「息子の目の輝きを取り戻したい」
ちょうど1年前の8月に出会ったあるご家族の言葉を思い出した。
その日はここのね見学日。お父さんとお母さんは学校の説明を聞き、当時、小学校一年生だったAくんは、活動に参加していた。最初、別部屋にいる両親の存在や初めての場所と人になれない様子でソワソワしていた。
「Aくん、緊張しているんやな・・・心がまったくこっち向いていないなあ。どうにか心を感じ合わせれたら。なにか一緒に夢中になれるものは・・・?」と考えた結果、将棋を提案してみることに。
するとAくんは、想像以上の反応で将棋に興味を示した。そこからは、脇目もふらず、とにかく夢中だった。気づくと横にはAくんのお父さんがいた。二人で「あれ?もうそんな時間?」と、あっという間に過ぎた時間を不思議に思った。
その日をきっかけにAくんはここのねに入学した。
現在のAくんは、おちゃめでいたずらが大好きで、友達や家族想いの優しい男の子。自分の意見をはっきりと伝えられる力もありつつ、人の意見も柔軟に受け入れる器を持っている。さらに、自分の好きを追求し、そのための努力を惜しまないまじめさが彼の魅力の一つだ。
しかし、ここのねに入学したばかりAくんは、とにかく自己肯定感が非常に低かった。自分の軸がはっきりしていて、雄大な世界観を持っていたAくんは、枠の決まった環境の中で思う様に自分を表現できず、常に自分を傷つける癖が出来上がっていた様だった。
「絶対できない」
「俺が悪いんだ」
「俺は頭が悪い」
「俺は絵が下手だから」
「学校では先生を怒らせるからしゃべらないんだ。怒らせちゃう俺が悪いから」
と、いつも自分を責めては、落ち込んでいたAくん。
風船バレーをしてAくんがいるグループが負けてしまうと「俺のせいで負けてしまった。申し訳ない。ダメなやつだ。」と呟きながら、大きな涙を毎回こぼしていた。
「おうちで絵を描くときに使う色は決まって黒色。小さい頃は多彩な色で絵を描いていたのに・・・Aくんから色も目の輝きも失われた。息子の目の輝きを取り戻したい。」
と、Aくんのお母さんは伝えてくれた。
わたしは、こんな小さな子から色や目の輝きがなくなってしまうことが不快で堪らなかったのを今でも覚えている。子どもの周りに重くのしかかった鎧さえ外れれば、どんな子もその子自身が持っている魅力が出てくるに間違いない。
今まで教育畑で働いたことのない私だったけど、見学会のときのAくんとの触れ合いの中で、「絶対大丈夫じゃ!きっと自分ならAくんの心に寄り添うことができる!Aくんも本来のAくんに戻るだろう!」と、根拠のない自信を強くもち、その日からAくんと本気で向き合った。
Aくんと接する中で、「どうしてこんな現象になってしまうのか?」「どうしてここまで自分を責めてしまうのか?」と自分のキャパを超えてしまうことは何度もあった。
その都度、仲間と振り返って次の支援策を考えてみたり、本や参考書をかたっぱしから読んだり、先輩に相談をしてみたりした。
Aくんは極端にマイナスに落ちているからプラスの言葉や行動のシャワーをふりかけよう!と想い、実践してみることにしました。
とにかくトライ&エラーの毎日。
そんなある日、「あれ?Aくんから自分を責める様な言葉を一切聞いてなくない?」と気づいたのだ。特に分かり易かったのは風船バレーでの出来事。
Aくんがいたチームが負けてしまった。今までのAくんだと、その場から去り、自分を責め続けて、大泣きだった。しかし、今では、「あちゃーーー負けちゃったよ!次はボールを拾うところに注意してやるぞ!次はこっちがかーーーーーつ!!けど、負けちゃう日もあっていいよね♩」と、スーパーポジティブワードを連発していたのだ。
そして風船バレー中でも、チームの仲間がミスをして際には「ドンマイ!ドンマイ!次頑張れば大丈夫!」と、すかさずフォローの言葉をかけるのだ。
そこからは芋づる式にAくんの言動が変化してゆく。
「自分の絵は下手くそだから。だって幼稚園の頃、みんなに下手だねって言われたんだ」と過去のトラウマを言っては、自分の絵をなかなか描くことはなかったAくん。
今では、「ももちゃーーーーん!見てよ!このロボット!すごいでしょ!このロボットはね〜(ロボットの説明に入る)」と、ホワイトボード一面に創作絵を描いて、自分のこだわりポイントを説明してくれるまでに。
そしてAくんのおばあちゃんからは、「最初は、送迎の車の中で一切話さなかったのよ。どうだった?楽しかった?と聞くと、うん。くらいでね。けれど今はこっちから聞かずとも、今日はこんなことがあったよ!って、嬉しそうに楽しそうに出来事を細かく教えてくれるの。もう、そんなAくんの姿をみれてほんとうに嬉しいのよ。ありがとう」と、嬉しいお言葉をいただいた。
確かに、私たちスタッフがしたサポートもたくさんある。けれど、それ以上に、Aくん自身が自分の足で前に進み、自分と向き合ったからこその変化だと感じる。
大人も子どもも、どんなことだって最終的な決断はすべて自分。周りの人間はただのきっかけに過ぎないのだ。
Aくんは、これからも周りの人の言葉や環境の影響を大いに受け取って育っていくだろう。これからどんな選択をし、どんな学びを深めていくのかな。
私は、Aくんがどんな選択をしようとも、同じ目線で一緒に考えれらるバディであれるスタッフでありたいなと思うのであった。
どの子もそれぞれがスペシャルだ!
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