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井本響太 藤元高輝 ギターデュオコンサート 解説 M.ガンギ:イタリア組曲


2023年 8月5日 井本響太さんとのデュオコンサートために、noteで随時プログラムノートを公開します

以下、井本響太さんによるガンギの解説です:

Suite Italiana (1989)Mario Gangi(1923-2010)

マリオ・ガンギはイタリアのギタリスト、作曲家である。

今日、彼の名前を目にする機会は専ら校訂、編纂の方であろう。F.ソルやM.ジュリアーニ、D.アグアドを始め、F.タレガの作品の清書、校訂を行っている。それらの曲集はイタリアの出版社ベルベンから出版されている。
次に目にする機会が多いのは教則本であろうかと思う。彼は全3巻の教則本を残しており、ヨーロッパや特に南米で多く使用されているようである。

彼の残したギター作品は数十曲にも及ぶが、残念な事にその多くは今日演奏される機会が殆ど無い。彼の作風はイタリアの伝統的な舞踏や歌等から着想を得たものが多く、分かりやすく耳馴染みの良い音楽であるのが特徴だ。(一部の作品はかなり現代的な語法が用いられていたりもする)
今回演奏するイタリア組曲も例に漏れず明朗だ。
3つの曲(楽譜には第一テンポ、第二テンポ…と記されている)から成り、それぞれ
Allegro vivo
Adagio
Allegro spigliato
となっている。それぞれの曲におけるテンポの設定も急-緩-急となっており、複雑なことは何もない。至極単純であり、それが美学的である。

Allegro vivo 
最初の曲は自由な形式で書かれ、多くのモチーフが目まぐるしく行き交う。イタリアの伝統的な舞踊であるサルタレロやタランテラを思わせる朗らかなキャラクターを湛えている。そのダンサブルな付点のリズムは曲を通して絶えず支配的な役割を持ち、朗らかでのびのびとした印象のあるこの曲に僅かながらの統制と緊張感を生みだしている。

Adagio
第二曲ではイタリア音楽と言えば一番に挙がるであろうカンツォーネを思わせる息の長い華やかな歌の楽章である。アルペジオを基調とした伴奏型に滑らかな旋律が歌われる。ギター音楽でよく奏でられるスペインのカンテ・ホンドとはまた違う薫りを持ったイタリア独特の歌い回しで第一曲とは全くの別世界へと誘ってくれる。カンツォーネを思わせる旋律が目を引くが、ハーモニーはどこか印象派的な響きを持っているのも特徴だ。

Allegro spigliato

第三曲は急速で切迫感のある舞踊の音楽となっている。自由な形式で書かれた第一曲とは異なり、ここでは明確なロンド形式が用いられている。終曲にロンド形式を用いるというのも古典的で分かりやすい。朗らかな舞踏であった第一曲とはうってかわって無窮動的で切迫感があり、その衝動は度々姿を表すリフレインによって加速され膨張し、曲のコーダで一気に解き放たれた後ふと我に返るかのように突然幕を閉じる。



井本響太 藤元高輝 Guitar Duo Concert
場所:現代ギター GGサロン (要町)
日時:2023年 8月5日 19:00開演
一般/前売り/当日:3000円/3500円 (学生/1000円)
プログラム
F. ソル : ロシアの思い出 op.63
M. ジュリアーニ : ポプリ op.67
J. ハイドン : 交響曲「ロンドン」より第一楽章 (F. カルリ編)
A. ジョリヴェ : セレナード
M. ガンギ : イタリア組曲
J. フランセ : 2つのギターのためのディヴェルティスマン

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