この石の、えも言われぬ美しさを醸し出しているのは、多くの傷ついた過去である。
人もまた同様に、傷つき打ちのめされ、それでも立ち上がった者は皆美しい。
ゆえに、傷つくことを恐れてはならない。
幼い子供がひとたび母の温かい懐から出れば、外界は危険なものだらけだ。
ひとり歩きをすれば、すぐに何かにつまづき、好奇心で触れれば刺が刺さり、甘いかと口に入れてみれば苦く、親切ごかしに寄って来る他人に欺かれる。
おそらく誰もが経験することであろう。
しかしいつまでもその場で泣いていたところで、何も始まらぬ。
人はさらに過酷な荒波が待つかもしれぬ大海へ、船出をせねばならないのだ。
時にはとてつもない大嵐に出逢い、船から放り出され、溺れても、
もしまだ生かされていたなら、暗い海を漂い、まだ先に進まねばならない。
人生の中で、目的を失い、財産を失い、満身創痍になっていたとしても、
僅かな光を辿り、地を這いずりながら生きるのと同じ。
愛する者たちは去り、孤独に絶え、だがそれでも生かされるのは、
あなたが並みならぬ力を持って、生れ出た証なのである。
その力を信じよ、そして今こそ、その力を使うとき。
勇気を持って嵐に立ち向かい、その身の罪も罰も、全てを受け止めよ。
そして何に恥じることなく、真っ直ぐに前を向くのだ。
するとそこに、遥かに続く一筋の美しい道が現れる。
あなたにはもう解るはずだ。
後は脇目も振らず、ただひたすらにその道を行けば良いということを。
人は常にその道を、見誤り、見失い、迷いの果て、深い闇の森に入る。
道を見つけられた者は幸運なのだ。
勇気と力ある者の前にだけ、その道は開け、姿を現す。
この石は、絶望と闇の中でこそ光輝く星のように、その道を明るく照らし出すだろう。
芝居にも人生にも、”暗転”はつきものだ。
たとえそれが、深く暗い奈落の底だとしても、
いつかまた新たな舞台がしつらえられ、あなたの本当の物語が始まるために。