「スクラップ・ビースト」のカルテ(クソカード医学会用資料46)
まえがき
WAR WAR 争いはSTOP IT……。
「スクラップ・ビースト」は第7期第1弾のパック『DUELIST REVOLUTION』で登場したスクラップのチューナーモンスターです。
最初期のスクラップでは主軸を担ったらしい歴戦の古強者で、他のスクラップカードのイラストにもちょいちょい出てくるのもあり、可愛いと主張する人もいる隠れ人気のあるカードです。
前回同様、治療リクエストが来たカードなんですが、正直言って病状がよくわかりませんでした。というのも、別に単品でのスペックはそこまで酷評に値するものでもなく、なんなら普通に使用すれば使えそうなんですよね。
【スクラップ】を回してる人からするとめちゃくちゃ使いづらいのか? ……と思えば、上記の通りかつては主軸だったそうなのでそんなはずもなく、なにがどういうことなのかまず【スクラップ】を学ぶことから始めました。
その結果見えてきた真の病状とは……。
スクラップ・ビーストについて
患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)
…………ふむ?
特に意味不明な召喚条件があるわけでも、表示形式をとりあえず変更するような効果でも、謎のデメリットがあるわけでもない。強いカードかと言われるとNOですが、クソカードとまで言われるほどかと言うと……。そういう効果持ちがとりわけおかしいだけでは?
もっと詳しく見ていく必要がありますね。
まずはバトルフェイズの自壊効果。正直、この守備力なら普通に戦闘破壊されるでしょうから、これはおまけでしょう。【スクラップ】デッキはスクラップカードの効果で自分のスクラップを破壊し、後続展開やサルベージにつなげるテーマなので、そういう意味では能動的に発動できない点は確かに微妙と言えるでしょうか。
次にサルベージ効果。これはスクラップモンスターの多くが共通して持っているもので、リソースの回復に一役買ってくれます。やはり特別強い訳では無いものの、あって困るわけでなし、むしろ【スクラップ】では有用なものです。
総合してみると、単品での性能は特段強くはないものの、癖もなく普通に使えると言ったところでしょうか。
チューナーというだけでも役割はありますし、「スクラップ・エリア」や「スクラップ・ファクトリー」のサーチ/リクルートに対応しているので、なんならそれを加味すれば優秀とさえ言えます。それを言えば「悪魔の知恵」もサーチ・リクルートは容易だけどまあ……。
……とまあ、あえてビースト本体に注目して説明してきましたが、問題はここからです。
「【スクラップ】においてまず使われるチューナーは?」とスクラップ使い100人を集めて聞けば、「スクラップ・ラプター」でほぼ満場一致となるでしょう。
召喚から「スクラップ・キマイラ」をサーチして召喚権を増やし、ラプターを蘇生してリンク2の「スクラップ・ワイバーン」、レベル8シンクロの「スクラップ・ドラゴン」、他ランク4等に繋げられる完全1枚初動の優等生で、「スクラップ・エリア」だけでなく「化石調査」にも対応しているためビーストよりさらにサーチしやすく、恐竜族にも出張でき、他にも「スクラップ・リサイクラー」と【オルフェゴール】に顔を出したりもするバイタリティあふれる期待の後輩です。
そのラプターくんはレベル4チューナー。スクラップモンスターは全員地属性なのでステータスの違いは種族くらいしかなく、個性が被りまくってるビーストくんは【スクラップ】の主軸から外れ、"4枚目以降のレベル4チューナー"か"アイドルカード"としての役割に収まってしまいました。
こうなるとやはりラプターを影から支えるサブのチューナーとしての役割が求められるわけですが、こちらはこちらで【スクラップ】の他のチューナーの面々の存在が無視できません。
特に同じレベル4獣族の「スクラップ・オルトロス」は場にスクラップモンスターが必要とは言え自己特殊召喚可能、サルベージ効果も共通しています。
ただ漫然と獣族を活かそうとしたり、サルベージ効果を使おうとすると今度はこちらと役割が被ってしまうわけです。
問題点をまとめると、
①「スクラップ・ラプター」の存在感が大きい
②種族を活かす場合、「スクラップ・オルトロス」を意識する必要がある
となります
…………が!
それはあくまで【スクラップ】で「スクラップ・ビースト」を使う際の話です。
「スクラップ・ラプター」の登場で【スクラップ】デッキに「スクラップ・ビースト」の居場所がなくなった……それは確かでしょう。
しかし「スクラップ・ラプター」がすべてのデッキでビーストに勝るかというとそうではありません。
リクエストしてくれた方を含め【スクラップ】デッキ使いの方々は……いえ、【スクラップ】デッキ使いだからこそ、スクラップにおけるビーストの力不足をよく理解している。
それゆえに【スクラップ】以外のデッキで「スクラップ・ビースト」を使う想定がおろそかになってはいないでしょうか。
「スクラップ・ビースト」が輝けるデッキを考えると……例えば【60枚レベル4軸獣族】です。
墓地に送られるとサーチ効果を使える「紋章獣レオ」、墓地からターン1のない蘇生を行える「森の番人グリーン・バブーン」「チェーンドッグ」、獣族専用蘇生カード「エアーズロック・サンライズ」……。
ここに【鉄獣戦線】を加えれば展開力と除去能力もプラスされ、リンク、ランク4、ビーストを用いたシンクロ召喚の3択の展開を自在に行えるようになります。
「スクラップ・ビースト」の元のサーチ・リクルートのしやすさに加え、キマイラやサンライズでの蘇生、「鉄獣戦線 徒花のフェリジット」の展開効果等も加えればビーストはかなり出しやすく、デッキの他のモンスターのレベルも高めなので一気にレベル8~11シンクロを出すことが可能です。レベル8シンクロには墓地肥やしに長けた「混沌魔龍 カオス・ルーラー」がいるのも大きい。
特殊召喚モンスターの「スクラップ・オルトロス」と違い、ビーストなら蘇生が容易なので差別化にもなりますし、鉄獣戦線モンスターの効果の縛りで、恐竜族のラプターを出張させづらいのもこの構築の強みです。
まさに「スクラップ・ビースト」のためのデッキ。
「スクラップ・ビースト」は【スクラップ】デッキを追放されたんじゃない。【スクラップ】を後輩であるラプターに任せ、自ら広い世界へと旅立ったのです。こうして「隣の芝刈り」を使えば本家【スクラップ】デッキ以上の強力盤面が形成でき……
……な、なんか……後出しジャンケンみたいなタイミングで急に容態が悪化した……。
制限であって禁止ではないので、どうにか芝刈りを引き込めばまだ使える……ものの、墓地だけで動けるデッキではないので「左腕の代償」での芝刈りサーチは使えませんし、先に墓地を肥やせないと展開も出来ないので「塊斬機ダランベルシアン」でのサーチも難しい。つまり「隣の芝刈り」を軸にするのはもう無理……。
「スクラップ・ビースト」を救うはずの【60枚レベル4軸獣族】が、生まれる前に先に死んだ……。
……えー、というわけで、本格的にクソカードに片足突っ込み始めた「スクラップ・ビースト」の問題点を再度まとめると、
①「スクラップ・ラプター」の存在感が大きい
②種族を活かす場合、「スクラップ・オルトロス」を意識する必要がある
③芝刈り獣族は不可
となります。さんざん偉そうなこと言っておきながらいつもの流れです。
そもそも、雑に芝を刈ってなんでも解決しようという考えが、クソカード医師として浅いんですよね。このヤブ医者めが。
反省してもっと堅実な手段で「スクラップ・ビースト」のためのデッキを考えます。
屑鉄獣戦線
とは言ったものの、結局のところ選択肢はほぼないです。 劣化ラプターからの脱却を狙うなら獣族主体のデッキ、オルトロスからの差別化を狙うならスクラップ以外のデッキにする以外ありえない。
そして芝刈りで雑なリソース確保が出来ないというのなら、構築をよりミニマムしてかつ洗練させなくてはなりません。
主軸はやはり【鉄獣戦線】。キーカードは「鉄獣戦線 ケラス」です。
自己特殊召喚可能で、手札の墓地送りとリンクモンスターの特殊召喚効果を持ちます。このカードをサーチする「鉄獣戦線 ナーベル」、それを墓地に送る「鉄獣戦線 キット」「鉄獣戦線 フラクトール」、そのフラクトールをサーチする「炎舞-「天璣」」ももちろん必要です。
自己特殊召喚できない「スクラップ・ビースト」くんを、ケラスのコストで捨てて蘇生、もしくはフェリジット経由で出そうという魂胆です。
ケラス⇒フェリジット⇒ビーストくんと出し、ビーストくんとケラスでワイバーン、そこから「スクラップ・ファクトリー」や「森の番人グリーン・バブーン」でさらに展開を伸ばし、妨害を構えるという流れ。
また、【鉄獣戦線】のモンスターは低レベルが多く、「花騎士団の白馬」も出しやすいです。このカードは獣族レベル6なので、ビーストとレベル10シンクロを狙えます。
墓地効果もバブーンの蘇生トリガーにしたり、相手の自爆特攻からの「拮抗勝負」や「サイコ・エンド・パニッシャー」の耐性剥がしをケア可能です。
さて、メインのギミックはこんなところですが、問題点が1つ。
このデッキは上手く回ればかなりの爆発力になるものの、初動はどうしても遅く、妨害で止まりがちです。芝刈り型と違い1枚1枚のリソースが貴重になってくるため、これらの展開を安定して回すには、無駄なカードなるべく削ぎ落とさなくてはなりません。
なのでやるべきは……そう、キマイラくんをクビにします。
かつて「スクラップ・ビースト」ととのコンビで【スクラップ】を牽引し、今は「スクラップ・ラプター」とズッ友な「スクラップ・キマイラ」ですが、
・召喚時にしかチューナー蘇生ができない(特殊召喚には非対応)
・チューナーではないので「スクラップ・エリア」非対応
・出せるシンクロモンスターに縛りがある
・疑似サーチできる「スクラップ・スコール」も事故要因になる
……と、召喚権が貴重なこのデッキではどうしても持て余し気味。なので逆に基本召喚権を回さない「スクラップ・コング」を採用しました。
こちらも獣族でビーストと同じサルベージ効果内蔵。もっぱらファクトリーや「スクラップ・ワイバーン」からのリクルート先として使います。
オルトロスもバブーンの蘇生トリガーになれるので一応1枚採用。
コングを引き連れ【スクラップ】を後にした「スクラップ・ビースト」が出会ったのは、なんと鉄獣戦線。
新たな仲間と新たな戦い方で屑鉄ビーストが覚醒する……そう、これがビースト覚醒デッキ、【屑鉄獣戦線】です。
相性のいいカード
「スクラップ・ビースト」自体は微妙なのに、そこから辿っていった相性いいカードは割りとガチ目。
・「アルバスの落胤」
・「烙印融合」
・「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」
出すのは主にリンドブルム、たまにミラジェイド、まれにバスタード。「烙印融合」直打ちは融合のみの縛りがつくので、極力アナコンダで出したい。ライフが減ればサイコ・エンドも活きてくるので。
・「ヴァレルロード・S・ドラゴン」
・「フルール・ド・バロネス」
・「相剣大公-承影」
・「サイコ・エンド・パニッシャー」
汎用シンクロ四天王。「スクラップ・ドラゴン」はスクラップが少ないので使いづらかった。
・「エアーズロック・サンライズ」
獣族専用蘇生。デバフも侮れない。
デッキ構築
医学会向けの内容の構築にしてますが、単純にバブーンも事故要因になるので、ランクマで使うなら減らして流行りの「クシャトリラ・フェンリル」とかにするのも選択肢だと思います。どっちにしろサイコ・エンド出るし。
レベル6の獣族、および鳥獣族・獣戦士族にパッとしたメンツが居なかったので、レベル10シンクロは諦めて展開しやすいレベル4を足してレベル8シンクロやランク4⇒アーゼウスにするとかもありですね。
獣族といえばローレベルですが、レベル4軸が充実すればさらに輝ける……はず。
デッキの使用感はとにかく立ち上がりが遅い点が問題ですね。鉄獣モンスターを引けないってことは基本無いですが、ケラス初動が出来ない場合がかなりしんどい。誘発もだいたい刺さる。
何より現環境が向かい風で、除外に強いクシャトリラとその対策のニビルが多いので、肝心の【鉄獣戦線】がキツい。リンドブルムも刺さらないし。
しかしダイヤ帯Tier2〜5を行ったり来たりするくらいの実力、何よりソロモードでは上手く回るので、重症度は3。
あとがき
【スクラップ】ではだいぶキツいものの、獣族を擁するテーマにレベル4獣族チューナーを派遣したい場合は選択肢になると思います。
例えば今後、ランク4テーマの【紋章獣】や、ランク6テーマの【陽炎獣】などに強化が来れば、獣族サポートを共有できるチューナーとしてサベージやバロネス込みの出張要員として輝ける……かも。
力不足ではあるものの、産廃と言うほど酷いわけでもないため、今後も頑張って欲しいです。最近のチューナーみんな強すぎるからしんどいだろうけど。
そういえば、紙で新規の来た【炎王】と合うんじゃないかともちょっと考えてます。セルフ破壊をメリットとするテーマ同士、特に、強くなったキリンくんと合わせてどうにか遊べないだろうか。
マスターデュエルで初めて組んだテーマが【炎王】で思い入れもあるので、マスターデュエルに実装されたら再治療するかもしれません。
次回はたぶん「魔法除去細菌兵器」です。
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