人生百年時代の裏で

 織田信長は明智光秀の急襲を受けてもはやこれまでを悟った時、
 「人間五十年」
と舞ったと言われております。
 まぁ、後世のドラマツルギーに基づく脚色ではあるでしょうが。

 さて“人生百年時代”と言われております昨今、今日3月20日は『国際幸福デー』なんだそうで、それに因みまして博報堂傘下のシンクタンク……何だか伝説の漫才コンビ・青空フックキック師匠を彷彿とさせますな……『100年生活者研究所』が日本を始めとしましてアメリカ・中国・韓国・ドイツ・フィンランドの計6ヵ国でアンケート調査をしましたそうな。

 日本ではインターネットを使いまして20~70代の男女2800人に訊いたんだそうですが、「百歳まで生きたいか?」という設問に対し「とてもそう思う」「そう思う」を合わせても3割に満たず6ヵ国の中で最も低かったといいます。
 また同時に行われた幸福度のアンケートでも「幸福だ」という答えの割合がやはり6ヵ国中最低であった、と。

 まぁ、百歳まで生きたとて認知症にでもなれば子孫を始めとして周囲の人に迷惑をかけてしまって、しかも自分にはその自覚が無い…なんて事を考えると長生きに対して怯む部分はありますしね。
 まして日本の、或いは自分達の経済状況を考えた時に〇十年後まで何の心配も無く過ごせるのかと考えますと……ね。
 
 で、もう一つ気になりますのは霞が関による長生きに対するネガティブキャンペーンが、我々の脳に深く静かに浸透して来ている事です。
 例えば、高齢ドライバーによる交通事故が増え免許証返納を推奨する動きが活発ですけれど、ここ十年以内で殊更フューチャーされたような。
 高齢ドライバーによる交通事故なんてもっと昔から起こっていた筈なのに。認知症にしろ高齢者の反射神経や反応速度の低下にしろここ十年でにわかに湧き上がってきた病理でも無いのに、です。
 更に言うと、ここ数年で急に人口動態統計のデータがメディアを中心に盛んに取り上げられている気がします。
 あのデータを見ていると「〇年後には就労現役世代が△万人に減少するのに対し、60歳以上の高齢者は×万人に増加する。即ち1人の高齢者の老後を現役世代が3人で支える時代がやって来るのだ!」的な論調になるのが常で、いかにも“長生きする事が孫子、或いは更に下の世代に負担と迷惑をかけるのだ”と言わんばかり結論になります。
 統計データに嘘は無いのでしょうし、それを踏まえた未来予測もおそらく正しい。ただ、そうした予測を踏まえて政府や厚生労働省が具体的な対策に乗り出したか?というと……どうでしょう?
  少額な、それこそ“焼け石に水”的な給付金だとか、子育て支援を目的とするちょっとした制度や企業への協力要請はチョコチョコ行われておりますが、どこか「やってない訳じゃないんだよ」的なアリバイ作りのニオイが拭えないのですわ。
 加えて、高齢者のお世話をして下さる介護職の給与が低いから国策で増額しましょう、と。その原資はどこから持ってくるんですか?……医療費や介護費用の値上げですよ。
 それじゃあ意味が無いんですよ!医療費、介護費用を支払ってるのは高齢者ご自身もしくはそのご家族なんですから。その人達の首を絞めてどうする?!って話でしょ?
 トドメは年金ですよ。
 その昔、年金は任意……即ち希望者が加盟するものだったんです。ところが厚労省だか財務省だかの怠慢役人が実にテキトーな投資運用会社選び……それこそ実績などは考慮せず、選考の権限を持つ役人の知り合いだというだけの理由……で莫大な焦げつきを出した。それこそ年金そのものの存続を脅かす位のマイナスです。
 じゃあその穴埋めを馬鹿チョン役人がしたのか?或いは責任を取って切腹の一つもやったか?……その穴埋めが法改正による【強制加入】への転換ですよ。
 そして年金強制加入制度以降、年金の支給額は減額につぐ減額です。そらそうですわな。任意加入であれば支給額を減額しようものなら加入者が瞬く間に居なくなりますが、強制加入だと辞める事は出来ない訳で……つまり削りたい放題!しかも減額の理由は「高齢者人口の増加と対就労現役世代比率の悪化」のせいにしてしまえばいい!!

 こんなんで「長生きしたい」とは思えんでしょ?

いいなと思ったら応援しよう!