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未来を想像できなかった日

今回の話は、
#想像していなかった未来
のお題で書いたちょっと暗い話です。

死に関する内容も出てきます。
なので、そういうのが嫌な方は、見ない方がいいかもしれません。

ただ、人によっては・・・
少し勇気が出るかもしれない
気が楽になるかもしれない
そう思って、書いた文章です。

見ていただければ幸いです。



未来を想像できなかった日


「自殺からは一番遠い存在だよね」

自殺の報道を聞いて、目の前の友達が言った

確かに・・・

やりたいと思った事は即実行
その場その場で、楽しむ方法は必ずある
常に何とかなるだろうという気でいるから
自殺と聞いてもピンとこないし
想像も出来ない事

自他共に認める
自殺とは最も遠い存在だった

その後
警察官という職業で
自殺は身近なものになる

『変死』
(自然死ではなく犯罪に関係するかもしれない死亡のこと)

刑事一課に変死の一報が入ると
当番の課員は着替えて現場に向かう 
変死の現場では、汚れる可能性が高い
綺麗な状態であることの方が少ないかもしれない

現場での目的は
事件性の有無を判断すること
検死と呼ばれている

ご遺体の状況
身の回りの状況
関係者の聴取等から

目の前にある
ご遺体の生前の状況を想像する

ご遺体は
マットの上に仰向けにする
着衣を脱がすのは容易ではないから
ハサミで切って裸に
隅々まで記録していく
慣れていれば確認作業のように
順を追って進めるだけ
同僚と協力して体をひっくり返す
背中は全体的に赤色で
体内の血液が動いていないことが分かる
死斑の位置を記録する
肛門に温度計を差し込んで体温を測る
抜いたときに排泄物が付いていて臭う
幸い部屋の中の臭いは少なくて
『見つかるのが早くて良かったね』なんて思う
一体なにが良かったのやら(^▽^;)
自らツッコミを入れる

そこにあるのは、ご遺体という塊
そこに心はなくて
ただ状況を記録していく作業になる

現場に残された現金の有無
机上に放置されたカップラーメンの容器、汁の量
テレビのリモコンの位置
ライター、タバコの位置まで記録して
違和感がないか?

生前に関わりのあった人にも
話を聞いて
なんらかの理由を探していく

死体の声を聞け等というが
ご遺体はやはり何も語らないから
その現場の状況と会話をする

それなりの理由が見つかることもあれば
「あの人がなぜ?」
というような自殺であったり
他殺である証拠も無く
こじつけたような理由しか
見つからない場合もある
ただ・・・

現場に共通して漂っていたのは
色褪せた空気だった

この世とあの世を繋ぐ場所には
亡くなった人の疲れた気持ち
戦って争って
疲れ果てた痕跡が

見えない空気になって
残っていた

警察官になって
物理的に自殺との距離は縮まったけれど
相変わらず
自分自身には想像も出来ない出来事
それが自殺だった


そんな僕が
自ら死を選ぼうと思った日がある

僕を苦しめていたのは悪ではなくて
正義だった

僕の中にある正義が
僕自身の存在を許せなくて
僕は自殺を決意した

あの日、あの時
僕は一度死んでいる

「自殺からは一番遠い存在だよね」

そんなふうに友達から言われていた時には
想像していなかった未来


警察官を辞めて義母と始めた自営業
義母は正義の人だった

勝手な僕の行動が
常識のない僕の言動が
やたらと義母の目に留まる

「あなたのために言っているんだからね」

その想いが
義母の正義が
日々、僕を追い詰めていく

僕は僕で、自身の存在を悪者化するし
義母は義母で、自身の存在を正義化していった

「正義が悪を正す」
この構図が、お互いに補い合って
どんどん拍車をかける

四方八方を正義に囲まれ
身動きが取れなくなった悪

僕が首に紐をかけた時
僕は僕自身の悪を抹消できる気持ち
自分自身で自分を退治する
歪んだ正義感でいっぱいだった

あの時
僕の未来は正義によって成敗された

あの時
僕の未来は想像して良いものではなかった

全て
あの時に一度、終わっている。


首にかけた紐に
体重をかけ始めたとき

僕の中の悪は一度退治され
これまで育てられてきた正義が
完全勝利を遂げた

このまま死んだら・・・

警察官の時に現場で感じた
色褪せた空気
戦って争って
疲れ果てた場所

今が、それだった。

あ、
終わったんだ・・・
正義と悪の戦いは終わったんだ・・・
って気が付いた

これまでしがみついていたもの
全て無くなっても大したことはない
産まれた時の状態
白紙に戻るだけ

覚悟が決まったとき

「自分で死ぬなんてアホくさ」
僕の中の悪が陽気に喋る


紐にかけていた体重が
止まった・・・


・・・。


何・・・?


・・・。


えっ・・・?


・・・。


・・・。


待てよ・・・


・・・。


・・・。


・・・。


・・・。


・・・。


首の紐を外した・・・


・・・。


・・・。


「や~めた」
今度は、自分の声だった・・・

「どうでもいいんじゃね?」
「死ななくてもいいんじゃね?」
「あほくさ~」
強くて、はっきりした声が出た

涙と、笑いも出た

「はっ、は~(*‘∀‘)」

変な笑い方・・・

でも、
久しぶりに笑ったかも・・・


足の裏に地面を感じた

一歩踏み出したら、地面があって

もう一歩踏み出したら、また地面があった


見える世界が変わっていく

一歩踏み出す度に
変わっていった


悪の言葉のおかげで
僕は首にかけていた紐を
外すことができた

あの時
正義が喋っていたら
僕は死んでいたかもしれない

悪は逃げる
死ぬまで必死に戦う悪を見たことがない
悪は極限までくれば逃げるのだ

正義は逃げない
死ぬまで正義のために戦う
極限になっても
正義という志のために戦うのだ

僕は、あの時、悪に助けられた

バイバイキーン‼︎と言って逃げる
バイキンマンに勇気をもらった



僕には、未来を想像できなくなった日がある
それは、決して悪がいたからじゃなくて
歪んだ正義が起こしたもの

今日もどこかで正義と悪が戦っていて
それぞれの正義に人は苦しむことがある

もし、死にたいという気持ちがあるのなら
自分の中の歪んだ正義を疑ってみて

僕には、悪の囁きによって
救われた未来があって
悪が僕を救うだなんて想像もしていなかった


よくよく考えてみたら
悪も正義もどっちがだけじゃ成り立たなくて
どっちも自分で作り出した物だって気が付いた

優しい人は良い人→優しくない人は悪い人
思いやりがあって良い→思いやりがないことは悪いこと
愛情豊か→愛情がないことは悪いこと
自分が一つ良いと思う事を作れば、悪いことを作ることになる

僕が死の間際で感じたこと
暴力的で攻撃的だったのは正義

正義が勝つ
正義のヒーローはかっこいい
そんな世界において
警察官という職業だった僕が、悪の囁きによって未来を得た
想像していなかった未来を得た


未来が想像できなくなった人の中には
歪んだ正義と優しさが存在している
その正義があるから
その優しさがあるから
苦しんでいる

苦しんでいる君は、間違いなく優しい

僕が現場で感じた感覚
色褪せた空気
あの時、目の前で亡くなっていた人達

自殺を試みる人は
間違いなく
戦い疲れた人
自分の優しさや正義
戦って戦って
疲れ果てた人達だったから


幸い僕は、あの時掴んでいたもの
全て手放して
新たな道を歩くことができた

悪の気楽な一言で

今、歩いている道は
あの時、一度終わっている道
あの時、新たに始まった道

あの時には
想像できない人との出会いによって
未来は輝く

想像できないところにも、僕らの道は続いている
生きている限り続いているから


僕が想像していなかった未来は
未来が全く想像できない場所
そこでは悪の言葉が優しく感じられて

悪によって救われた僕は
今、未来が想像できる場所に立っている

元警察官である僕が
悪の囁きに命を助けられるなんてね💦

正義なんて
あやふやなもんなんだよね(*‘∀‘)


さ、それではご一緒に(*‘∀‘)

言ってみようぜ!!

「バイバイキーン!!」


#想像していなかった未来

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