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「暗黒恐獣」のカルテ(クソカード医学会用資料10)

まえがき

 今回のクソカード医学会に向けてコツコツと作っていた「暗黒恐獣」の治療デッキです。
 遊戯王OCG史上初の恐竜族最上級モンスター「暗黒恐獣」。もはや完全に時代に取り残され絶滅間近(というか実質滅んでる)なこのカードは治療できるのか……。

「暗黒恐獣」のカルテFile2(クソカード医学会用資料41)

暗黒恐獣について

  患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)

 一見、「弱いけどそこまで騒ぐほどか?」と思いそうになる。条件付きとはいえ、直接攻撃効果ならこの程度の打点もまあ飲み込めるし「闇の護封剣」あたりを使えば案外簡単に条件もみたせるのでは……と。
 ところがどっこい、この効果は「相手モンスターゾーンに守備モンスターのみが居れば直接攻撃できる」のではなく、「相手フィールド上に守備モンスターのみが居れば直接攻撃できる」のだ。
 つまり、相手の魔法罠・フィールドゾーンも何もなく守備モンスターしかいないというかなり厳しい条件を満たさないと意味のない効果。上記の例で言えば「闇の護封剣」に加え「ハーピィの羽根帚」が必要になる。効果を適用させる前準備の段階ですでにめんどくさいし、その手間で制圧したほうが早い

 また、モンスターを無視して直接攻撃できるということは、相手の場にモンスターが残り続ける……要は相手の反撃を許しやすいということ。反撃前に倒しきるか、モンスターをあえて残すメリットでも無い限りこれは避けて通れない問題になる。

 しかし反撃前に倒しきろうにも、攻撃力2600というのは、ダイレクトアタック3回でギリギリ初期ライフを削りきれない。微妙に打点不足でもある。

 おまけに、昨今はリンクモンスターが採用されていないデッキは少数派。リンクモンスターには守備がなく、当然守備表示もないので、リンクモンスターが出てくるだけで効果が使えなくなる。上述の通り、効果を活かそうとすると相手の場にモンスターは残りやすいのでなおさらリンクモンスターが出てきやすくなる。

 つまり、単純に弱い上にルールや環境が逆風で色々と、酷い
 とはいえ、恐竜族初の最上級モンスターであるということはそれなりに古いカードと言う意味でもあるので、多少は致し方のないことでもある。生まれた時代が悪かったのだ。

 では最新の恐竜族とはどんなカードだろう、こちらを御覧ください。

 強すぎるだろ
 打点は「暗黒恐獣」の2600どころか、「究極恐獣(3000)」「超伝導恐獣(3300)」を上回る3500。効果も「究極恐獣」「超伝導恐獣」を足して二倍したかのような強効果。その上、自己特殊召喚可能。一方でデメリットやコストは実にささやか。
 パンクラトプスやドゴランのように独自の明確な強みがある連中は別として、大抵の恐竜族最上級モンスターはほぼほぼこいつの劣化と言われかねない。まさに圧倒的な強さ……え? 暗黒恐獣? もう比較対象にすらなってないですね……。

 比較対象にすらなってないけど、「暗黒恐獣」を使おうとすると「それ『究極伝導恐獣』入れたほうがよくない???」という疑問をぶん投げられるので、兎にも角にもまず「究極伝導恐獣」と差別化しないと始まらない。
 「究極伝導恐獣」と「暗黒恐獣」の違いは「レベル」「属性」「通常召喚が可能」な点……なのだけれど、前者2つは「ダイナレスラー・パンクラトプス」等の別のライバルが出現するので、結果的に通常召喚軸で考えることになる。
 また「究極伝導恐獣」は恐竜族を除外して特殊召喚できる他、「究極進化薬」からもガンガン出てくるので、逆に言えば恐竜族を使用しない、出張枚数を抑えざるを得ないデッキならなお相性がいい。

 まとめよう。「暗黒恐獣」の問題点は、
①効果発動条件が厳しすぎる
②相手モンスターが残り続けるので反撃を許しやすい
③効果が発動しても打点が低いため勝ちきれない
④リンクモンスターの存在
⑤(差別化のため)アドバンス召喚サポートとリリースの確保が必要
 今までの患者で直面したありとあらゆる問題が詰め込まれている……。クソカード治療の応用問題か?

 遊戯王OCGは通常召喚・アドバンス召喚軸のカテゴリは少ないので、ここらへんから相性のいいものを探していきたいです。
 アドバンス召喚軸となると、やはりまず候補に上がるのは【帝】でしょう。「地帝家臣ランドローブ」は相手モンスターを裏守備にできるし、「凍氷帝メビウス」がいればバック除去も可能。アドバンス召喚サポート使えば「暗黒恐獣」に耐性もつけられる。
 ……が、そもそも【帝】は相手モンスターを避けて直接攻撃などしなくとも除去に長けているので「暗黒恐獣」を必要としていないので居場所はないです。

 アドバンス召喚というより通常召喚ですが、【時械神】も相手フィールドに残るモンスターを「時械神ラフィオン」等の効果で利用し、効果ダメージで「暗黒恐獣」打点不足も解消できるため一見好相性です。
 ……が、【時械神】は展開力がまったくないので、肝心の「暗黒恐獣」が出せない、出したら出したで今度は時械神が出せない、サポートも共有出来ないとこちらも居場所はないです。

 【クリフォート】や【真竜】はカテゴリ外と合わせづらいし、となると残るアドバンス召喚軸カテゴリは【ふわんだりぃず】。
 「ふわんだりぃずと夢の町」はやはり相手モンスターを守備表示にできるし、「ふわんだりぃずと未知の風」は相手の魔法罠もリリースコストにできる。こちらも「暗黒恐獣」と相性がいい。
 ……が、【ふわんだりぃず】で使うなら「地縛神 Aslla piscu」のほうが打点・効果・相性全てで上回っているため、ここにも居場所はない。

 相性のいいカードは案外多いのに居場所がない。なんと憐れな奴なんだ「暗黒恐獣」……。
 もはや彼に残されるのは絶滅のみなのだろうか……。

LL恐獣

 選ばれたのはLL(リリカル・ルスキニア)でした
 つまり【LL恐獣】です。「そんな【LL鉄獣】みたいなノリで!?」と思われるかもしれないがガチです。
 LLの展開力でリリースを確保できる他、「究極伝導恐獣」は(当然ではあるけど)LLと噛み合わせがいい効果ではないので、同じダイレクトアタックで削っていく「暗黒恐獣」のほうが相性が良いと断言できます。
 加えて、意外にもLLエクシーズモンスターはほぼ全員「暗黒恐獣」と相性がいいです。

 上記問題点とともに順に見ていきましょう。
 まず問題点①「効果の発動条件の厳しさ」、問題点⑤の「アドバンス召喚のメリットとリリース確保」。これらは上述の「ふわんだりぃずと未知の風」「ふわんだりぃずと夢の町」を使います。

 同じ鳥獣族デッキのLLとも相性が良いので、他の効果も無駄にならないし、LLにふわんを出張採用させることもできます。LLの展開力も加えればリリースに困ることはほぼないです。
 また、そのLLの展開力から「トポロジック・トゥリスバエナ」「LL - プロム・スラッシュ」を召喚しさらなる魔法・罠除去も行えます。「トポロジック・トゥリスバエナ」にはダメージ効果もあるので、「暗黒恐獣」の打点不足も補えますし、全体除去なのでフィールド魔法に依存するダイレクトアタッカー・地縛神との差別化にもなります。

 次に問題点③の「打点不足」。こちらは「暗黒恐獣」と同じく直接攻撃可能な「LL - アセンブリー・ナイチンゲール」や、自分モンスターの打点を上昇させられる「LL - リサイト・スターリング」でダメージを増やすことで解決します。
 また問題点②「相手モンスターが残り続ける」点は、相手の守備モンスターを「LL - リサイト・スターリング」で攻撃し、効果で反射ダメージを相手にも与えることに利用できます。

 問題点④の「リンクモンスター」は、天敵とも言える「LL - アンサンブルー・ロビン」「ふわんだりぃず×えんぺん」で対処します。えんぺんは相手に攻撃表示の特殊召喚を躊躇わせるのも利点。

 鳥獣族の全力サポートにより、「暗黒恐獣」生存ルートが見えてきました。鳥の先祖は恐竜と聞きますし、実に理にかなった治療といえます。ということにしておきましょう。

相性のいいカード

 魔法罠は相手モンスターを守備表示にするもの、サーチ、伏せ除去を主に。

・ふわんだりぃずと夢の町
・砂塵のバリア -ダスト・フォース-
 使うタイミングが違うものの、相手モンスターを裏守備にできる。破壊を伴わないかつ対象を取らないので破壊・対象耐性持ち相手にも役立つ。

・LL - コバルト・スパロー
・LL - バード・コール
・ふわんだりぃず×ろびーな
・ワン・フォー・ワン
 LLサーチ。ガンガン展開してエクシーズを構えたい。

・化石調査
・魂喰いオヴィラプター
 「暗黒恐獣」サーチとそのサーチ。おなじみ。引けないとただの鳥獣族デッキになる。「オーバーテクス・ゴアトルス」や「究極進化薬」を入れる選択肢も一応あるものの、事故率は上がるしふわんサポートが腐る。

・ツインツイスター
・ハーピィの羽根帚
・ふわんだりぃずと未知の風
 魔法罠除去。手札を増やしやすいのでツイツイコストはそこそこ手に入る。

デッキ構築

 自分ターンにはLLを展開して「LL - リサイト・スターリング」でろびーなをサーチ、相手ターンに夢の町からふわんだりぃずを展開~最後にえんぺんの効果で未知の風をサーチ&夢の町で相手モンスター裏守備&オヴィラプター召喚⇒「暗黒恐獣」サーチが理想の流れ。「終着点そこ!?」と相手はさぞ驚くでしょう。
 ふわんもLLもサーチに長け、うらら1枚程度じゃ詰まないので、この流れは案外決まります。(「増殖するG」「ドロール&ロックバード」はキツイ)
 またサーチが豊富なのでふわんの投入枚数は最小限、LLは厚めにできます。夢の町だけ初手にあると助かるので3積み。
 通常召喚と特殊召喚を両方使うので、片方潰されてもどうにかなるのも利点。

メインデッキ(40枚)
・LL - コバルト・スパロー×2
・LL - サファイア・スワロー×2
・LL - セレスト・ワグテイル×2
・LL - ターコイズ・ワーブラー×3
・LL - ベリル・カナリー×3
・ふわんだりぃず×ろびーな×1
・ふわんだりぃず×いぐるん×1
・ふわんだりぃず×えんぺん×2
・魂喰いオヴィラプター×2
暗黒恐獣×2
・ハーピィの羽根帚×1
・ワン・フォー・ワン×1
・化石調査×3
・金満で謙虚な壺×1
・LL - バード・コール-×3
・ふわんだりぃずと未知の風×1
・ツインツイスター×3
・トラップトリック×2
・ふわんだりぃずと夢の町×3
・砂塵のバリア -ダスト・フォース-×2

EXデッキ(15枚)
・LL - プロム・スラッシュ×2
・LL - アセンブリー・ナイチンゲール×2
・LL - リサイト・スターリング×2
・LL - アンサンブルー・ロビン×2
・トポロジック・トゥリスバエナ×1
・リンクリボー×1
・トロイメア・フェニックス×1
・トロイメア・ユニコーン×1
・アクセスコード・トーカー×1
・鉄獣戦線 凶鳥のシュライグ×1
・鎖龍蛇 - スカルデット×1

 デッキ運用の流れとしてはこんな感じが理想ですね。

あとがき

 というわけであまくだりさん主催の第5回クソカード医学会で披露できました! 第2回のときの「壺魔人」と併せて表示形式治療の専門医のようですね。
 内容は……これもまた壺魔人のときと同じく手札が事故り、あれだけ厚くしたLLの初動札をまったく引けなかった……。ふわんの地力と、全然想定と違うタイミングで召喚した「暗黒恐獣」でなんとかなりましたが、本番弱さは相変わらずですね……。
 未知の風で戻したピン差しのいぐるんをまた引くし……。

 発表の機会をいただき、あまくだりさんとリスナーの皆様には改めてお礼申し上げます。
 ありがとうございました。

 次回の学会はどうしよう。患者の選定中ですね。

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