この石は、生まれながらに虚弱であったり、何かしらの障害や難病を抱えた人々にとって 、 一筋の希望の光となる石である。
病というものを、心身の誤った使用法や伝染によるものと位置付けることもできるが、一概にそうとは言えないはずである。
遺伝子的な問題や、事故などのアクシデントによる後天的な影響はもちろんのこと、 何の前触れも無く、突然発症するケースも少なくない。
これらのケースは、自らの設定(プログラミング)によるものと考えられる。 言うなれば、ハンディキャップである。
例えばあなたに、他者よりも明らかに優れた潜在能力が与えられていたとしよう。 あなたはその高い能力を、この人生でどう生かせばいいのだろうか?
高い能力に対しては、高い報酬が与えられるのが世の常だ。
兵隊の中に、人並み外れて強い兵士がいたなら、当然誰よりも敵を多く倒し、彼には栄誉賞賛、褒美が与えられるだろう。
だがどれほど努力したところで、誰もがそうなれる訳ではない。
と、するなら、地位や名誉、そして高い報酬を受けられるのは、 もともと英雄として生まれついた者のみ、ということになってしまう。
しかしそれではあまりに不公平ではないかと思う者もいるだろう。
ならば、こんなハンディを与えるのはどうだろう。
誰よりも屈強に生まれた彼は、その結果波乱の人生を送ることになる。
常に戦うことを余儀なくされ、敵も多く、平穏な生活とは無縁。
その上、戦いによって肉体の一部を失ったり、愛する者を失う悲しみを背負う運命だ。
そんな設定を与えられていたとしたら、きっと誰もが尻込みするに違いない。
そう考えれば、肉体が虚弱に生まれついたことは、精神が強いという証であり、たとえ手足が動かずとも、目や耳や脳に障害があったとしても、
代わりに世界に飛び立てる翼を持って生まれたという証なのである。
そうして選択肢が狭められて、人はようやく自らの才に気付くのだ。
あなたに与えられたハンディは、あなたが他人と肩を並べて歩くために与えられたもの。それを乗り越えた時、初めて自らが他を圧倒する力を持っていたことを知るだろう。
故に今、どのような状況下に置かれたとしても、決して自らの人生を悲観するべきではない。
あの光り輝くアポロンでさえ、陽も射さぬ、暗く冷たい地下で誕生したのだから。