エッセイ【赤やピンクよりも、青が好き】
「赤いシャツなんか着て、女か?」
小学4年の新学期、クラスメイトの男子が担任に言われた言葉を聞いて、嫌な感じを覚えた。今なら問題発言だ。男の子が赤い服着てたっていいじゃん。先生と赤いシャツのAくんの2人を見ながら、青が好きだった数年前の自分を思い出していた。
田舎のおばあちゃんちに行く電車の中で、母に言われ横に立っていた女の人に席を譲った。引っ込み思案で人見知りの私は、知らない人に声をかけるのにすごく勇気がいった。お母さんがその人に「席どうぞ」って言ってくれればいいのに。そしたら、私はただ立つだけで済むのに。
「あの、ここ、どうぞ」と小さな声で席を譲った私に、その人は「あら?ボク、ありがとう」と言った。
その日の私はおかっぱ頭にお気に入りの青いズボンを履いていた。恥ずかしいのに、勇気を出して声をかけたのに、席を譲ったのに、男の子に間違えられた。
ショックで次の日からそのお気に入りのズボンは履かなくなった。青が好きな自分を心のどこかに閉じ込め、髪の毛を伸ばしたいと駄々をこねた。
赤い服を着て、髪を伸ばしてみたけれど、可愛くはなれなかった。
伸ばした髪を結わくゴムを数回学校で失くしたら、怒った母にばっさりと短く切られてしまった。前より短く男の子みたいになった髪。赤もピンクも似合わない自分。イヤだイヤだ。こんな髪、嫌い。顔も嫌い。喋り方も嫌い。嫌い嫌い嫌い。男の子に間違えられる可愛くない自分が大嫌い。青も嫌い。赤もピンクも大嫌い!
中学生になりみんな制服になって、服の色と男か女かは関係なくなった。濃紺の制服を着ていて男子に間違われることはない。セーラー服が嬉しかった。
気づけば自分のことが好きになっていた。青が好きと言えるようになって自分を好きになったのか、自分を好きになったから青が好きと言えるようになって、赤もピンクも好きになったのか。それは今でもわからない。
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