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ポーカーで破産しないための技術をバンクロール管理の視点から考える



はじめに

以前以下の記事で生成AIに聞いたことをそのまま貼るかたちでバンクロールの管理を記事にした。エンタメとしては良いが、とても実用できるようなものではなかったため、あらためて自分の記事としてまとめてみたい。



ポーカーはどんなに強くても長期的な戦略なしに、バンクロールをすべてテーブルの上におくようなことをしていては必ず破産するようにできています。

バンクロール管理にて長期的な成功を考える上で、3つの重要な統計的概念があると思っています。
1. 統計的検定
2. 区間推定
3. ケリー基準

これらの概念を理解し、適切に活用することで、より信頼性の高い判断が可能になります。まずは各概念の基本的な考え方から解説し、その後で具体的な計算方法と実践的な活用方法を説明します。

第1部:基本概念の理解

1. 統計的検定とは


基本的な考え方
統計的検定とは、「得られた結果が偶然なのか、本当に実力なのか」を判断する方法です。

分かりやすい例え話
コインを100回投げて、60回表が出たとします。これは:
- 「このコインは偏っている(=実力がある)」のか?
- 「たまたまそうなった(=運が良かった)」のか?

この判断を数学的に行うのが統計的検定です。

ポーカーでの適用理由
1. 変動の大きさ
   - ポーカーは1ハンドごとの結果が大きく変動する
   - 例:1ハンドで100bb勝つことも、100bb負けることもある

2. 長期的な判断の必要性
   - 短期的な結果は運の要素が大きい
   - 「本当に勝てているのか」を判断するには統計的な裏付けが必要

 2. 区間推定とは


基本的な考え方
「真の実力はこの範囲にあるはず」という形で推定する方法です。

分かりやすい例え
あなたの身長を測る場合:
- 1回だけ測ると170.5cmという結果が出る
- しかし、測り方や条件で多少の誤差がある
- 「実際の身長は170.0cm~171.0cmの間にある」と範囲で表現する方が正確

ポーカーでの適用理由
1. 変動の大きさ
   - 1セッションや短期の結果は大きく変動する
   - 点での推定(例:7bb/100hands)は不正確な可能性がある

2. 実力の範囲の把握
   - より現実的な実力の範囲を理解できる
   - リスク管理に活用できる

 3. ケリー基準とは


基本的な考え方
期待値が正である賭けにおいて、長期的な資金の成長を最大化する賭け金の割合を決める方法です。

分かりやすい例え
宝くじの例:
- 当選確率10%
- 当たれば15倍の配当
- この場合の期待値はプラス
- でも全財産を賭けるのは危険
- では、いくら賭けるのが最適か?
これを数学的に解決するのがケリー基準です。
ケリー基準は二項分布を基本とするため、ポーカーにそのまま適用することは出来ませんが、リスクを考えるための参考にはなるため、この記事ではこの基準を採用します。

第2部:実践的な計算方法と活用

必要な情報の収集
以下の情報を集めましょう:
1. プレイしたハンド数(例:50,000ハンド)
2. 総勝ち額(例:3,500bb)
3. 標準偏差(一般的な参考値85bb/100hands)
標準偏差は自分のプレイスタイルとフィールドから、サンプルから求めた不偏分散を用いることが本来ですが、計算方法がまた大変であるため、ここでは85bb/100handsという値を用いることとします。

ここは自分のプレイから不偏分散を求めることが出来る人はその値を用いるのが良いと思います。

Step 1: 基本的な勝率の計算


 計算手順

勝率(bb/100hands) = (総勝ち額 ÷ 総ハンド数) × 100

例:
総勝ち額 = 3,500bb
総ハンド数 = 50,000
勝率 = (3,500 ÷ 50,000) × 100 = 7bb/100hands

Step 2: 統計的に勝てているかの確認


計算手順
1. ハンド数を100で割る
   
   50,000 ÷ 100 = 500(ブロック数)
   

2. ブロック数の平方根を計算
   
   √500 = 22.36
   

3. 総勝ち額を計算
   
   7bb × 500 = 3,500bb
   

4. 変動の大きさを計算
   
   標準偏差(85bb) × √500 = 85 × 22.36 = 1,900.6bb
   

5. 判定値(z値)を計算
   
   z値 = 総勝ち額 ÷ 変動の大きさ
   3,500 ÷ 1,900.6 = 1.84
   

判定基準
- z値 > 1.645:統計的に勝てていると判断可能
- z値 1.3-1.645:もう少しサンプルが必要
- z値 < 1.3:まだ判断できない

例ではz=1.84であるため、統計的に勝てていると判断できる。

Step 3: 実力の範囲を推定する


計算手順
1. 変動の範囲を計算
   
   標準偏差(85bb) ÷ √(ハンド数/100)
   85 ÷ √500 = 3.80
   

2. 信頼区間を計算(片側検定95%)
   
   実際の勝率 ± (1.645 × 変動の範囲)
   7 ± (1.645 × 3.80)
   7 ± 6.25
   
   区間推定95%で結果自分の実力値は:0.75 ~ 13.25 bb/100hands
   

Step 4: 適切なバイイン額の決定


安全をみた計算手順
1. 信頼区間の下限値を使用(この例では0.75bb/100hands)

2. 1ハンドあたりの標準偏差を計算
   
   85bb ÷ √100 = 8.5bb
   

3. ケリー基準を計算


   
   f* = (期待値/100) ÷ (標準偏差)²
   f* = (0.75/100) ÷ (8.5)² = 0.00001
   
この0.00001という数字はバンクロールに対する1hand当たりの平均バンクロールの変動を概ねおさめると良いという参考値です。
ポーカーのチップの変動はケリー基準が想定する二項分布に寄らないからです。

今回の例では例えば、総資金(バンクロール)が$10,000の場合、1handあたり$1くらい平均で動くフィールドにするという解釈です。(参加しないハンドも含む)
さらに今回は区間推定範囲の下限をとるという安全をみるアプローチをしているため、そのことを踏まえておおよそのバイイン額を決定します。

 実践的なバイイン額の目安
例:総資金(バンクロール)が$10,000の場合
1. 安全をみたアプローチ(推奨):バンクロールの2%以下($200まで)
2. 標準的なアプローチ:バンクロールの3-4%($300-$400)

実践的な適用例

ケース1:$1/$2のゲーム
標準的なバイイン額:$200(100bb)
必要なバンクロール:
- 保守的:$200 × 50 = $10,000
- 標準的:$200 × 30 = $6,000
- アグレッシブ:$200 × 20 = $4,000

ケース2:$2/$5のゲーム
標準的なバイイン額:$500(100bb)
必要なバンクロール:
- 保守的:$500 × 50 = $25,000
- 標準的:$500 × 30 = $15,000
- アグレッシブ:$500 × 20 = $10,000

 バンクロール管理の段階的アプローチ

1. 初期段階(z値が1.645を超えたばかり)
- 最も保守的な値を使用
- バンクロールの2%以下のバイイン

2. 安定期(長期間z値が1.645を超えている)
- 標準的なアプローチに移行可能
- バンクロールの3-4%のバイイン

 3. 確立期(z値が2.0を超えている)
- よりアグレッシブなアプローチも検討可能
- バンクロールの4-5%のバイイン

 まとめ:成功へのポイント

1. 統計的な確認
   - 片側検定でz値 > 1.645を目指す
   - 信頼区間の下限値がプラスになることを確認
   - 定期的な再計算で成績を監視

2. バンクロール管理
   - 統計的な裏付けに基づいてバイイン額を設定
   - 段階的にリスクを調整

さいごに

あらためて、ポーカーはどんなに強く期待値が高いプレイヤーでもバンクロール管理の方法を知らずにレートをあげていくと必ず破産するゲームです。

計算の一例を示しましたが、多くの場合経費や予期せぬ出費などのポーカー外の外乱もあるため、この計算手法がそのままバンクロールの管理に使えるわけではないと思います。一方で自分の成功確率を高めるためのバックボーンの知識として知っておくべき内容だと思います。

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