日本にある『赤毛のアン』の聖地。北海道芦別市の『カナディアンワールド』
北海道の芦別市に、赤毛のアンの故郷プリンスエドワード島を模したカナディアンワールドというテーマパークがあるのをご存じだろうか。2020年より任意団体「カナディアンワールド振興会」がテーマパークの管理・運営を行い、毎年4月下旬~10月下旬の土日祝限定で開園する。今回はその事務局長をしている佐藤さんにカナディアンワールドを民営化した経緯や現在についてお話を伺った。
”大学生時代に『人形劇』をやっていたことが今につながる”
ーーはじめまして。KOKIKUと申します。本日はどうぞよろしくお願いします!早速ですが、自己紹介をお願いします。
佐藤さん:カナディアンワールド・事務局長の佐藤です。事務局長をする前は小学校教員をしていました。退職した後、カナディアンワールドで事務局長と、それとは別に『ダイアナの家』で人形劇をやっています。
ーー小学校の先生だったんですね!
佐藤さん:はい、それはもう悪い先生で、、、(笑)
ーーまたまた(笑) でもなぜ人形劇なのですか?小学校の先生から。。。
佐藤さん:実は大学時代に人形劇をやっていたんです。それを知っていた友人が、カナディアンワールドの冬のイベントで人形劇をやるから一緒にやらないかと声をかけてくれまして。それが今から約30年前でしょうか。
それが始まりで、芦別市のボランティア団体の赤毛のアンの人形劇をやっていました。
ーー佐藤さん、人形劇の劇団員だったんですね!
佐藤さん:そうなんです。でもそのイベントの後に人形劇を終わりにするという話があって。それではこの人形達の居場所がなくなってしまう、可哀そうだ!と思い、人形達が引き続き活躍できる場所をつくろうと、芦別市で市民の人形劇団を作りました。
ーーすごい、劇団を作ってしまうとは!人形劇に誘われた頃、佐藤さんはカナディアンワールドを知っていたのですか?
佐藤さん:人形劇に誘われた時にカナディアンワールドを知りました。出身が札幌なのですが、芦別に転勤になったのがこの頃でした。ちょうどカナディアンワールドが出来た頃ですね。
ーーカナディアンワールドを知ったのは開園当初なんですね。現在も人形劇はやっていますか?
佐藤さん:いえ、コロナが始まった3年前から人形劇はやれていません。それまでは図書館や、児童センター(つばさ)でも人形劇をやっていたのですが。。。練習も出来ず開店休業中です。
ーーそれはとても残念ですね。
佐藤さん:そうですね。でも、ここで(ダイアナの家)人形劇体験が出来るんですけど、『三匹のこぶた』っていう。それを家族連れで遊んでいってくれる人とかもいて、それを見ていると、とても嬉しいですね。
ーー演じる楽しさを知るとても良い機会ですね。人形劇は再開される予定ですか?
佐藤さん:みんな年だからね。若い子が入ってくれないから復活は難しいかもしれないね。
ーー小さい頃、ひょっこりひょうたん島とかサンダーバードとかをテレビで見て、あの世界観に魅せられていました。是非、赤毛のアンの人形劇もこの目で見てみたいです!
若い方達が興味を持ってくれて参加してくれたら再開できるかも、、、!その時は佐藤さんが師匠になって。
佐藤さん:赤毛のアンの人形劇をやろうと思ったら20人以上は必要だから、なかなか難しいけれどね。以前、ドールさんっていう写真家の方からね、『飾られているだけで人形が悲しんでる!明るく華やかな舞台にいたんだからそこに返してあげないと!』って怒られて(笑)僕は、この『ダイアナの家』に飾っているんだから人形達は喜んでるって思ったんだけどね。どうやらそうじゃないみたい。
ーーあ、でもドールさんの言っていることも分かる気がします。本来は劇をする為の人形ですから、その劇が出来ずにいるのは寂しいというか。でも、『ダイアナの家』に入ってこの人形達が目入って来た時、わーっと感動しました!いまにも動き出しそうで。
佐藤さん:そうでしょう?ここがこの子達の家なんです。だからカナディアンを続けていきたいと思うんですよ。
ーーそれがカナディアンを復活させようと思ったきっかけに繋がるんですね。
佐藤さん:そう!カナディアンワールドがないとこの子達の行き場所がないから。
こうやって来て頂いた人達に見て、触れてもらうのもとても嬉しいですしね。
ーー人形に対する愛情ですね!
佐藤さん:なかば押し付けられたんだけどね(笑)。団長だったんで、人形を管理しなくちゃいけなかったんす。それにね、芦別市の中で人を集められるのはここしかない様に思うんです。今はあまり見かけないけど、昔はよく海外の人もカナディアンワールドに来てくれて。
後は、カナダに直接行けないからここに来たと言って来てくれる方々のためにカナディアンワールドを潰したくないと思いました。
”一から作り上げる感じが楽しかった”
ーーカナディアンワールドを民営化するということは大変な労力だったと思いますが、一番大変だったことは何ですか?
佐藤さん:最初はね、楽しかったんですよ。一から作り上げる感じが。夜中に来て朝早くから草刈やったりする人がいたり。でもいろんな人が関わって来るでしょ。そうなるとやっぱり人間関係が大変だよね。
ーー考え方の違いがあったりしますものね。
佐藤さん:そうなんですよ。だから人が多くなるとまとめるのとか大変だね。でも人手がないのも困るよね。難しい。
”カナディアンワールドは全てボランティアで対応している。”
ーーカナディアンワールドを続けていく上で、普段はどんな活動をされていますか?
佐藤さん:普段は主に園全体の管理をしています。門の開閉や駐車券の準備など。園を閉める時は人がいないか確認して回ったり、テナントの方に呼ばれて手助けをしたりしていますが、園が広く管理する人数が少ないので結構大変です。
ーーこの広大な敷地の管理。それは本当に大変ですね。しかも全てボランティアですものね。
佐藤さん:そうなんです。出来ることに限りがあって。例えば入口の駐車券を配る場所に人を置いて初めてパークなんですが、人が足りずに無人になっていたり。。。
ーーSNSで拝見しましたが、駐車場代を払わないで入って来てしまう人がいるとか。
佐藤さん:うーん、まぁ人間100%じゃないから仕方ないというか。
ーーでも残念ですね。。。
佐藤さん:でも、ちょっとづつですけどカナディアンワールド全体の収入が上がって来たので、不思議なんだけど。
ーーその収益がカナディアンワールドの維持費になっているわけですよね。もっとカナディアンに使える維持費が増えていくと良いですね。カナディアンワールドを民営化して3年になると思いますが、今までで一番嬉しかった出来事は何ですか?
佐藤さん:出来事というか、やはり続けていけることが嬉しい。本当だったら閉園してるはずだら。ここに座っていられることがとても嬉しいです。
ーー私もこうやって佐藤さんにお会い出来て嬉しいです!(笑)
佐藤さん:ははは。
ーー反対に、悲しかった出来事はありますか?
佐藤さん:やっぱり人間関係かなぁ。カナディアンワールドは赤毛のアンが実際に住んで生活しているというのがテーマだったんですよ。だけどもっとテーマパーク化したい、赤毛のアンのメモリアルの看板を立てたいと思う人がいたり、意識やカナディアンワールドのとらえ方の違いが出てきたりして。悲しいと言うか複雑ですね。カナディアンワールドを続けていきたいと言う思いは同じなので。
ーーコロナより人間関係の方が大変、、、?
佐藤さん:うん、、、(笑) 別にコロナはね、そんなに関係ないというか。自然の中だからあまり気にならないかな。だから来たよって言ってくれる人もいるし。
ーー確かにカナディアンワールドって本当に自然豊かですよね。ふっと日本を忘れてしまうぐらい。咲いている花とかプリンスエドワード島と一緒ですもん。ルピナスとかレースフラワーとか。ここにカナディアンをつくろうと思った理由がわかる気がします。
佐藤さん:そうでしょ?プリンスエドワード島の写真見て雰囲気が似てるなと思いましたよ。同じ花が写ってる!って。気候も似てるしね。
ーー気候似てますよね。似てないというか、ないのはこの笹の葉ですね(笑)
佐藤さん:それはそうでしょうね、これは北海道のクマザサだから(笑)
ーーこのダイアナの家の窓から見えるこの景色が本当に癒されます。静けさも。
佐藤さん:それがわたしのおススメです。ゆっくりのんびりして行って欲しいです。
”カナディアンワールドには赤毛のアンの初版本が’ある”
ーーカナディアンワールドに秘密ありはますか?トリビアというか。
佐藤さん:みんな知ってると思うけど、アンの家の二階にはモンゴメリ記念館があるんですよ。モンゴメリの初版本もあります。
ーーそれは知りませんでした!
佐藤さん:残念ながら今は人手不足もあり一般公開はしていないのですが。
ーー人手が増えて一般公開出来る日が来ることを期待しております!
佐藤さん:アンの家にはスタッフがいないので、スタッフがいればそうですね、また公開することも出来ますね。
”沢山の人にカナディアンワールドを知ってもらい、沢山の人に来てもらいたい”
ーー今後カナディアンワールドをどうしていきたいですか?
佐藤さん:やっぱり、カナディアンワールドに来てくれる人を集めていきたいですね。カナディアンワールドが出来た頃に戻したいというのが一番の希望です。
あとは、現在冬の間は閉まっているのですが、冬の間にしか見られない景色などもあるので、年間を通して開けていたいと思っているボランティアの方々います。それについて話し合いや対応を重ねて、より沢山の方に来て頂ける様にと思っています。
ーー私も冬のカナディアンワールドも見てみたいです!是非これからも、カナディアンワールドを続けていって欲しいと心から願っています。
本日はどうもありがとうございました。
最後に、皆さんへ向けて一言お願いできますでしょうか?
佐藤さん:是非、カナディアンワールドに来てこの素晴らしい景観を見て、体験してください。スタッフ一同お待ちしています。
穏やかで、やさしさの溢れる事務局長の佐藤さん。人形達やカナディアンワールドに対する愛情の深さを感じ、温かく素敵な気持ちを頂きました。
2023年のカナディアンワールドは4/22(土)にオープン予定。
コロナが落ち着いて来た今年、是非足を運んでゆったりとした素敵な時間をカナディアンワールドで過ごしてみてはいかがでしょうか。