雨あがり美術館 作品番号#6 えんとつ兄弟のせいくらべ
ボクのアパートは海の近くの町にあります。海沿いの道のはずれからは、ニューヨーク港に立つ自由の女神だって見えます。
普段は、そんなこと、意識することもありません。だって、我が街サンセット・パークは、潮の香りがしてサーファーもいるようなサザンの湘南とは大分違うのですから。ただ、マンハッタンと水で隔てられているこの地理的状況に、なぜかホッとしている無意識の自分がいる感はあります。
イースト・リバーとハドソン川と大西洋が交わる所、それが、ここ、ニューヨーク港なのですが、地の利を活かして昔から工業地帯として発展してきました。最近は、おしゃれ且つ実用的な商業地区に生まれ変わっていて、「インダストリー・シティー」と呼ばれています。再開発されはしましたが、それでも埠頭の倉庫街の雰囲気が残っていて仕上がりはイイ感じです。
雨あがり。
水面に映った2本の煙突を見ました。
この‟兄弟”が活躍し、仲良くせいくらべをしてた時代を思い浮かべてみました。水たまりを風が撫でて、さざ波が揺れる世界に、元気に煙を吐く煙突の姿がいっしゅん見えたと思ったのですが・・・すぐにまた黙りこくってしまいました。
寂し気な兄弟と
それを眺めているボク。
そして、この3者の間に流れている時間が立ち止まります。
けれど
カモメは飛んでいます。
すーいすーいと飛んでゆくのです。