「ゴーティスの死棘グオグリム」のカルテ(クソカード医学会用資料44)
まえがき
「ゴーティスの死棘グオグリム」は2023年5月にマスターデュエルで先行実装された、紙ではまだ未発売のカードです。そんなカードを患者呼ばわりもどうかとは思いますが、まあ聞いてください。
「天よりの宝札」の治療以降なかなかお気に入りのテーマになったゴーティスの変態型デッキを私は独自に研究していました。そして、どうにも使いづらいと言わざるを得ない1体がこのグオグリムくんになります。(元々個性的ではあるものの、そんな抜群に強いテーマでも無いんですが)
どうやったら使えるかな? 他の人はどうしてるかな? とツイッタ……じゃなかったXで検索してみたところ、やはり他のゴーティス使いも似たような感想を抱いていたようでした。
つまり、今グオグリムくんの有効活用法を見つければ日本最先端……もしかすれば世界最先端のグオグリム使いになれるわけです。
グオグリム治療の第一人者……その魅力的な肩書に私は抗えず、グオグリムくんの有効活用法を探すことにしたのです。
そして『WORLD PREMIERE PACK 2023』発売まであと2ヶ月弱。もしこの治療が成功すれば、少なくとも紙のほうでは患者(クソカード)呼ばわりはされないはず。
落胆やため息ではなく、喝采と称賛を持ってグオグリムくんが紙デビューできるよう、私の戦いが始まりました。
ゴーティスの死棘グオグリムについて
患者の性能は以下の通り。(出典:マスターデュエル)
亜種カタストルな除外効果と、シンクロ素材の蘇生効果を持ちます。
パッと見、そこまで極端に弱くは見えません。除外効果はマスカレーナ産アストラム等を突破できますし、素材の蘇生も相手ターンのシンクロに繋がります。あと一応SRだし。
しかし、【ゴーティス】デッキについて深く理解すればするほど、このカードの扱いづらさが見えてくることになります。
除外効果は攻撃を介する必要があり遅く、ただ除去を行いたいなら「ゴーティスの双角アスカーン」や「白闘気白鯨」という扱いやすい手段が他にあります。とはいえ上記の通り、アストラムを処理したりという細いながら有効な使い道もあるのでこれについては選択肢としてありでしょう。
ただ「たまに役に立つ」除外効果だけで採用するのは厳しいので、蘇生効果も有効活用したいところ。
アスカーンなどの除去が役に立てない先行1ターン目などでシンクロ召喚し、相手スタンバイフェイズでの蘇生効果に価値を見出したいです。
ゴーティスチューナーは自身の効果でなくとも相手ターンに特殊召喚できれば効果を使えるので、おそらくデザイナーの意図通りにグオグリムくんの効果で再展開⇒相手ターンの妨害につなげたい。
しかし、そもそも無理してグオグリムをシンクロ召喚せずに、レベル6モンスターを置いたままチューナーのみ「最果ての宇宙」や「ゴーティスの陰影スノーピオス」で除外しておけば、少ない手間で同じ盤面が出来上がります。
むしろグオグリムの蘇生効果で特殊召喚したモンスターは除外されてしまうので、グオグリムを経由したほうが墓地リソースが減ってしまう不利益が生まれる可能性があります。
また【ゴーティス】においてレベル8シンクロを召喚する場合、ぜひ経由したいのが「ゴーティスの大蛇アリオンポス」で、基本はレベル4モンスターとレベル2ゴーティスチューナーでこのカードを出すのが初手になります。
アリオンポスは自身がシンクロ素材となり墓地へ送られると、墓地の魚族を除外しそのレベル以下の魚族をサーチ可能。選択肢としてはアリオンポス自身を除外しスノーピオスをサーチするか、チューナーを除外して相手ターンの帰還につなげるかのどちらかが主です。
……が、グオグリム蘇生効果は、墓地に素材にしたモンスターが揃っていないと相手ターンの蘇生ができません。なのでアリオンポスのサーチ効果で自身やチューナーを除外するとグオグリムの効果が使えなくなり、グオグリムを出す意味がなくなります。
また、素材のアリオンポスとチューナーを除外せず墓地に維持し、相手スタンバイフェイズにグオグリムの効果でアリオンポスとチューナーを特殊召喚⇒相手ターンに今度はアスカーン等をシンクロ召喚……を行うと、グオグリムの効果で両方墓地へは行かず除外され、アリオンポスのサーチが普通に使えなくなります。
あちらを立てればこちらが立たず、という絶妙な噛み合いの悪さを発揮しています。
というかそもそも、ゴーティスチューナーの相手ターンのシンクロ召喚は魚族モンスター縛りがあるのですが、自分のターンのシンクロであるなら好きな種族のレベル8を出せます。
「ゴーティスの双角アスカーン」や「白闘気白鯨」だけでなく、墓地が肥やせるカオスルーラー、無効効果持ちのドラガイトやクリスタルウイング、上位互換みたいな動きができるアクセルスターダストに、他にもサイフレームΩなどなど選択肢が多く、グオグリムをあえて出す状況はかなり少ないです。
さらに言えば、アリオンポスやアスカーンにはない素材縛りがなぜかグオグリムにはあるため、魚族チューナーは必須。
魚族チューナーはゴーティス以外にもいるものの、相手ターンに蘇生して意味のある魚族チューナーはゴーティスだけなので、ゴーティスで使うしか無いです。
つまりグオグリムくんは、【ゴーティス】との噛み合いが微妙な上に汎用シンクロと競わざるを得ないゴーティス専用シンクロという非常に謎な立場の存在ということになります。
問題点をまとめると、
①蘇生効果がゴーティスとやや噛み合わない
②しかしゴーティスを使うデッキでしかほぼ使えない
③自分ターンにシンクロするため、汎用シンクロモンスターと競合する
となります。縛りに関してはアスカーンと逆にするべきだったような……。
さてどうするかですが、グオグリムの蘇生効果は、読み替えれば「自分のターンに特殊召喚したモンスターを相手スタンバイフェイズにもう一度特殊召喚できる」ともとれます。
特殊召喚時になにかしらのアドを稼げるカードを素材にすれば、意味の薄かった素材の再展開もメリットに転換しますし、他の汎用シンクロとは違う個性が発揮できるので①と③の同時解決が可能です。
アリオンポスと噛み合わないならアリオンポス以外を素材にすればいいというわけです。
しかし、この条件が案外難しい。相手ターン中いつでも蘇生できるのなら除去系や墓地干渉の特殊召喚時効果を持つモンスターと好相性ですが、相手スタンバイフェイズに発動が限定されている都合上、そういった効果は腐る可能性があります。特に先行では使いづらいです。
腐る場面の少ない、特殊召喚時に展開やサーチができる効果……そしてそれが妨害につながり、ゴーティスチューナーとでグオグリムを出せるレベル6モンスターならばなおいいわけですが……。
そんな都合のいいモンスターがいるわけが……。
おるわ。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)
「深淵の獣マグナムート」は特殊召喚時に発動する、エンドフェイズのサーチ効果を持ちます。こいつをグオグリムの素材にした場合、
……とアドを稼ぎつつ妨害を構えられます。しかもこいつ、召喚権を使わないのも偉い。グオグリムのパートナーとしてこれ以上ない逸材でしょう。
しかしこれですべてが解決したわけではありません。まずそのマグナムートは制限カード。加えてグオグリムとマグナムートは相性いいですが、【ゴーティス】と【深淵の獣】は特に他にシナジーはなく、属性も噛み合いません。また上記の展開でアスカーンを出した場合、除外効果は使えるものの帰還ができません。
深淵ゴーティスは成立しない……ならばここになにか、2つのテーマの橋渡しになる+アルファがあれば……。
深淵の獣と宇宙の魚の橋渡し……いったいそんなテーマが存在するのでしょうか。
S-Ghoti
深淵の獣と宇宙の魚の橋渡しが可能なテーマ、それは時空警察【S-Force(セキュリティ・フォース)】です。世界観カオス。
【S-Force】はモンスターゾーンの縦列と除外を駆使する変わったテーマで、モンスターはすべて闇属性と光属性です。なのでビーステッドとの相性は抜群。
そしてグオグリムの素材にできるレベル6のS-Forceは「S-Force プラ=ティナ」「S-Force ラプスウェル」の2体おり、どちらも展開効果を持ちます。自分ターンに展開後にグオグリムの素材にし、相手スタンバイフェイズに蘇生すれば、そこからまた連鎖的にS-Forceの大量展開が可能です。
ただ展開するだけでは妨害になりませんが、S-Forceモンスターの正面にいる相手モンスターがフィールドから離れると、それを除外する永続効果を持つ「S-Force グラビティーノ」を並べれば、展開=妨害となり、わざわざグオグリムを経由して展開を伸ばす意味が生まれますし、除外に長けているということは、「相剣大公-承影」「最果てのゴーティス」の打点向上にもつながる等、グオグリム単体だけでなく【ゴーティス】とも好相性なテーマです。
そして、主軸となる「S-Force 乱破小夜丸」ちゃんはモンスターの除外とリクルートを行いつつ「S-Force ショウダウン」や上記のモンスターからの展開で無理やり相手モンスターの正面にS-Forceモンスターを配置可能です。
しかもゴーティスチューナーと同じくレベル2で、相手ターンに動ける効果なのも共通しているので、「スプライト・エルフ」のリンク召喚とその効果による蘇生も戦術に組み込めます。
最後に、アスカーンの帰還コストやビーステッドの餌をどうするかですが、ここはもう単純に、雑にリソースを用意するしかないでしょう。
つまり、刈ります。
これには上記のコスト問題以外のメリットがあり、まずラプスウェルやエルフの蘇生が活かせるようになります。
次に小夜丸ちゃん等の除外コストを墓地に送った「S-Force チェイス」「S-Force レトロアクティブ」で賄えるようになり、さらに「ストーンヘンジ」でゴーティスチューナーなりレトロアクティブなりを選んで蘇生しシンクロやリンク素材を揃えるのが用意となるメリット。
いくつかデッキを試したところ芝を刈らなくてもそれなりにやれますが、現代の環境だとS-Forceはリソース切れになりやすいので結局こっちの構築にしました。空いた枠には汎用カードを詰めてます。
一見まったく無関係な宇宙の魚と深淵の獣が、時空警察に加入することで除外を駆使して共闘できるようになった宇宙忍者アベンジャーズ的デッキ……【S-Ghoti(セキュリティ・フィッシュ)】です。
相性のいいカード
比率的には3:1:1で、S-Forceメインにビーステッドとゴーティスを足す感じ。
・「妖精伝姫-シラユキ」
・「剣神官ムドラ(宿神像ケルドウ)」
芝刈りといったらこれ。アギトとケルベクはティアラの多い現環境では危険すぎる。
・「アークネメシス・エスカトス」
プロートスの種族版。ドラゴンのビーステッドに魚のゴーティス、S-Forceも種族バラバラなので出しやすい。カオスモンスターやビーステッドと違い、闇属性光属性以外も除外できるため、ゴーティスチューナーの除外にも使える。属性は偏りやすいので、プロートスは使いづらかった。
・「深淵の獣ルベリオン」
・「混沌魔龍 カオス・ルーラー」
どちらも噛み合いのいい効果な上に、レベル10シンクロの素材になる。
・「S-Force ジャスティファイ」
S-Forceのエース。便利な無効効果に加えて、グオグリムくんと同じく攻撃を介して除外が可能。しかも複数。
スプライトみたいな相手を一掃できる一方で、リンクマーカーの向きから他のリンクと併用しづらかったり、こいつを出すと妨害盤面が減ったりするので使い所を見極める必要がある。
・「相剣大公-承影」
小夜丸ちゃんの除外コストに毎回反応するおっさん。除外テーマとの相性が良すぎる。
デッキ構築
理想は先行で芝刈りして小夜丸ちゃんからプラ=ティナないしラプスウェル経由でグラビティーノを出し、グオグリムくんにシンクロ。相手ターンにまた小夜丸ちゃんのリクルートと蘇生したプラ=ティナ(ラプスウェル)の展開でS-Force4体とゴーティスチューナーの盤面を作る。
これは動きの例。
後攻の場合はたくさん積んだ誘発とビーステッドを信じる。
芝刈りの不安定さを抜きにしても、相手のデッキのタイプにかなり左右されがちで、ふわんやエルドみたいなメタ系にはかなり弱い。一方でデッキ枚数多い上に除外に強い点からルーンは得意だったりする。
(※遊戯王デュエルモンスターズデータベースにゴーティスカードがまだないので、デッキ連携はなし)
メインデッキ(60枚)
・S-Force レトロアクティヴ×3
・増殖するG×3
・S-Force 乱破小夜丸×3
・ゴーティスの灯ペイシス×2
・ゴーティスの妖精シフ×2
・ゴーティスの紅玉ゼップ×1
・灰流うらら×3
・妖精伝姫-シラユキ×1
・S-Force エッジ・レイザー×1
・剣神官ムドラ×1
・S-Force グラビティーノ×2
・S-Force プラ=ティナ×3
・S-Force ラプスウェル×3
・深淵の獣マグナムート×1
・深淵の獣サロニール×1
・深淵の獣ドルイドヴルム×1
・ゴーティスの陰影スノーピオス×1
・深淵の獣ルベリオン×2
・アークネメシス・エスカトス×1
・ハーピィの羽根帚×1
・死者蘇生×1
・おろかな埋葬×1
・増援×1
・封印の黄金櫃×1
・隣の芝刈り×2
・ストーンヘンジ×2
・S-Force ブリッジヘッド×3
・復烙印×1
・ツインツイスター×2
・コズミック・サイクロン×1
・墓穴の指名者×2
・抹殺の指名者×1
・S-Force ショウダウン×3
・無限泡影×1
・S-Force チェイス×1
・烙印の獣×1
EXデッキ(15枚)
・ゴーティスの大蛇アリオンポス×1
・混沌魔龍 カオス・ルーラー×1
・ゴーティスの双角アスカーン×2
・ゴーティスの死棘グオグリム×2
・フルール・ド・バロネス×1
・相剣大公-承影×1
・最果てのゴーティス×1
・暗影の闇霊使いダルク×1
・スプライト・エルフ×1
・神聖魔皇后セレーネ×1
・S-Force ジャスティファイ×1
・アクセスコード・トーカー×1
・閉ザサレシ世界ノ冥神×1
デッキの使用感としては、除外を主軸にかなりいやらしい動きができます……が、グラビティーノの除外はモンスターだけなので、ラビュリンスや蟲惑魔の多い現環境だといまいち強みが発揮できませんね。ティアラメタがこのデッキにも刺さる上に、そのティアラが相手だと裂け目やアトラクターを積まないとキツい。S-Forceのソロモードが実装されて戦法がバレて、初見殺しが効きづらいのも向かい風ですね。
とはいえカジュアルならやや過剰なくらいの力はありますし、重症度3~4はありますね。環境がおかしいだけ。
実績は上手くグオグリムが活躍したときに限って捲くられたり、長時間のデュエルになったりで、これといったのが撮れてません。後々追加します。
あとがき
このシリーズももう44回。その縁起悪いナンバリングに死棘の名を冠するグオグリムくんを持ってこれてよかった(?)です。
頑張って個性は活かせたつもりでいますが、本当に彼は救われたのか、私は最先端のグオグリム使いになれたのか……それは『WORLD PREMIERE PACK 2023』が発売すればわかるはず。ダメな気がする。
しかし【S-Force】は使ってて面白かったし、小夜丸ちゃんが可愛いしデカいので今後もこのデッキは愛用すると思います。
ゴーティスも今後、新規が増えてグオグリム環境になるかもですし、侮れないところ。
次回はリクエストのあったホープ・カイザーですね。
その後はちょっとまだ決まってませんので、のんびりまた考えます。