エッセイ【お腹いっぱいの幸せな毎日。】
あれは今から20数年前。
いつもお腹の空いてた私が、彼と知り合ったのは都内のとあるレストラン。初めて見かけた時、なんて愛想のない男の子が新人で入ったんだろうって思ってた。でもあの時一緒にランチした友人が
「あ!なんか今、こっこちゃんがあの男の子と結婚してるイメージが浮かんだ!!」
なんて言い出したから、思わず飲んでたコーヒーカップ落としそうになったよ。
ないない。ぜーったいない!!なに、わけわからないこと言ってるのー!?
なんて首振ってたくせに、その後彼と話をする機会がありお酒の話で盛り上がって、じゃ今度飲みにでも行こう!って言ったはいいけど、それは社交辞令。それっきりになるはずが、その後たびたびばったり出会い、何度も
「いつ飲みに行くんですか?」と言われ……。
気づけばあれからもう20数年。ずっと一緒にいる。
コックとしてフレンチレストランに入社したはずの彼が、あの時サービス
スタッフとしてホールで働いていたのは、新人だったから店の流れを覚えるため。そしてその店は、私が一時的にバイトしていた会社の経営するレストラン。バイト先の一階がレストラン。お腹空かしていた私は、仕事の関係でのおまけやお誘いもらった時にはそこのレストランをよく利用していた。
このご縁、縁結びの神様が仕組んでくれたものだったのか。
結婚した後、彼の親戚に「気難しくて無口な子だったのに、あの子結婚していい感じになったねぇ。お嫁さんの力だね!」って私が褒められたよ。
子どもの頃から文章を書くのは好きで得意だけど料理は大の苦手な私と、
子どもの頃から料理を作るのが好きで得意だけど文章を書くのは大の苦手な彼と。融資関係の書類作成などは私が担当し、心を満たすための食事は彼が担当し、お互いの苦手な部分をフォローし合いながら、3人の子育て、そして夫婦別々の個人事業を続けてきた。
20数年前、無知ゆえに貧乏で心も満たされず毎日お腹ペコペコだった私。
今では、心もお腹もいっぱい。
あの日「ないない。ぜーったいない!!」なんて言ってごめんね。