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トラウマを乗り越えてなお、セブンティーンアイス
子どものころ、私の中で何よりも特別感のあったアイス。それはセブンティーンアイスでした。
そう、かの有名な自動販売機で買えちゃう幸せのことです。
大人になった今でも、自販機を見かけるだけで、ぐぐぐっとときめきを覚えます。目をさまよわせながら選んだとっておきの、外側の紙をペリペリする瞬間のあの喜びときたら!!!
期間限定の商品があったりなんかしたら大事件です。いつものあの子と、新しいあの子。みんな違ってみんないい。絶対に選べない。
自販機の見た目もまたかわいいんですよね。それぞれのアイスの写真が並んでいて、カラフルで、ついつい眺めたくなる素晴らしさ。販売上手かよ。
さて。子どものころ、私が唯一手に入れるチャンスだったのは、祖母の家に向かう途中の道の駅でした。
祖母の家は車で2時間ほどかかる距離にあり、真ん中ぐらいの場所にある道の駅に立ち寄るのは毎回のことでした。
いつも、道の駅がもうすぐというところで、父親が「トイレ休憩したい人~!」と声をかけてくれるので、トイレに行きたくなくても道の駅によりたかった私は、毎回「寄る寄る~!」と騒いでいた気がします。
出迎えてくれるのは、燦然と輝くセブンティーンアイスの自販機。会いたかったよ。毎回必ず自販機の前に立ってました。なめまわすように見つめてました。
ある時、いつもと同じようにチョコレートアイスのボタンを押そうとしました。押そうとしたんです。私の指はチョコレートを選んだはずだったんです。あ、と気づいた時には、もう手遅れでした。
ごとんと鈍い音を立てて落ちてきたのは、なんとチョコミント。
まだ小学生でした。ミントは大人が食べるものだと思っていました。食べたことがありませんでした。あまりにもな仕打ちです。ほかに何種類もある中で、なんでよりによってミント。大人の象徴、ミント。
車の中、私号泣です。父親に泣いて訴えるも、自分で選んだんだからとりあえず食べなさいと叱られます。多分、父親もそんなに得意じゃなかったんでしょう…。
そんな最悪の出会いからの初めてのチョコミントは、私に全力でトラウマを植え付けていったのでした。
この大事件があってからしばらくの間、不似合いな集中力で自販機と相対するようになったのは言うまでもありません。
でもこのチョコミント大事件込みで、セブンティーンアイスは私の小さな頃をきらっきらにしてくれました。
あの頃のわくわくした気持ちと、両親にねだって買ってもらったアイスのおいしさは、大人になった今再現することはできないでしょう。
そう思うと、ちょっぴり切なくもなるのです。