大虎事件と院長ベッド
あれは、約23年前のこと。
聖マリアンナ医科大学病院の神経内科病棟の準夜勤の大事件。
関係者は、意識障害の患者と曽我部ナースと精神科医の宇田川医師だよ。
準夜勤で救命の医師から転科依頼の電話が来て、曽我部ナースが受けていた。
意識障害で道端で倒れていた40〜50代くらいの男性が救命から運ばれてきた。
聖マリアンナ医科大学病院の夜間帯は各病棟の空床は院長ベッド扱いで、入院患者が来たら順次埋まって行くと言う仕組みだった。
一点おかしかったのは各病棟の輸番制ではなくて、毎回、神経内科病棟が受け入れ病棟の1番手だった。
だから神経内科病棟の夜間帯はいつも戦争で、ナース離職率が高かった。
3年目以下のナースが病棟の7割強だった。
ちなみに、5年目ナースの永田ナースと末木ナースはベテラン扱いされていた。
話を戻して。
患者は男性で、170cmくらいで100キロ超えのスーパー巨漢だった。
ドクターとナースが5〜6人くらいで、ストレッチャーからベッドへ移した。
これだけで疲れるよ、マジで。
血圧が180/95mmHgで自発呼吸あり。
しばらくして患者がベッドから起き上がり、うぉ〜と叫び始めた。
フラフラしながらベッドサイドを徘徊している患者に曽我部ナースが、静かにしろと怒鳴っていた。
私は、精神科の当直医をコールした。
ネーベンの宇田川医師がやって来た。
私の顔を見て、震えていた宇田川医師。
おそらく、精神科病棟での肺塞栓オペ事件のトラウマだろうと私は察した。
宇田川医師は点滴にロヒプノールを入れて、寝たらドリップ中止と言う指示を出して逃げようとした。
私は宇田川医師に、精神科病棟の保護室に連れて行かないのですかと聞いた。
宇田川医師は出来ませんと言い、逃げて行った。
神経内科病棟には危険手当は無いんだよとは、宇田川医師には言わなかったが。
補足。
精神科病棟はナースの二人夜勤だったが、かなり若手のナースしかいなかった。
精神科病棟の伊藤泉婦長圧力で、若手のナースを守るために、夜間帯は入院患者を受けるなと医師に指示していたのだ。
ロヒプノールが殆ど効かなくて、ドリップ→少し寝る→また不穏→曽我部キレる→ドリップのヘビロテだった。
ちなみに巨漢過ぎで、タッチガード(抑制帯)は使えなかった。
ふと、寝ている患者を見ていたら、天井に手を伸ばして何かを掴むしぐさをしていた。
虫が見えてるアルコール依存症かなと思ったが、ほんの一瞬の出来事だったので気のせいかと思った。
翌日の日勤帯でご家族様が来た。
毎日、アルコールを一升飲んでいるバリバリの大虎だった。
予感的中。
精神科は身体疾患を否定してからではないと、精神科では受け入れられないと教授が言っていたそう。
患者は昼夜を問わず、一日中、叫んだり徘徊したりの離脱症状全開。
神経内科病棟の患者らは眠れないからと外泊を繰り返していたので、病棟内は閑散としていた。
意識のある神経難病の寝たきりの患者さんが不憫だったな。
1ヶ月くらいこの患者は神経内科病棟にいたが、検査不能だった。
医師の裏圧力でようやく精神科病棟へ行ったが、保護室内でも叫びまくっていたと聞いている。
セルシンの点滴していたのかな。
別件の話。
私が準夜勤で、救命医からの転棟依頼の電話を受けた。
医師に感染症のある方ですかと聞いたら、調べてないからわからない、別の病棟の打診をしますと電話を切られた。
当時の神経内科病棟には神経難病でパルス療法をしている易感染状態の患者がいっぱいいたから念の為に確認したまで。
3年目のナースが私が院長ベッドの患者の受け入れを拒否したと、震えていた。
そんなある日。
準夜で出勤したら、桝田婦長のデスクに院長からのお手紙が来ていた。
院長ベッド断るな、ゴラァ!
と、書いてあった。
あたしへの苦情だと分かっていたが、神経内科病棟の教授からも桝田婦長からも怒鳴られなかったよ。
院長ベッド拒否の正当な理由があったからね。
アッカンベー!
新人ナースから私と夜勤をすると楽だと褒められた。
まあ、救命からの患者を断っているからね(笑)。
ちなみに、神経内科の曽我部ナースらは夜間帯は院長ベッドだからとどんな患者でも受けていたよ。
頭おかしいよね?
余談。
私が院長ベッドの患者を断っていた、もうひとつの理由がある。
神経内科病棟は4人夜勤だったが、そのうちの2人は新人ナースだった。
ルーチンワークでいっぱいいっぱいでマンパワー的に受け入れは難しいし、また新人ナースらを守りたかったから。
他のもっとマンパワーのある病棟が受ければいいんじゃね、くらいに思っていたよ。
看護部長も桝田婦長も、ナースを守る力量が無かったからね。
バカタレ!
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