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『風』に誘われて。


(元のURL:https://www.dtto.com/f/jp_daily/p/241152510?ref=ios )
2023/02/05

先日、初めてひとりでせんべろに行ったんです。
1000円でべろべろになる。それがせんべろ。

「なんか今日、呑みたい。」とおもったのが始まりで。
ここ1ヶ月くらいなんかもう揉みくちゃで、
なんか痩せてしまって、なんか呑む気にもならなくて、なんか、なぁ〜……っていう。
釈然としない感じで。
夜も寝れなくて昼夜逆転しかけてて。
寝酒はよくないのはわかってるけど、今日こそは気持ちよく寝入りたい。痩せちまったんだしちょっとくらい酒太りしよーやと、よくわからん思考回路に入り…。

もうすぐ車校も卒業しそうだし、せっかくならこの辺開拓しよう、しばらくはこないだろうし、と。
近隣をGoogleマップで調べたのがきっかけでした。


評価4.2。レビュー件数10件。
写真1,467枚以上。同じ写真はほとんどなく、どれも美味しそうな肴。
カウンターのみ。少数客中心。
せんべろの小料理屋。

「何ここ?!」

もうその日の気分にぴったりの一軒でした。
さっさと教習を終えて、その店まっしぐらでしたね。

到着した店の名前は『風』。
いつもなら絶対素通りする、扉なんか叩けない小料理屋独特の雰囲気。
でもこの店は、外からでもやっていることがわかり、席も2つは空いてることが見えたので。
勇気を出してひとり、入りました。

マスターはメガネの優しそうなおっちゃんで、最初に新じゃがのフライと角ハイを頼み。
「うち、女性の方、多いんですよ。」
6席しかないカウンターの半分は女性でした。
常連のお客さんたちとお話ししました。

「どうして今日はこの店に?」
1000枚写真が載ってる話をしたら、お客さんもマスターも驚いてました。
車校の帰りで、と話すと
常連さんとマスターがそこのOBでした。
教習トークが花開いたところで、フライの到着。ホクホクでアツアツで、じゃがの甘みが最高でした。




「よくこの店に来たね〜。」
「21歳」が『風』で「ハイボール」。
なんだか「フツー」とは違うらしいことを知りました。
なんかよくわからないけど、思わずほんの少し、優越感。
しれっと厚切り豚ロースを注文。

常連さんと他愛もない話をして。
「一人暮らしだと1日全然喋らなくて〜」
と言うと、
「わかる〜〜〜!」と言ってもらえ、
そっか、そーゆー日はこーゆーとこに行けばいいんだなと教えてもらいました。
「あんた、私の甥っ子より若いわよ~」とも言われたなあ。
年も名前も知らない人たちとの心地よい会話と、付け合わせのサラダまでついた520円の豚ロースで、その日はもう満ち足りました。




大学生で、〇〇専攻で、元〇〇部で。
そんな話をすると、「ほ〜〜〜!!」とより関心をそそったみたいで。ひと花また咲きました。
いまだに私は、自分が通う大学のイメージを理解できてないんだなぁと学びました。
大学の実態とは別で、イメージがひとり歩きしてる気が…全然そんなんじゃないのにー…。

小一時間飲んで店を出る時、「またおいで」と言ってもらえ、思わず「いいんですか?」と聞いてしまいました。
その日も、本当は常連の方がいらっしゃるところ滑り込んだのを知ってたので、今日は大人たちに少し遊んでもらったというか。
「ここには、こんな良さげな店がある。」
それが知れただけで十分な気分でした。

そしてお店を出ようとした時。
その日お話ししてた中でもどこか冴えた感じのする、常連のお姉様が私に向かって

「いってらっしゃい!」

と大きな声で言ってくれたんです。
なんでいってらっしゃいなのかわからず、ほろ酔いでヘラヘラしながら「いってきまーす(笑)」と言って店を出たんですけど。

帰り道をたどり、家に着きそうな頃に
「あー、一本とられたなあ…。」
と感じました。

これは、
「ただいま」
を言いにいきたい気持ちにさせられるなあ、と。

なんか遠慮がちそうに、もうここへは来ないかなあとうっすら考えてた私の心を見透かされたというか。
気づかないうちに懐にスポッとしまわれてたというか。
してやられたな〜…なんかまた行きたくなるじゃないか…。
まんまとそんなふうに思わされました。


考えすぎかもしれないけれど、
あの「いってらっしゃい」はそうだった気がして、
私はまた『風』に誘われてしまうかもしれません。
夢か現か疑いたくなるような、
そんな心地のよい夜でした。

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