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井本響太 藤元高輝 ギターデュオコンサート 解説 M. ジュリアーニ : ポプリ op.67

2023年 8月5日 井本響太さんとのデュオコンサートために、noteで随時プログラムノートを公開します



ポプリについてざっくりと

ポプリとはメドレーと同じ意味で、さまざまなメロディや楽曲が混ぜ合わされ一つの曲を成す形式です。本来フランス語で「腐った鍋」という意味で、雑多な食材で料理されたスープを指します。


19世紀のポプリ

ポプリという料理からわかるように音楽としてのポプリには、ソナタ形式のような厳格な枠組みが存在せずとても自由な形式です。

ジュリアーニはロッシニアーナというロッシーニのオペラの引用から作ったポプリを6曲も作曲していて、強いロッシーニ愛が感じられます。また、ポプリのようなジャンルの作曲も得意としていたのでしょう。

19世紀にはオペラや流行歌などがギターやピアノなど様々な楽器のために編曲されたり、それをもとに変奏曲やポプリが作曲され出版されました。今では忘れ去られてしまった流行歌やオペラも多く、それらをもとにした作品は数えきれないほどあります。

19世紀はもちろんインターネットの無かった時代。現代ほど娯楽の種類は多様ではありませんでした。そんな中、西洋ではオペラ(歌劇)は人気ジャンルの一つでした。ですが発想は現代と同じ。そんな音楽がもっと手軽に楽しめたら、ということで生まれたのがこれらポプリなどの音楽ジャンルです。

ポプリは今の時代で言うところの家で楽しむためのCDプレイヤーのような役割と言えるでしょうか。機能的にはDJに近いのかもしれません。ポプリには引用されるメロディーと、その曲間を繋ぐ部分があります。DJで言うところのミキシングにあたる部分です。このように、現代の我々が楽しむものも19世紀の要素から引き継がれているものがあると言うことができます。

見どころ聴きどころ

今回演奏するポプリop.67は普通のギターとテルツギターのためのギター二重奏作品で、テルツギターとは普通のギターより(3度)高く調弦されたギターです。今回はテルツギターのパートはカポタストで高くチューニングをした状態で演奏します。

テルツギターを使うことによって異なる調弦のギターが組み合わさり、様々な調の演奏がしやすくなります。ポプリ内で別の曲に移る際にもより多くの色彩(調)を組み合わせることができ、オペラのような劇的な変化を作り出すことができます。

そしてもちろん、カポタストによって高くチューニングされるということは、その分高い位置で演奏しなければなりません。3度上げたギターを四苦八苦しながら非常に高い音域を弾いている姿も今回ある意味で見どころかもしれません。

ちなみにネタバレをすると今回演奏するポプリの中にある曲で最も有名なのはベートーヴェンの交響曲7番第1楽章です。ジュリアーニはチェリストでもあり、ベートーヴェンのいくつかの演奏会にチェリストとして参加していたという記録が残っています。




近代のポプリ

最近ではメドレーというものを聞く機会はあまりないですが、メドレーというと真っ先に思い浮かんだのはこれです。個人的に好きなので動画を探してきました。

若い世代の方々にとってはあまり馴染みのないものだと思います。
ですがジュリアーニのポプリの子孫だと考えると何か聞こえ方が変わるでしょうか?


いくつか疑問があります


原曲を知らないからといってメドレーを全く楽しめないでしょうか?

逆に全て知っていたとして、メドレーという形式自体をどれくらい楽しむことができるでしょうか?


とても難しいところだと思います


いずれにせよ、私たちが過去の音楽を演奏して聴いて楽しむ時は、当時の人たちが感じていたものとは違うものがわれわれに響いてくるはずです。それでも、ポプリにおいて原曲自体の持つ活力を感じ、曲間の即興性を楽しむ行為には演奏者側にも、聞き手側にも多様な選択があるはずです。

私たちはそれらのメロディーを全く知らないかもしれません。ですが、ポプリの本来持つ躍動感を通して、なにか特別な世界に行けるような楽しい時間になれば幸いです。(藤元高輝)




井本響太 藤元高輝 Guitar Duo Concert

場所:現代ギター GGサロン (要町)
日時:2023年 8月5日 19:00開演
一般/前売り/当日:3000円/3500円 (学生/1000円)

プログラム
F. ソル : ロシアの思い出 op.63
M. ジュリアーニ : ポプリ op.67
J. ハイドン : 交響曲「ロンドン」より第一楽章 (F. カルリ編)
A. ジョリヴェ : セレナード
M. ガンギ : イタリア組曲
J. フランセ : 2つのギターのためのディヴェルティスマン

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