ギタリスト渡辺香津美の今
ギタリスト渡辺香津美は最愛のパートナーです。
2月27日の早朝・・・軽井沢のアトリエにて、
突然の右半身のしびれを訴えて倒れ、
救急車で隣町の病院に搬送されました。
翌日から3日間、軽井沢大賀ホールにおいて、
私とのデュオユニット【Castle in the Air】の
レコーディングを行うつもりで、
ギターや楽曲、そして演奏の最終的なつめを行う予定の日でした。
救急病棟でCTスキャンなど検査を受けたのち、
脳神経外科担当医からお話がありました。
「ちょっと厳しいことをお伝えしなければなりません・・・
ご主人は脳幹出血です。左中脳から橋にかけて出血しており最重症です。
命の危険が高く、この2週間程度は何時亡くなってもおかしくない状態です。
仮に救命出来た場合でも重篤な後遺症は免れない見通しです。」
・・・・・・概ねこのような内容でした。
どうやら脳幹という、
呼吸や運動神経の司令塔のような場所の血管が損傷してしまったのでした。
手術の出来ない場所、いかなる医術をもっても手の施しようのないケースの脳出血と。
私はゆっくりと、絶望感を感じる回路をシャットアウトし、
腹を決めてから(まさしく、そういう感じで)
なるべく真っ直ぐに目の前に映し出された画像データを見つめ、
現実を少しづつ受け入れたように記憶しています。
心に暗い海が渦を巻くのを振り払うようにして、
呼吸や酸素の確保、血圧の安定が最重要の措置となっている
香津美さんの傍に寄り添い、
ひたすらにその命の底力を呼び覚ます方法をさぐっていました。
しばらくして、手持ちのツールで音楽を聴かせることを思いつき・・・
呼び寄せた家族が見守る中、
延々と渡辺香津美の弾くギターの音が流れる病室で、
最も危険といわれた3日間を乗り越えることができました。
一般病棟に移ってからも、
これまでつくってきた歴代のアルバムが
片時も止むことのないプレイリストとなって、
起伏のあるギターミュージックを
香津美さんの耳元にとどけてくれています。
意識がない状態でも耳は聴こえているそうです。
ずっと付き添って一緒に耳を傾けていると・・・
いろいろな気持ちのないまぜになった水をいれた器に、
一滴、また一滴と感謝のしずくが落ちていき、
いつしかその水は澄んだ希望のゆらぎとなって、
気づけば1か月以上も時を刻んでいました。
そして今、
ここに、ひたすら呼吸をつづける香津美さんがいます。
最高の医療スタッフの方々に恵まれ、
ぬくぬくと眠り続けています。
さあて、奇跡が起こって、
目の前の七十歳の赤ちゃんが目覚めた瞬間、
いったいどのくらい、
意識を失う前までのことを覚えているのでしょうか?
どんな状態であっても、
新しい人生を、
憂なく幸せな気持ちで歩んでくれるように・・・
これからもずっと、
無条件の愛を注いでいこうと思っています。
この1か月のあいだ、
多くの方々に事情をお伝え出来ずにいましたこと、
申し訳なく思っています。
香津美さんと私にとって、
魂だけで会話する
静かで幸せな時間でもありました。
世の中には、比べ物にもならないくらい、
辛い別れを経験している方がいらっしゃるでしょう。
いかなる状況でも、
過去を振り返れば・・・
失ったものへの悲しみが、
未来を思えば・・・
不安が無いとは言えません。
だからこそ、今ここ、
この瞬間だけに生きて、
行動して、
目の前にいるヒトに
愛を届けて参りましょう・・・
これまでも、これからも、
わたしたちを支えてくださる多くの方々に、
心からの感謝をおくります。
是非一緒に、これまで以上に・・・
渡辺香津美のギター・ミュージックを
楽しんでくださいますよう、
心から願っています。
奇跡を信じて、
二人揃って皆様にお会いできる日が来ることも。
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