性差別と流体力学

 パリ五輪に向けた米国陸上競技代表のユニフォームが公開され、これが大不評を呼んでおりますそうで。
 曰く、
 「女子のハイレグ(の角度)がキツ過ぎる!性差別じゃないのか!?」
 ……ま、男子のをハイレグにする訳にはいかんでしょ?“茎”は何とか隠せたとしても“梅干し2つ”がブラ~ンと垂れ下がるのは不可避な訳ですからね。

 陸上競技ですと屋外競技ですから風の抵抗を、水泳の競泳競泳ですと水の抵抗を考慮する必要があります。
 どちらも抵抗を最小限に抑える為にユニフォームは極力身体にピチーッと密着し、布面積も極力小さくしたい。
 究極の理想は“全裸”なんですわね。
 
 とはいえ、ここに競技そのものとは全く無関係な“外野”との摩擦が生まれるんであります。
 全裸に近い女子選手目当ての『カメラ小僧』達。
 何しろ競技そっちのけで、
 「お前は真っ昼間から天体観測でもしとるんか?!」
ってぐらいの望遠レンズを装着したカメラを構えてお目当ての女子選手の胸や股間に“ズームイン”したまま凝り固まっとる訳ですからね。
 ……まま、カメラ以外の部分も凝り固まってるとは思いますがね。

 ただ、陸上競技や競泳の選手は可哀想だなとは思いますものの、これが集客やメディアの注目度が生命線となるプロ競技となりますと「ん?」と首を傾げてしまう所もありましてね。
 具体例を挙げますとその昔、プロ化以前のバレーボール女子で国内トップのチームがハイレグのユニフォームを採用した事があり、当時看板選手だった大林素子さんや中田久美さんは「恥ずかしくて嫌だった」と話しておられます。
 その前年までは所謂“短パン”だったのを急にハイレグにした。屋内競技で風や水の抵抗などは関係無い。競技の性格上からの必然性に乏しい。
 そうなるとその狙いは……言わずもがな、でありましょう。
 また、昨年来選手個々人や主催団体から抗議や警告が活発なのが女子プロレスでありますけれど。
 これに関しては多少他の競技とは異なる面がありまして、デビューしたての新人さんはともかく、殆どの選手は個人個人好きな形態の、好きなデザインのコスチュームを着用されてますしそうしたコスチュームも個性の一部になっている。
 所属するユニットや団体で統一されたユニフォームを強制されている訳ではないんですな。
 勿論、試合そっちのけで選手の胸や下半身ばかりに注目したり撮影する輩のお行儀が良いとは思いませんし、観戦マナーとしては如何なものか、とは思います。
 しかし、そうした注目のされ方が嫌なら回避する手立てはある訳で、それをせずにマナーの悪い輩を一方的に犯罪者呼ばわりするのも……

 陸上競技や競泳に関しては、どうなんでしょう?良いタイムを追い求めるタイプのユニフォームと風や水の抵抗は多少受けてしまうけれどもそうした“色眼鏡”で見られないデザインのユニフォーム、2種類用意して代表入りの時点で選手個々人に選んでもらうっていう形にするってのは……
 それが一つの『自由』ってモンじゃないかと思いますがね。
 

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