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エッセイ【アートで我が家を変えた娘】
あの日、我が家の真っ白な壁にグリーンのクレヨンで熱心に落書きしていた長女。当時2歳。
久しぶりの友達との電話が楽しくなって、昼間の長電話。隣の部屋で大人しくしている娘が、壁一面に落書きしているなんて思いもせず。電話を切って部屋を見て絶句!
必死にその落書きを落として、かろうじてグリーンがわからないくらいになった壁。
その数日後お兄ちゃんである長男に妹の面倒を見るように言いつけ、出かける用意でバタバタしていた私は、ふと嫌な予感がして部屋を覗いて唖然!!例のグリーンの落書きを消した壁の横に座り、カラーペン片手にご機嫌な
長女と、壁に新たにペンで描かれた落書きを消そうとしている長男の姿。
ええ!?また娘が落書きを!!?
と思ったら、壁に落書きの犯人はお兄ちゃん。
どうやら妹が壁いっぱいにクレヨンで落書きしたことを知ったお兄ちゃんは、自分もやってみたくなったようで。ペンで落書きしちゃってから慌ててバレないよう妹に罪を擦り付け、消すふりをしていた様子。
一見犯人かと思われた娘はというと、カラーペンで自分の両足をテンテン模様にカラフルにペインティング中。
長男を叱り飛ばし、気持ち悪いくらいにカラフルなテンテン模様の足をした長女を抱えて外出。バスの中で娘の足を見た人のギョッとした顔。今思い出すと笑える話。
あの壁の落書き事件以来アートに目覚めたのか、美術の世界に入って約20年近くなる娘。彼女はアートの楽しさをいつも私に、そして家族に教えてくれる存在となった。数年前、娘が働く会社がおふざけで開催した絵画展では最優秀賞をとって、賞金を持ち帰ってくるぐらいの腕に。
「アートで世界を変えた男と言われているバンクシー」
バンクシーの存在を教えてくれたのも彼女。そのバンクシー展に娘と一緒に行き、購入してきた本に書かれていた言葉、
「なぜバンクシーだけが壁に描くことを許されるのか」
これって当時のお兄ちゃんの気持ちかも!!
「なぜ妹だけが壁に描くことを許されるのか」
いや……別に許してないけど、ね。
★今回のエッセイの元になった課題本
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