じゃあ受け入れる側の病院が健全か、となりますと……まぁ、そうとは言い切れんものがありますけどね。
 経理の不正はそこまで無いかもしれませんが、やはりスタッフの“慣れ”からくる患者さんへの雑な対応ですとか、上層部のコスト削減至上主義ですとか。

 結局国や自治体が多額の報酬……補助金と言い換えても良いと思いますけど……を出す以上は、それに見合う厳正な監査と運営実態ですとか経営状況をキチンと把握する調査をしないといかんと思います。
 一般人である利用者さんのご家族はそこまでやりたくても出来ない訳で、その分も“おカミ”がしっかりしないと駄目でしょ?


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