運の良さと平均値

自分が小学生の時、自分が「若くない」状態まで生きているとは思わなかった。
まわりのみんなは「明日は当たり前にやってくる。つまらない」と言っていたけれど、自分はそう思えなかった。
いつも明日死ぬ覚悟で生きてきた。

それがなぜか若くない年齢まで生きている。
毎晩、時世の句を考えていたのに。
自分の葬式のイメージばかりしていたのに。
なぜなんだろうと相談した。

答えは簡単。
あなたは運が良かった。
運が悪ければ普通に壊れていた。
信じがたいほど運が良くて、環境に恵まれた。

たしかにそうだと思う。
たぶん私はどこか憎めないところがかって、なぜか許してもらってきたのだと思う。
とても刺々しい中身なのにパッと見では丸顔で安心感を与えていたのも、存外大きいのかもしれない。

第一印象から知的な印象を与える女性もいるなか、私はそういうことはまずない。
これはもうDNAの賜物でしかない。
なぜか丸顔に生まれた。
アイドルみたいに痩せ過ぎてもいないし、健康診断で引っかかるほど太ってもいない。
良くも悪くも、一度見たら忘れられない個性的な風貌では全然ない。
常に「友達の友達に似ている」と言われる。

IQが高すぎる人や、美しすぎる人の気持ちは理解できない。
その代わりにクラスの誰とでも会話がてきる。
とても平均的。
特段の能力もない代わりに、逆境には強いという宿名をいただいたらしい。

私はなんとなく「一般的な悩み」に共感できる。
なんとなく集団でも生きていける。
そう育ててくれた環境のお陰であるし、環境が与えてくれた課題に一個ずつ取り組めた自分のお陰でもある。

世の中は外れ値の人間に厳しい。
結局最後に笑うのは大抵は平均値の人間だ。
賢すぎる人たち、才能がありすぎる人たちとたくさん出会って、彼らの大変さを垣間見てそう思った。

頭抜けている人は期待され、恨まれ、嫉妬される。
私は期待して嫉妬する側で良かった。

色々文句を言いたいことはある。
でも、DNAのほとんどが外れ値でなかったという運への感謝を忘れてはいけないと思った。

金持ちではない。
美しいわけでもない。
スタイルがいいわけでもない。
賢いわけでもない。
絵が上手いわけでもない。
歌が上手いわけでもない。
スポーツができすぎるわけでもない。
コミュ力が高すぎるわけでもない。
繊細すぎるわけでもなく、鈍感すぎるわけでもない。
特技もないし、特別の趣味もない。
良い人ではないし、悪人というほどでもない。
この世で生きて行く能力があるわけでもなく、ないわけでもない。

平均に近いってすごい。
ありがたい。
運が良い。
歳をとりすぎる前に、自分の運の良さに気づけた運の良さに泣ける。

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