一歩先を見据えて行動を(後編)

こんばんは。
今回は5年生以下を対象に、マッチングの話と、ポリクリの話を、「先取り」という少し変わった目線からしてみたいと思います。
今回の後編では、ポリクリについてお話しします。

すでにポリクリが始まっているみなさんは痛感しているかと思いますが、ポリクリって正直しんどいです。
朝早くから病院に行って、ときには遠くの関連病院へ。
興味がない外来やOpeを立ったまま延々見させられて、カルテを書かされて、諮問されて、レポートを書かされて...
大学によっては土曜日もあるし、外科では終わるのが夜遅くなってしまって部活に参加できないことも。
もちろん「学生さんはもう帰っていいよ」と言ってくれるいわゆる「神」のような指導医に当たって、午前中で帰れることもあるのですが。

多くの人が、「いかに早く解散にしてもらうか」「いかにしてサボるか」ということを考えるかと思います。自分にもそういう時がありました。
ですが、ポリクリってすごく長いようで実はすごく短くて、サボるだけではもったいないです。
今回は、ちょっと変わった視点として、ポリクリを「キッザニア:職業体験場」および「演習問題」として使う、ということをご提案します。

なりたい診療科を決めよう

現在みなさんの興味がある診療科を1つ、思い浮かべてください。
勉強してみて面白いと思った科でも、イメージでかっこいいなと思う科でもかまいません。

その科の医者が、何時に出勤をしてきて、どのくらいの患者を受け持ち、どのような雑用をして、どのような手技/手術を行って、お昼は何時くらいに食べて、何時くらいに帰るのか。当直はどのくらいの頻度なのか、考えたことはありますか。

例を3つ挙げます。
・循環器内科で、心不全の患者に厳密な体液管理をしたいと思って循環器内科の強い病院を選んだけれど、いざ働いてみたら朝から晩まで毎日のようにカテーテル(CAG/PCI/アブレーション...)につかされて、当直以外でも緊急カテや病棟急変で呼ばれて、こんなはずじゃなかったという疲弊した先生。
・全身くまなく診れて、ズバッと診断を下せるドクターGに憧れて、膠原病内科や総合診療医を目指したけれど、膠原病内科では病棟の患者のステロイド漸減や感染症の対応ばかり、総合診療科では精神科疾患(不安障害や身体症状症など)ばっかり。総合内科では腎盂腎炎や誤嚥性肺炎ばかりみている。なんだか思っていたのと違ったな、という先生。
・ゆるふわハイポに仕事をしたくて、皮膚科を選んだけれど、外来にオペ、病棟処置とやらないといけない仕事量は多いし、外勤に行かされることも当直回数も多い。壊死部分の処置はすごく大変。早く独立・開業したいけど、後期研修は5年もかかる。思っていたよりも全然しんどいな、という先生
以上のようなケースです。

これらは明らかにリサーチ不足によるものです。
こういうミスをしないためにも、ポリクリで興味がある科を回るときは先生の「影」として1日生活を共にしてみて、話を聞き、仕事の内容や待遇をしっかりと検討した方がいいです。


研修病院を決めよう
次に、研修病院を決める際にもポリクリの経験は活きます。

ポリクリ期間中、1度はカルテを記載すると思います。
(大学によってはしないので、自身でメモに診療録を記録してみます。)
このとき、時間を大まかでいいので計りながら、簡単に必要と思われる問診・診察をし、「カルテ 書き方 見本」と調べて出てくるような書き方や、参考書に記載されているようなきちんとした書き方で書いてみます。
さらに、できればこの時にPlanの欄に、自分なりの今後の方針:いつレントゲンや血液検査・尿検査などの検査を行なって、どういう薬を投与して、輸液は何を選んで...と言ったことを考えて書いてみましょう。
別に間違えていてもよいので、書いてみたあとに先生たちが実際に行った方針と自身の立てた方針とを比較することで、自分は何を間違えていたのか、何を勉強したらいいのかがわかり、非常に勉強になります。

そして、ここでかかった時間を、自分が行きたい病院の平均受け持ち人数へかけてみます。
もし、診察をして方針を考え、カルテを書くのに30分かかったとします。
10人受け持ちであれば、この10倍、すなわち300分/5時間もかかってしまうことになるのです。
病院によっては、採血や点滴交換、包帯交換もしなければいけないため、もっともっと時間はかかるでしょう。
(実際は動きのない、Stayの患者も一定数いるので、そんなにはかかりませんが)
20人、30人受け持ちのハイパー病院の大変さがわかるかと思います。
これを1度やってみることで、自分に最適な受け持ち患者の人数を予測することができます。

朝7時ぐらいの、集合よりも早めに病院に行ってみたり、わざと夜更かしをして、寝不足の状態で実習をすることで、忙しい病院での生活を体験できます。
(オペの前日や、諮問の前などは無理しないように)
当直回数が月6回以上で翌日そのまま働くようなハイパー病院を希望する場合、当直の翌日、そのまま働くということがどういうことか、実際にポリクリで実験してみて、体感しておくといいでしょう。
思っていたよりもかなり辛いことがわかると思います。

余談ですが、筆者は、もともとはハイパー病院志望でした。
ですが、「夜勤のバイト明けにそのままポリクリをしてみる」という体験や、「朝早くに病棟に行って病棟患者15人全員についてカルテを書いてみる」という体験を通じて、自分はあまりにもハイパーな、受け持ちが20人以上の病院や、当直回数が多く、当直明けも夕方まで働くような病院で研修をしていくのは難しいだろうと気づくことができました。
そのため、マッチングでは、現在の当直明けは早めに帰れて、受け持ちも10人程度の病院を上位に登録しました。結果として、これは正解だったと思います。



ポリクリで演習をしよう
最後に、ポリクリを「演習問題」として活かすということです。
ポリクリ中に回っている診療科の勉強をする人がいますが、それは遅すぎで、意味がないです。
「その次に回る診療科」の勉強をして、さらに国試の過去問を数年分は解いておくのが理想です。

こうすることで、
・現場で出会った患者さんのもつ疾患について、重要な症状・徴候・検査・治療がスラスラと言えるかどうか(基礎知識の定着状況)
・何が国試で重要な、知らないといけない/見ないといけない内容なのか。
・国試の範囲ではないけれど、実臨床でよく見る、覚えておかないといけないことはなんなのか。
・自分の興味があること:実習中に実際に見ておきたいこと(臨床所見/検査/治療法/術式...)はなんなのか
・わからないこと、知らないことがあるとき、どう対応したらいいのか。どうやって調べたらよいのか。

といったものがわかるため、ポリクリを有意義に過ごすことができます。
あらゆるものを演習問題と捉えて、まず自分なりの答えを出してみて、先生たちや先輩の答えと比べて、考え方・知識を修正していく、というものとしてやってみると、非常に大変ですが、それに見合うだけ、有意義に過ごせるはずです。

関連して、オペはただ立っているだけでつまらないという人の大多数はオペの手順および解剖の予習ができていません。
しっかりと手順と解剖とを覚えておくことで、
「いま何をしているのか、何を触っていて、何を探しにいくのか、次は何をしたいのか、この操作の目的は何か」ということが予想できるようになってきます。
その予想を、先生たちの実際の動きと比較して正しかったかどうかを確認する、「演習問題」とすることで、オペが有意義となります。
「これ持ってて」と鈎を渡されたときでも、何も知らなければテキトーに引っぱって終わりですが、勉強をしていけば、何を見せればいいか(先生が何を見たいか)がわかるため、考えて行動をすることができます。


まとめ
自由な時間を過ごせるのは学生の時だけですし、医者になったら散り散りになってしまって友達と会える頻度も減ってしまいます。
部活のように、みんなで仕事以外のことにチャレンジするような機会は今後そうそうないです。
なので、ポリクリをさくっと終わらせて、好きなことをしたい!という気持ちはもちろんわかるのですが、実際の医療現場に出て、実際の患者・実際の症例で勉強ができる機会はあまり多くはありません。
・将来の診療科決め
・研修病院決め
・知識確認のための演習の場

として、ポリクリは非常に重要となっています。
数日くらいは、思いっきりポリクリをしてみるのはどうでしょうか?

というのが今回の記事で伝えたいことです。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
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