「サウザンドエナジー」のカルテ(クソカード医学会用資料63)
まえがき
今回はクソカード待合室で紹介された「サウザンドエナジー」を診ていこうと思います。
待合室カードの積極的治療は医学会サーバーがやりたいだろうなと、そちらの医師の報告書が上がるのをいつも待っているのですが、今回は意外と報告書が上がらず、私もなんかいい感じの治療を思いついたのでまあいいかと投稿することにしました。
この記事の作成・公開に前後して他の方の報告書が上がってるかもですが……まあ治療法なんてなんぼあったっていいですからね。
サウザンドエナジーについて
患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)
ご覧の通り、レベル2通常モンスター限定のパンプアップ効果で、対象も狭ければターン終了時に破壊されるというデメリットまである通常魔法カードです。
当然通常モンスターを複数枚採用しなくてはならないため事故率が高くなりますし、このカード自体もサーチしづらくシンプルに使い勝手が悪いです。
攻撃力の上昇値1000もレベル2通常モンスターの平均攻撃力を鑑みると高いとは言えず、「団結の力」などのほうが仕事をします。
そしてトドメと言わんばかりに、サーチが容易で速攻魔法かつデメリットもないという上位互換が存在します。それは、
「スプライト・ガンマ・バースト」です。
「スプライト・ガンマ・バースト」はレベル2モンスター2体から「ギガンティック・スプライト」をエクシーズ召喚し、「スプライト・ジェット」を経由することで容易にサーチできます。さらにその攻撃力上昇値は「サウザンドエナジー」を2ウォークライも引き離す1400。破壊デメリットも当然なければ墓地効果まで完備しています。
スプライトとファラオは千年来の不倶戴天の敵同士というのはもはや有名です。
ガンマバーストと違い「サウザンドエナジー」は1ターンに何枚でも発動できる点で勝るものの、サーチしづらい通常魔法を複数枚手札に抱えるなど現代では正気ではなく、極論ですがカードを2~3枚使うというならスプライトの場合はしょぼい打点上昇ではなく、他に妨害を構えられますよ……という話なのでメリットとも言い難い。
待合室で指摘された通り、
①対象範囲が狭すぎる(デッキの事故率もあがる)
②上昇値が微妙
③上位互換がいる
となります。
さて、では「サウザンドエナジー」にメリットは皆無なのか?
そんなことはありません。「サウザンドエナジー」独自の個性として、レベル2通常モンスターのみを破壊できるという点があります。
「ブラック・ホール」などと違い、他のモンスターを維持したまま通常モンスターのみを破壊することにメリットが生まれるのなら、「サウザンドエナジー」にも利用法が生まれるということです。
破壊をトリガーになにかするカードは意外と多いですが、私の治療プランではこちらを採用しました。
「大樹海」は、フィールドの表側表示の昆虫族モンスターが破壊された時、そのコントローラーはデッキから破壊されたモンスターと同じレベルの昆虫族モンスターをサーチできるフィールド魔法のような永続魔法です。
これはレベル2昆虫族の通常モンスターを「サウザンドエナジー」で破壊することで、「増殖するG」をサーチ可能という意味にもなります。
とはいえ、増Gをサーチする手段は「応戦するG」など他にもあるわけですから、わざわざそのためだけにこんなコンボを使うのはあまりに効率が悪いと思われるでしょう。
では3枚、ならどうでしょうか。
「G・ボールパーク」でレベル2昆虫族通常モンスターを3体並べて「サウザンドエナジー」で一括破壊し3枚のサーチを行うならどうでしょうか。
「大樹海」にはターン1などはなく、破壊されればされるほどサーチが可能です。「G・ボールパーク」は簡単に破壊用の通常モンスターを補給でき、「サウザンドエナジー」がなくともリンク展開などに使用できます。
また最高3枚のサーチが可能ということは、増G以外の昆虫族もついでにサーチできるということです。Gは同名ターン1がありますしね。
「サウザンドエナジー」&「大樹海」だとサーチはエンドフェイズになるため、できれば手札から効果を発動できるモンスターがいいですよね。
「ワナビー!」はエンドフェイズにデッキをめくり、罠カードがあればセットできるレベル2昆虫族モンスターです。このカードで「転生の予言」「貪欲な瓶」などをセットできれば、「サウザンドエナジー」で破壊したレベル2昆虫族通常モンスターをデッキに戻せます。
他にも「騎甲虫スティンギー・ランス」や、サーチ枚数が1枚でいいなら自分ターンに「甲虫装機 ピコファレーナ」をリンク召喚して効果を使えば同じく通常モンスターをデッキに戻せます。
「G・ボールパーク」はデッキに通常モンスターが1枚あれば、そのモンスターを墓地に送り、同名カードを手札や墓地からも特殊召喚可能です。(「地獄の暴走召喚」的な)
つまり、デッキに大量の通常モンスターを投入しなくとも、同名3枚だけ採用し1枚だけ使い回せば「サウザンドエナジー」の欠点である事故率を最小にして運用することが可能なのです。
「サウザンドエナジー」とのコンボを使った後に通常モンスター1枚をデッキに戻し、相手ターンバトルフェイズに再度レベル2通常モンスターを展開。そして自分ターンにリンク素材や、「サウザンドエナジー」の本来の役割である打点強化からの総攻撃ができます。
また、"レベル2昆虫族で手札から発動でき効果持ち"という条件には「寄生虫パラノイド」も該当します。
昆虫族デッキなので、昆虫族への攻撃抑制や対象効果無効も割りと使えますが、妨害としては弱いです。
しかしパラノイドで相手モンスターを昆虫族にし、「G・ボールパーク」で再度レベル2昆虫族通常モンスターを3体並べた場合、非常に強力な動きができます。
場の昆虫族は計4体……来るぞ!
パラノイドからの「超融合」で「超騎甲虫アブソリュート・ヘラクレス」です。
ロマン展開ですが、動きが超面白い。(もちろんガルーラやドロゴンも採用しますが)
なんか強そうな動きに思えてきたでしょう。なのでこの動きをさらに詰めていきます。
千本ノック
さて、当然の問題として、肝心のレベル2昆虫族通常モンスターは何を採用するかという話になります。
該当するカードは5種類。ぶっちゃけどれも大差ないけど順番に見ていきましょう。
「デビルスコーピオン」
同条件下ではぶっちぎりの攻撃力900を誇る。「サウザンドエナジー」で1900。基本はこいつ採用で間違いない。
「ガニグモ」
同条件下では守備が最大。守備が高くて意味はないのでスモワを採用するとかでなければ使い道はない。
「ダークキラー」
「ブレードフライ」の色違い。攻守が同じなのでそういうサポートが出れば需要が生まれるかも知れない。ちなみに「ブレードフライ」と違い風属性ではなく地属性。
「昆虫人間(ベーシック・インセクト)」
攻撃力が一番低く、熱心なインセクター羽蛾ファンでもなければ採用価値はない。フレーバーテキスト的には一番合ってる気もする。
「コロガーシ」
「昆虫人間」とどっこいな攻撃力に低い守備力と一番存在意義がないが、球形のブツを持っているので「G・ボールパーク」的に相性が良く、スカラベはエジプト文明と密接な関わりがあるため「サウザンドエナジー」とも相性が良いというネタ方面で奇跡的なマッチングが見いだせてしまうため、そういう意味では一強。
というわけで私は普通に「デビルスコーピオン」を採用しました。
あとは先行時や「G・ボールパーク」のない場合でも展開を行える「クローラー・ソゥマ」を加えることで、ビートルーパーなどの昆虫族リンク展開も行いやすくなります。
理想の動きとしては、後攻ではボールパークからの自爆特攻で「デビルスコーピオン」展開、「サウザンドエナジー」で破壊してレベル2昆虫族をサーチし相手ターン妨害や「超融合」。先行ではソゥマなどで展開し、相手ターンのボールパーク発動からの自分ターン「サウザンドエナジー」で総攻撃。
これで問題点①の効果適用対象の狭さと事故率は軽減され、問題点③も「大樹海」コンボにより「スプライト・ガンマ・バースト」との差別化が可能になりました。
……しかしです。問題点②の上昇値不足は解決していません。ボールパークで相手ターンに展開し自分ターンが回ってきても、「サウザンドエナジー」を使った「デビルスコーピオン」の攻撃力は1900。正直微妙ですよね。
2~3枚発動できれば話は別ですが、そう都合のいい引きを期待するわけにもいかない。なにか確実性のある追加プランがほしいところ……。
そうしてカードプールを再度見渡すと、「サウザンドエナジー」の打点不足分を補ってくれる、それでいてこのデッキと相性のいいカードがなんと奇跡的に存在しました! どうしてこのカードを採用していなかったのが不思議なくらいです。そのカードとは!
「スプライト・ガンマ・バースト」です。
「スプライト・ガンマ・バースト」はレベル2モンスター2体から「ギガンティック・スプライト」をエクシーズ召喚し、「スプライト・ジェット」を経由することで容易にサーチできます。さらにその攻撃力上昇値は「サウザンドエナジー」を併用することで2400にもなり、「デビルスコーピオン」は攻撃力3300に達します。通常モンスターを破壊出来るというメリットが無い点で「サウザンドエナジー」には劣りますが、その分こちらは墓地効果まで完備しており、打点上昇に特化していると言えますね。
スプライトとファラオは千年来の親友同士というのはもはや有名です。
…………おや?
皆さんどうされました? なにか複雑そうな顔をされていますね。もしかして治療にスプライトを使うのはダメ系な方でしたか?
とまあ冗談はこのくらいにして真面目に解説しますと、そもそも別に下位互換と上位互換先を併用しちゃいけない理由はないです。過去にも、上位先の4枚目枠として採用された下位互換カードは往々にしてありました。
加えてこのデッキにおいては、先に示した「大樹海」コンボで通常モンスターを破壊するのが「サウザンドエナジー」のメインの役割なため、「スプライト・ガンマ・バースト」でいいじゃんとはならない=限定的に下位互換を脱し相互互換となっているのでスプライト採用は特段おかしなことではありません。(反論はガンマバーストでレベル2通常モンスターを破壊できる方からのみ受け付けます)
これぞ虫とスプライトの混成チームが、バニラ昆虫をボールになぞらえ、千(サウザンド)のエナジーでデッキに打ち返し続けるデッキ【千本ノック】です。
相性のいいカード
上記のカードでだいたい埋まる。
・「樹冠の甲帝ベアグラム」
「共振虫」でサーチ可能。除去に乏しいデッキなので②の効果もありがたいが、①の「このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の魔法・罠カードの効果の発動に対して、相手はモンスターの効果を発動できない」というのも地味に強く、このデッキでは有用。
・「トラップトラック」
罠サーチ。「ワナビー!」の当たり率を上げつつ好きなカードを持ってこれる。加えて、こいつも「大樹海」のトリガーになる。
「神隠し鬼火丸」
昆虫族ではないものの、破壊以外の除去に乏しいため。
・「ゴキポール」
・「カマキラー」
「G・ボールパーク」の墓地送りは、展開を行わないなら効果モンスターを送ってもいいので、「ゴキポール」を送って後続のサーチや、「カマキラー」を特殊召喚しての除去につながる。ダメステ発動なので妨害されづらいのもいい。
デッキ構築
「G・ボールパーク」と「大樹海」を早めに構えたいものの、「大樹海」はサーチが難しいので素引きに頼る形。
「大樹海」がなくとも「クローラー・ソゥマ」からビートルーパー展開出来るので、それほどコンボにこだわらなくても戦える。
「スプライト・エルフ」はあったほうがいいけど、禁止されそうでされないラインを揺れ動いているので抜いてます。まさか生存ルートなのか……?
使用感は思ったより強く、動きが独特なので相手からしたら妨害の打ちどころがわからないというのがよくありました。
反面、除去に乏しく、特に破壊耐性持ちの処理に難儀したので、そこは課題です。超融合は増やしてもいいかもですね。
重症度は3.2くらい。
実績。長かったので切ったけど普通に押し切れました。
あとがき
この「大樹海」ギミック、実は「八つ手サソリ」用に考えていたもので、あのカードもレベル2昆虫族です。他には「スクラップ・ワーム」とかもそうですね。意外と層が厚いので、他にもやれることは多そう。
「サウザンドエナジー」の他の利用法としては、「激流蘇生」なんかも面白そうですね。
次回は「二重の落とし穴」……ですかね? 現状はあんま治療上手くいってないですが。
他にも研究はしてますが、記事として公開できそうなのは現在他にないので、また投稿間隔は落ちると思います。