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2億円で売上350億円を作った「Zapier」創業の軌跡

たった2億円だけの資金調達で、売上350億円/ユーザー数300万人、時価総額6,500億円企業となった「Zapier」の創業経緯や背景に深く迫ります。起業や新規事業を検討中の方にとって少しでもヒントになれば幸いです。


Summery

忙しくて全部は読めない or 要点だけ知りたい方のために、
重要な学び5つを以下にまとめを記載します

① 原体験の深堀り

  • フォスター氏がEメールマーケティングで膨大な手作業を要した体験が、Zapierの発想の原点でした。「自分が苦労した」という切実な課題感があるからこそ、その解決に本気で取り組み、最初のユーザーとの対話でも説得力を持てたと考えられます。

② 小さく始め、顧客に執着する

  • スタートアップ・ウィークエンドで試作品を2日間で作り、その後フォーラムを地道に回ってユーザーを1人ひとり獲得した。これは効率が悪いように見えますが、当初は徹底してエンドユーザーに寄り添うことで、実際の「使われ方」を学ぶことができました。

  • また、フォスター氏らは初期の段階でフォーラム対応や顧客とのSkypeコールを活用し、ユーザーの要望を深く理解しました。こうした密接なサポート体制は、ユーザーのロイヤルティを高めるとともに、機能改良やバグ修正の速さにもつながります。

③ プロダクト主導型の成長(Product-led Growth)の強み

  • Zapierはユーザーが何を求めているか(どんなアプリ同士を連携したいのか)を徹底的に調べ、その検索クエリにヒットするランディングページを作り込みました。同時に、独自ブログで「生産性」や「業務効率」に関する幅広いコンテンツを公開し、長期的なオーガニック流入を獲得しています。SaaS企業の集客方法として、非常に教科書的な成功事例といえます。

  • 大きな営業組織や広告予算に頼るのではなく、プロダクトの利便性でユーザーを増やす。さらに、使い込むほど追加課金につながるモデルによって、地道でも強固な収益基盤を築くことが可能になります。

④ あえて多額の資金調達を避ける選択肢

  • 「VCから巨額を集める=正解」という風潮もありますが、Zapierのように必要最小限の資本で黒字化を目指すモデルもあり得ます。もちろん、それには地道な売上成長やプロダクトの優位性が不可欠ですが、「株式の希薄化を防ぎ、独立性を維持する」というメリットは大きいと考えられます。

⑤ 市場のトレンド(クラウド化、リモートワーク普及)への適合

  • 2010年代以降、SaaSの普及やリモートワークの浸透に伴い、業務で使うツールの数が爆発的に増えました。Zapierが狙ったのは、まさにこの「多数のツールをいかに効率よく連携するか」というニーズです。時流に乗っただけでなく、そこに対して具体的なソリューションを提示した点が成功の要因といえます。

  • 創業時から遠隔で作業を進める文化を当たり前にしていたため、規模拡大後もリモートワークをスムーズに導入できました。これはオフィスコストの削減にもつながり、また世界中から優秀な人材を採用できる柔軟性を確保しています。

ここから、詳細な創業ストーリーを記載します。

事業概要

Zapierは、2023年末時点で6,000以上のアプリを連携させることができる自動化プラットフォームで、プログラミングの知識がなくても、誰でも簡単にワークフローを自動化させることができます。

現代の企業は平均して88個のアプリを活用しており、知識労働者の1日の平均使用アプリ数は9.4個にのぼります。このように多くのツールを使用する環境では、それぞれのアプリ間でのデータのやり取りやタスクの連携が不可欠です。

しかし、多くの場合、それらの連携は手動で行われており、時間と労力がかかります。そこで登場するのがZapierです。Zapierは、例えばAirtableのフォーム送信がトリガーとなり、自動的にメールが送信され、そのメールが会議のスケジュールを設定し、さらにCRMの特定フィールドを更新する、といった一連のプロセスをシームレスに自動化できます。アメリカでは1億人以上のナレッジワーカーがいますが、9割以上が自動化ツールを使用中もしくは、使用を計画しています。

創業ストーリー

1.「ものづくり」への憧れと挫折

2008年は、世界的な金融危機が吹き荒れる年でした。学生から社会人へと踏み出す人々にとって、就職やキャリアの選択肢は急激に限られていました。そんな混乱の時期に、アメリカ・ミズーリ州の大学(University of Missouri、通称「Mizzou」)を卒業したのが、後にZapier(ザピアー)を共同創業するウェイド・フォスター(Wade Foster)氏です。

フォスター氏は高校時代、音楽、とりわけジャズに傾倒していたことが知られています。しかし、大学進学や就職活動にあたり、「自分は何者として社会に出るのか」という問いに直面しました。彼が選んだのは産業工学(Industrial Engineering)という専攻でした。製造業や効率化への関心をもともと持っていたことに加え、「何かを作り出す」という生産性や創造力に惹かれたのです。ところが、卒業後に本来であれば用意されているはずのインターンシップや就職の枠は、金融危機で大幅に減っていました。

伝統的な製造業の道を断念せざるを得なかったフォスター氏は、視点を変えてテック業界に飛び込みます。運よく見つけたのは「Idea Works」という小さなソフトウェア企業でのサマーインターンでした。ここは創業間もないスタートアップで、エンジニアやデザイナー、営業が合わせて数名ほどしかいない状況だったといわれています。自宅兼オフィスのような場所で仲間たちと肩を寄せ合い、ソフトウェアを作っては遠隔地の顧客に販売する――そのスタートアップらしい光景は、フォスター氏の心を大きく揺さぶりました。

数人の仲間が家に集まってソフトウェアを作り、それを何千マイルも離れた誰かが購入して使っている。そんな光景が僕にはとてもクールに映ったんです。『こんな生き方をしたい』とすぐに思いました。

ウェイド・フォスター(Zapier CEO)

彼はのちに振り返ってそう語っています。ここでテック業界のスピード感や、作ったものがすぐにユーザーに届くダイレクトさに魅了され、「自分もスタートアップでやっていきたい」という気持ちを一層強くします。その後フォスター氏はIdea Worksに正社員として採用され、「カスタマー・デベロップメント・リード(Customer Development Lead)」という肩書の下、いわゆるリーンスタートアップの手法を学びつつ、データ分析や仮説検証を身につけました。

2.非効率との闘い

金融危機からしばらく経った2011年、フォスター氏はベテランズ・ユナイテッド・ホームローンズ(Veterans United Home Loans)という住宅ローンの会社に入社します。彼の役割は「Eメール・マーケティング・マネージャー」。1日に100万通を超えるEメールを管理し、それを顧客データベース(ローン状況など)と同期させながら、顧客のLTV(顧客生涯価値)を追跡する――という、当時としてはかなり大規模なマーケティング業務を担っていました。ところが、組織で使われるソフトウェアが多岐にわたる一方、それらの連携はほとんど自動化されておらず、大量のデータをあちこちのアプリに「コピペ」するような手作業が常態化していたのです。ある顧客のローン審査状況が変われば、それをメール配信ツールや社内CRMに反映させ、また別のステータス管理ツールにも情報を送り……といった作業を延々とこなす必要がありました。

フォスター氏の頭の中では、徐々に「こうした繰り返し作業は本来であれば自動化できるはず」という問題意識が芽生えます。同時に、かつて大学でともにジャズを楽しんだ友人、ブライアン・ヘルミッグ(Bryan Helmig)氏との交流も復活し始めました。ヘルミッグ氏はフォスター氏と同じく、IT系の技術に興味を持ち、ウェブ開発などのスキルを磨いていた人物です。ふたりは夜な夜なSkypeやチャットで「ああでもない、こうでもない」と新しいアイデアを出し合いました。

「Eメールとデータベースを連携させる仕事をしているけれど、本当にめんどくさいんだよ。なんとか自動化できないかな」「APIを使えばいけると思うんだけど、もっと簡単にできる仕組みがあればいいのに」

創業メンバーの会話

会話を繰り返すうちに、やがて「ウェブアプリ同士がもっと簡単に『おしゃべり』できればいい」という発想が彼らの頭に定着していきます。そして、さらにもう一人の友人であり、同じ大学の仲間だったマイク・ヌープ(Mike Knoop)氏も誘い、3人で「Zapier」の原型を形にしていくことになりました。

3.スタートアップ・ウィークエンドからの飛躍

2011年当時、全員がまだフルタイムの仕事を抱えており、Zapierの開発は夜間や週末しか進められない状況でした。その中で彼らは地元で開催された「スタートアップ・ウィークエンド(Startup Weekend)」に参加します。これは起業家やエンジニア、デザイナーなどが一堂に集まり、短期集中でビジネスアイデアを形にするイベントです。約2日間のハッカソンで、3人は初期版のZapierをつくり上げました。

まだごく限られたアプリケーション同士を連携させるだけのシンプルな試作品でしたが、イベント参加者からは「面白い」「これ、欲しかった」との声が上がります。そこで彼らは「これはいけるんじゃないか?」と確信し、さらに開発を進めることを決めました。しかし、スタートアップ・ウィークエンド終了後も、3人はそれぞれ日中は本業をこなし、夜中の3時まで開発に没頭する日々が続きます。体力面・精神面ともに限界の中、それでも手応えのあるフィードバックをもらえるたび、彼らは希望を抱きました。

4.初期ユーザー獲得の巧みな戦術

Zapierは当初マーケティング予算など皆無に等しく、宣伝手段を持ち合わせていませんでした。そこでフォスター氏が考えたのは「すでにユーザーが困っている場所に行けばいい」というシンプルな方法です。

たとえばEvernoteやSalesforce、Dropboxのユーザーフォーラムには、「○○と連携できないか?」「××がうまく同期しない」といった質問が多数寄せられていました。彼はそれを1件ずつ探し、回答欄に「こういうAPIを使えばできますが、もしよかったらZapierというサービスを試してみませんか?」と書き込む作戦をとったのです。

大抵の人は「APIの設定なんて無理」と諦めていたところに、「これを使えば自分でコードを書かなくてもつながるかもしれない」という提示がなされたわけです。当時は本当に数クリックで済んだわけではなく、半分は手動設定だったりもしたそうですが、それでも「興味がある」という人が一定数いて、そこからZapierの存在がじわじわと広がっていきました。

「フォーラム1件につき10〜20人ぐらいがZapierサイトを見に来るんですけど、その半分ぐらいが『使いたい!』と言ってくれるんですよ」

ウェイド・フォスター(Zapier CEO)

とフォスター氏は後に語っています。もちろんこの手法は時間と手間がかかり、最終的にはスケールしませんでした。しかし当時のZapierにとっては貴重なユーザー獲得の場であり、さらにユーザーが何を求めているかを学ぶリサーチの場でもあったのです。

5.Yコンビネーターへの挑戦と再度の挫折、そして再挑戦

2011年に最初の試作品ができたのを機に、3人は有名インキュベーター「Yコンビネーター(Y Combinator、以下YC)」に応募しました。ところが、結果は不合格。理由は明確には伝えられなかったものの、当時のZapierは製品自体が初期段階で、ユーザーベースも小さく、まだ投資家を納得させる実績が乏しかったと考えられています。

しかし、彼らは落胆しませんでした。むしろ「まずは目の前のユーザーを増やし、製品を磨こう」と気持ちを新たにし、さらなる開発を続けます。すると2011年末には、Zapierのローンチリスト(ベータ版の先行申し込みリスト)が1万人に達し、連携可能なアプリも25種類に増加しました。夜と週末だけでこれだけ進めたのは驚異的ですが、それだけ「現場の困りごと」を捉えたアイデアに需要があったとも言えます。

そして翌2012年、チームは再度YCに挑戦しました。今度は初期顧客が付き、フォスター氏らが実際にユーザーからのフィードバックを受けて改良を重ねていた点が大きく評価されたのか、見事合格を果たします。3人はそれぞれが勤めていた企業を辞め、YCの夏季バッチ「Summer 2012」に参加することになりました。

YCのプログラムは厳しく、集中力が求められることで知られています。当時のZapierチームはサンフランシスコの狭いアパートに住み込み、3人が同じ空間で生活しながら開発に打ち込みました。「コードを書き、ユーザーと話し、またコードを書く」という単調かつ過酷な日々でしたが、そのぶん成果は目に見えて現れます。YCのメンターや投資家とのネットワークを通じて、多くのSaaS企業の創業者や開発者と知り合うことができ、Zapierの認知度も高まりました。YCへの合格は、SaaS企業にコンタクトを取る際の「箔付け」にもなりました。

たとえば「わたしたちは今YCのプログラムに参加しているZapierです。御社のアプリとの連携をぜひ実現したい」というメールを出すと、無名スタートアップだった頃よりは確実に返事が来る確率が上がったのです。こうした地道なアプローチにより、大手SaaSや新興SaaSの両方とのパートナーシップを拡大していきました。

また、YCに参加することで、当初は数十種類だったアプリとの連携数を一気に100以上へと増やすことにも成功します。さらに、ユーザーが探しているアプリ連携を網羅的に把握し、ZapierのSEO(検索エンジン最適化)も進めました。具体的には「SlackとSalesforceを連携するには?」「DropboxとGmailの連携方法」といった検索が行われたとき、Zapierのランディングページが上位に出てくるように工夫したのです。これは後に、Zapierの重要な集客チャネルとなっていきます。

6.最初の資金調達と「プロダクト主導」の成長

YCを経て、Zapierは2012年10月にシード投資として約130万ドルの資金(総額約2億円)を調達しました。スタートアップとしては少額に思えるかもしれませんが、Zapierの場合、この1回きりの外部資金調達で長期にわたり生き延び、さらに成長を続けることになります

後述するように、この点は他のSaaS企業と比べても異例といわれています。その大きな要因は、「プロダクト自体が成長を呼び込む構造(Product-led growth)」だったからだと考えられます。Zapierを使うメリットは、「コード不要でアプリケーション連携ができる」という点に集約されています。IT部門やエンジニアの承認をわざわざ得なくても、自分自身で使いたいアプリ連携をサクッと設定できる。こうして一度Zapierの便利さを知ったユーザーは、さらに別の業務フローも自動化しようと試してみるのです。

Zapierの料金体系は「タスク数」に応じたサブスクリプションモデルです。あるワークフロー(Zap)を自動化すればするほど、タスクを実行する回数が増え、利用料金も上がっていく仕組みになっています。一方で、無料プランも用意されているため、導入のハードルは低めです。こうした設計により、Zapierは特大の広告費やセールス&マーケティングチームを要さずとも、緩やかにではありますが、確実にユーザー層を拡大していきました。

私​​たちは、空想的なアイデアを持った無名の3人から、まだ素晴らしい経歴はないが、実際に何かを成し遂げ、何かを構築できることを示した3人へと成長できました。

ウェイド・フォスター(Zapier CEO)

7.コンテンツ・マーケティングとSEOへの注力

Zapierが成功するうえで、もうひとつ大きな要因となったのが「長文コンテンツによるマーケティング」と「SEO戦略」でした。先ほど述べたように、ユーザーが欲しがっているアプリ連携をインデックス化して検索エンジン対策をすることで、新規顧客獲得の導線を作ったのです。さらに2012年〜2013年頃から、Zapierは自社ブログを本格的にスタートします。そこでは主に「業務効率化」や「生産性向上」など、広い意味でZapierが狙うユーザー層に響くテーマの記事を充実させました。

単に製品紹介だけではなく、リモートワーク術やタスク管理術、営業やマーケティングの自動化事例など、多面的なコンテンツを提供しました。これらの記事は最初の半年ほどは大きなトラフィックを生みませんでしたが、徐々に検索エンジンからの流入が増え、最終的には毎月25万以上のユニークビジターを集めるまでになったとされています。この「コンテンツを育てる」アプローチは、いったん軌道に乗ると長期的に効いてくるため、他のSaaS企業も後に追随することになりました。

8.ユーザーが語るZapierの真価

Zapierは自分たちでコードを書かなくても各種ツールを連携できるプラットフォームとして、特に中小企業や個人事業主、フリーランスなどの「プロシューマー」(prosumer)層に大きく支持されました。例えば、あるユーザーはこう語っています

「小規模事業を運営しており、営業リードが来るたびにCRMに手入力していました。Zapierを導入してからは、それが自動化されて驚くほど楽になったのです。さらにGmailで顧客対応をすると、その情報が別のツールにも流れるので、もうエクセルで管理する必要はありません。時間短縮だけでなく、ミスも減りました」

米国のレビューサイトでの投稿

こうした声が積み重なることで「Zapierがないと業務が回らない」というユーザーが増え、結果的に解約率の低い「スティッキ―」なサービスになっていったのです。知名度こそ、SlackやZoomのように爆発的ではないものの、地道にユーザーベースを築き上げることで、2014年にはすでに黒字化を達成していたといわれています。

9.追加資金調達を拒否し続けた戦略

Zapierは2012年のYC参加とシード調達(総額で約140万ドルとも)以降、大々的な追加ラウンドを起こしていません。スタートアップの世界では、シリーズA・B・C…と巨額の資金を調達して一気に規模拡大するのが定石のように語られがちですが、Zapierの共同創業者たちは、「むやみに調達すれば、収益性よりも成長速度が優先されてしまう」「VCの要求に応じ続けるのではなく、自分たちのペースで事業を育てたい」と考えました。

もちろん、まったく投資家の出資を受けなかったわけではありません。2021年にセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)がZapier株をセカンダリー取引(既存株主からの買い取り)で取得した際には、約50億ドル(5B USD)前後のバリュエーションがついたと報じられています。ただし、それはあくまでZapierの既存株主が保有株を売却する形であり、Zapier本体に資金が入るわけではありませんでした。そのため、Zapierが受け取ったVCからの現金は2012年当時のシードラウンドにとどまっている、という点で特殊です。

この戦略には賛否両論があります。資金を十分に調達し、広告や営業チームを拡大すれば、もっと急成長できるという見方もあったでしょう。しかしZapierの共同創業者たちは、堅実な利益体質を確保しながら、必要十分な範囲での成長を実現する道を選んだのです。この結果、社員の持株比率が高く保たれ、創業者の株式希薄化も抑えられました。実際、ある報道では2021年時点でも創業者たちが80%近い株式を保持していたとの推定があります。

10.競争環境とリモート文化

ZapierのようなiPaaS(Integration Platform as a Service)の分野では、企業向けの統合ソリューションとして、MuleSoftやBoomi、Workato、Tray.ioなどが先行あるいは並走していました。これらは多くがエンタープライズ向けの高機能・高価格帯を志向する一方で、Zapierは「プロシューマー」を中心とした中小企業および個人事業主向けの使いやすさを武器として差別化を図っています。

しかしながら、リスクがないわけではありません。たとえばカレンダー予約ツールのCalendlyや、大手のGoogleやMicrosoftなどが、独自でワークフロー自動化機能を提供し始めています。もし「Zapierの代わりに、プラットフォーム内でネイティブに完結する統合ツールがあるなら、そのほうが便利だ」というユーザーが増えれば、Zapierの市場シェアは脅かされかねません。

もう一つ、Zapierにとっての懸念は、料金体系です。Zapierは「使うほど費用が増える」タスク課金モデルであるため、大企業が大量のデータ連携を行う場合にはコストが高額になり、自社開発に切り替えるケースも考えられます。このように、使用が増えるほど顧客が離反する可能性がある、という「逆説的なリスク」を内包しているわけです。

また、2020年代に入ると、AIや機械学習、クラウド化の加速などにより、業務自動化の重要性はさらに増しています。市場調査によれば、ハイパーオートメーション(hyper-automation)という概念が注目され、今後大きく伸びるという見立てもあります。Zapierはこのトレンドに対応すべく、「Transfer by Zapier」という新機能をリリースし、大規模なデータ移行にも対応しようとしています。これは従来のZapierが得意とする「小規模のリアルタイム連携」だけでなく、大量データをまとめて移行するワークフローにも手を広げる動きです。たとえば、Fivetranなどの大規模データパイプライン企業が台頭する中、Zapierが同じ領域に踏み込むのか、それとも「中小企業向けのライトなデータ転送」にとどめるのか。その戦略はまだ完全には見えていませんが、これまでのようにユーザーの求める方向に着実に機能を拡充していくことは間違いないでしょう。


まとめ 変わりゆく市場とZapierの可能性

Zapierは、スタートアップとしては比較的地味な存在だったかもしれません。目立つ巨大投資ラウンドを繰り返すわけでも、大々的なプロモーションを打つわけでもなく、少数精鋭で堅実なサービスを提供し続けてきました。

その結果、2021年時点で年商1億ドル(約140億円)規模に到達し、推定50億ドル(約7,500億円)の評価額がつくなど、高い収益性と独立性を両立した企業として注目を集めています。

今後、SaaSのさらなる普及やクラウドサービスの細分化、リモートワークの進展などを背景に、「あらゆる人が業務の一部を自動化する時代」は一段と加速すると見られています。Zapierが得意とする「非エンジニアでも簡単にワークフローを構築できる」強みは、より大きな市場機会につながる可能性があります。

一方で、ネイティブ連携の競合や大手が提供する自動化プラットフォームの台頭というリスクも、これまで以上に現実味を帯びてきました。「今後も世界はどんどん複雑になり、使うツールは増える一方です。だからこそ、わたしたちはZapierを通じて、その複雑さをシンプルにする手伝いをしたいのです」これはかつてフォスター氏が語ったとされる言葉ですが、それを裏付けるかのように、Zapierはアップデートを繰り返しながらユーザーのニーズを汲み取り続けています。

結果的に創業10年を超えてもなお、Zapierは自社株の大部分を創業チームが保有し、自分たちの信じるビジョンを堅実に実行しています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの記事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです!
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