#11 コロナ
金曜日の夜から2泊3日の予定で、おばあちゃんの家に行くことを、りこはずっと楽しみにしていた。今回は、おばあちゃんに教えてもらい、毛糸の編み物に挑戦するつもりだった。
下校後着替え等を準備し、私とりこは4時過ぎの電車で出発する予定だった。その直前になってママから、りこに電話がかかってきた。ママの職場でコロナの患者が出たこと、ママも濃厚接触者として今PCR検査を受けたことを伝えた。そしてママが電話で「ママが感染していたら、りこも感染してるかもしれない。そやから今回だけはおばあちゃんの家に行くことやめときなさい。おじいちゃんやおばあちゃんがコロナになったらあかんやろ」とりこに説得した。ママの言うことに、りこは「うん」と小さく答えた。
その後、泣きそうになりながらも漢字の宿題を始めた。つぎの算数の宿題プリントが終わるころ、「どうしても行ったらあかんのかな~~」とつぶやいた。宿題が終わってからは、自分の好きなYouTubeを見ていた。
ママが家に帰る直前には、「やっぱり行ったらアカンわ」と小声で自分に言っていた。自分の気持ちを整えていたのだ。