イワサキマリサさん
今から約10年前の東京都足立区にある成仁病院であった事件。
デイナイトケアに、一人の患者さんがやって来た。
成仁病院に約1年間医療保護入院していた、イワサキマリサさん30代女性。
デイナイトケアに通いはじめの頃は主任の藤松久恵や看護師の私に、1年間も入院させられていた怒りを語っていた。
彼女には母親がいたが、後に予後不良の癌が見つかる。
イワサキマリサさんは、一人で自立した生活を送れないくらいに重度の精神疾患があった。
訪問看護も受けていて、小野寺ナースが担当だった。
オシャレな服装で、デイナイトケアに通っていたイワサキマリサさん。
しばらくして、ファッションのイベントをする仲間が見つかったと言い始めた。
少し明るくなったかなと私は思っていた。
そのうちにイワサキマリサさんのデイナイトケアへの通所に遅刻が増えてきた。
少ししてから、通所の日が減ってきた。
ミニスカートが大好きだったイワサキマリサさん。
少しずつお腹が膨らみ始めていた。
想像妊娠かなと思っていた。
それとなく生理はあるのと聞いたら、笑顔でありますよと言っていた。
小野寺ナースは、もうイワサキマリサさんのアパートへ行きたくないと言い始める様になった。
かなりお腹が大きくなって来たある日のこと。
主治医の高橋医師が、主任の藤松久恵に電話をかけてきた。
レイプをされたとイワサキマリサさんが言っているが、デイナイトケアの記録には書かない様にと言う指示出しだった。
さらに、高橋医師がイワサキマリサさんに、サイマ治療の指示出しをした。
そのうちにイワサキマリサさんは、デイナイトケアから姿を消した。
私も退職したので、その後の詳しいことはわからない。
サイマ治療をしていたのは、黒川達也医師とベーシックナースの皆さん。
彼女の安否確認は、誰がするんだろうね。
余談。
イワサキマリサさんが成仁病院を退院した理由は、急性期の病院にこれ以上は置いておけないと言うことだった。
ならば生活保護で一人暮らしをさせるのではなく慢性期の患者向けの病院に転院させれば、こんな悲劇は起こらなかっただろうな。
これは高橋医師だけの問題ではなく、重度の精神疾患の患者を地域に帰すと様々な危険があると言う現実問題だ。
精神疾患が重すぎて現実検討能力や判断能力が落ちている精神障害者を、国がどう守っていくか。
一石を投じたい。