20代のひきこもりから一転、“わたしらしく働く”生き方を体現し続ける(株)ワタラクシア代表取締役 伊藤順子さん
プロフィール
出身地:岩手県盛岡市
活動地域:北海道札幌市
経歴: 大学卒業後、就職した会社の仕事の激務から自立神経失調症になり20代はひきこもり時期を過ごす。結婚と同時に札幌に移住し、2011年に長男を出産したことがきっかけとなり、働きたい意志が沸々と湧き上がる。自分らしい働き方、子供と居ながらできる仕事をと起業を決意。2012年3月行政書士の資格を生かし起業する。現在は2児の母。
現在の職業および活動:(株)ワタラクシアの代表取締役&行政書士
女性起業専門のなでしこスクールを運営し女性起業を支援している。
座右の銘:「わたしらしく働くことで幸せになる」
どん底だったからこそ見るところは上しかなくなった
Q 今の働き方に繋がるきっかけはありましたか?
20代は引きこもりで仕事をしていなかったのでコンプレックスがありましたが、結婚して子供が生まれて5、6ヶ月頃に沸々と「働きたい」「一社会人になりたい」という思いが湧き上がってきました。誰々君のお母さん、誰々さんの奥さんと呼ばれ自分の名前がなくなったようで、私は"伊藤順子なんだ"という思いがありました。
子供と居ながら働けないか、子供と居ながら働きたいと思い、じゃあ自分の力でやるしかないと思ったんですね。だけど自分にはなんにもないと思っていたので、初めに自分と人生の棚卸をしました。昔、行政書士の試験に合格していたんですね。その当時自分は空っぽだと思っていて、なにか武器になる国家資格を持てたらと資格の勉強をしました。行政書士は独立開業する仕事なのだと知り、そこから私にはこれしかないと行政書士会に登録しました。2012年3月に行政書士事務所を開業したのが始まりです。
同じ行政書士のママさんと出会い、2人で"北海道ママさん行政書士の会"という会を立ち上げました。おうち料理研究家を名乗り料理教室をしたり、いろいろなことをしていく中で少しずつ知り合いが増えて仕事がくるようになりました。「子連れで仕事はどうやるの?」「起業ってどうやるの?」「仕事もらうには?」と聞かれるようになり、“なでしこスクール”をつくろうとなりました。
札幌エルプラザにある女性にためのコワーキングスペース”リラコワ”のコンシェルジュに声を掛けていただきました。その後2人目を妊娠して、コンシェルジュは卒業しましたが今のなでしこスクールにつながっています。2人目を妊娠して、新たに環境を整え会社設立の準備もして2015年12月に(株)ワタラクシアの会社を創りました。
Q 20代の時からはガラッと変化されていますが、どんな心情の変化がありましたか?
長男が生まれて働きたい思いが湧き上がってきました。人生背水の陣だと思い、今踏ん張らなきゃ人生終わりだと思い決意しました。20代で自分が底をみたからだと思います。苦しくて苦しくてどこまで落ちるのだろうと、死ぬのも嫌でそこまでいったらみるところが上しかなくなって、やるしかないと腹をくくったと思います。
あの時が転機というよりも、徐々に水面下で育っていたんでしょうね。当時は自分に一番悔しかったです。わたしこんなんじゃない、もっとなにかできるはずだという思いがありました。
人は良くも悪くもゼロ、みんな大したことないし、みんな素晴らしい
Q 20代と今は考え方も変わりましたか?
昔は自分はダメ人間なんだと、仕事をやめて負け犬だと思っていました。働いていた部署が新入社員が毎日終電で帰って、朝は定時に出勤していて若くても体がおかしくなりますよね。疲れ果てて病んで辞めることになりましたが、今だったらもっと早めに辞めればいいのにと思います。その時は誰にも助けてとか辛いとは言えず視野が狭かったとしか言えません。
考え方はかなり変わりました。あの頃の自分はちっちゃかったですね。今は、どん底を味わったから人と接する有難さ、普通に生きていられる幸せ、仕事があること、求められることが有難いです。人って良くも悪くもゼロだなと思います。大したことないというか、過去の体験があったから人はみんな同じ、肩書きや実績云々ではなくて人はみんな素晴らしいと思えます。20代のわたしも生きてるだけで素晴らしかったじゃないかと。
物事をひとつの側面からしかみないと善悪でみてしまうけど、全体を観ることが必要です。
Q 伊藤さんのモチベーションはどこからくるのでしょうか?
確かにそんなに落ちないんですが、もともとモチベーションが高いということはなく、単純にお客様がいるからだと思います。相手の「ありがとう」が原動力です。お客様の人生が変わるタイミングだったりするので、自分のやりたいことがみつかった時、目が変わる瞬間をみると病みつきになりますよ。人生が変わるタイミングのお手伝いをしていると思うと嬉しくて。
昔は自信マイナス100くらいで、今は私すごいと思うくらいなんですが、正反対ですね。どんな人も自分の人生つくれると思います。できないと思っているのは自分ですよね。
“わたしらしく働く”人を増やしていきたい
Q 10年後、またその先の夢はありますか?
生涯かけてだと、お葬式のときにみんなが笑いながら泣いてくれたらいいです。順子さんのおかげで人生変わった、気づかされたといいながらクスっと笑ってくれたらうれしいです。人生は長く太くポックリが夢なので、働いて世の中での役割を全うして死にたいなと思います。
なでしこスクールをやっていますが、働き方は雇われるか雇われないかの2つ、雇われる方にも何かできたらいいなと思います。今後もかかげている“わたしらしく働く”人を増やしたいです。なでしこスクールのために後継者を育てて女性支援をできる仲間を増やしていきたいですし、自分の仕事を丸々渡しても安心できる相手を育てていきたいです。人を育てるのは大変なので10年スパンで考えています。
また、子供がいるのでキャリア教育を通して子供たちが生きていく力、考えて行動できる力を養ってあげることだと思っています。自分がどんな次のステージに行きたいか、これからどんな夢をもつかを自分が楽しみにしています。
Q 伊藤さんにとって”わたしらしい”とはどういうことですか?
伊藤さん:本来のその人がやりたいことができることです。今は多くの人が自分がしたいことをわからない時代なので、まずやりたいことを誰もが実際に行動に移すことができたらいいなと思います。子供は身近な親、大人をみて職業観ができるので、親世代のわたしたちが変わっていいと思うんですよね。
世代交代したときに新しい価値観ができるように、私たち30代、40代が変わること、子供たちにはキャリア教育を通して可能性を広げることをしていきたいです。
Q 伊藤さんにとっての仕事とはどんなものですか?
仕事は生きがいですね。家庭と仕事の両立をどうするか聞かれることもあるけど、両立という感覚はなくオンオフがないですね。仕事人間なわけでもなく、子供の行事も全部行き、子煩悩ですし、家族が原動力で落ち着く場所は変わりないですが、仕事も遊びもプライベートもあまり区別がないです。プライベートの経験が仕事に、仕事の経験がプライベートに生きるので、生きてる活動の一つです。自己表現、自己実現、社会貢献もできるという楽しさがあります。
Q わたしらしく働くために心がけていることはありますか?
自分の心の声を聞くことを忘れないことです。息抜きや空を見るとか外を歩くとか、心がいっぱいいっぱいにならないように、疲れないようにしています。自分の声がきこえるのは疲れてないときです。人によく思われたい思いや、しなきゃと縛られるのはつらいので、私は我慢することは辞めました。自分の心がラックスすることをするとがんばりたいことが出てきたり踏ん張れるんです。
強い光は周りを照らせる、自分もそう在りたい
Q 人を育てるとき大事にされていることはありますか?
その人らしさですかね。苦ではなくずっとやれることです。後継者育成は時間がかかるので一長一短でできることではないですが、自分と同じくらいの心がけでやれる人を育てたいです。重視するポイントは、企業支援の知識経験、”わたしらしく働く”を体現していることです。変に無理することではなく、誰かになろうとすることも違います。たとえ後継者になりたいという人がいて、わたしもこの人だと思っても合わないならやめた方がいいと思っています。
なでしこスクールは拡大型ではなく、信頼できる人を1人、2人でもゆっくり育てることだと考えています。育てたいという能動的な思いはありますが、光は強かったらみんなを照らせるじゃないですか。だから自分も光れる存在で有りたい。来るもの拒まず去るもの追わず、私のところに来てくれるのはありがたいと思います。
伊藤さんありがとうございました。
株式会社ワタラクシアのHP・女性起業支援”なでしこスクール”のブログはこちら
【編集後記】
今回インタビューを担当した岸川と廣瀬です。仕事を楽しんでいることが伝わってくる伊藤さんのあり方、生き方を通して、もっとありのままに、やりたい事をやっていいと勇気をもらえます。”わたしらしく働くことで幸せになる”というブレない信念と女性の美しさ、母親の強さや愛を感じ、伊藤さんのような女性が社会で活躍することは希望だと感じました。お忙しい中インタビューをさせて頂きありがとうございました。
この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。