「邪悪なるワーム・ビースト」のカルテ(クソカード医学会用資料32)
まえがき
「邪悪なるワーム・ビースト」は原作のDEATH-T編で海馬が召喚し、その後「砦を守る翼竜」に戦闘破壊されただけのモンスターです。「ガーゴイル」「サイクロプス」と並ぶ、初期海馬の噛ませモンスターズの一角ですね。
他に言及すべき点はイラストがやたらキモいくらいでしょうか。そんなカード。
OCGでも第1期という最初期にカード化され、なんと原作と違い効果モンスターとなり登場しました。飛行能力を持っていたにもかかわらず通常モンスターとなった「砦を守る翼竜」とは真逆ですね。
しかしながら、この病態を見れば「むしろ通常モンスターのほうがよかった」となること請け合いの問題児と成り果てています。
25年間救われなかった「邪悪なるワーム・ビースト」を、最新医学で救ってみせましょう。
邪悪なるワーム・ビーストについて
患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)
遊戯王界最古の定時退社効果。
そう、まさかの自己バウンス効果です。
なぜ自己バウンスなのか……原作にそれらしい描写はないのですが……。「砦を守る翼竜」に飛行能力がなくなったから代わりにこっちが手札に飛びますよってコト? 最初期の効果モンスターはマジで意味不明です。
もちろん、モンスターが手札に戻るだけの効果に利点はほとんどないです。
おそらく多くの医師が「効果のないスピリットモンスターみたいなもの? これは重症だな」と思ったことでしょう。違います、そんな生易しいもんじゃないです。
比較対象として同レベル・属性・種族のスピリットモンスター「因幡之白兎」をご用意しました。よく効果を比較してください。
「因幡之白兎」等スピリットモンスターは"召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に"持ち主の手札に戻る効果。
「邪悪なるワーム・ビースト」は"自分エンドフェイズに発動する"手札に戻る効果。
同じでは?
いいえ、違います。「邪悪なるワーム・ビースト」はスピリットモンスター御用達の「強制転移」などのコントロール入れ替えコンボが使えないので。
スピリットモンスターを相手に送りつけると、エンドフェイズには手札に戻ってきます。「強制転移」なら相手のモンスターを奪えて丸得です。
一方、ワームビーストはコントロールが移った時点で"自分エンドフェイズ"はこちらから見て相手のエンドフェイズになるため、手札に戻ってこないのです。もちろんそのまま相手のエンドフェイズを迎えれば帰っては来ますが、相手は送りつけられたワームビーストをリンク素材などにするでしょうね……。
いつも定時退社する癖に相手の場では残業するわけですよこいつ。
当然スピリットモンスター専用サポートは使えませんし、「ワーム」とは付きますが属性・種族が違うため【ワーム】サポートも受けられません。
残されたのはただ手札に戻る1400打点のモンスターのみ。スピリットモンスターと違い特殊召喚できるのは唯一の利点でしょうか。
問題点をまとめると、
①効果が手札に戻るのみ
②送りつけコンボ不可
③サポートは特にない
うーん……どうしよう……。
悩みつつも、「手札に戻る」ことをメリットにできるorトリガーにするカードはないかと探してみました。
使えそうなのはまず「エレメントの泉」。
モンスターが手札に戻る度にライフを500回復できます。
これと「邪悪なるワーム・ビースト」を組み合わせることで、エンドフェイズになんと500回復可能です。
…………まあ、それだけです。
よりによって回復かよ、って感じですね。ライフアドバンテージは勝ち筋に直結しないアドバンテージなので、これだけでメリットと嘯くのはムリがあります。ていうかしょぼいよ500。
もはや打つ手はなしかと思われた時、そいつは実装されました。
「メルフィー・ラッシィ」!
このカードは獣族モンスターが手札に戻ったターンに手札から特殊召喚し、手札のメルフィーとシンクロ召喚できます。
「邪悪なるワーム・ビースト」はなんと獣族。ラッシィの効果発動条件を満たせます! メルフィーは相手ターンに展開を行う一方で自分ターンの展開は苦手。しかしワームビーストとラッシィを使えば展開することなく自分ターンに「虹光の宣告者」や「フルール・ド・バロネス」をS召喚可能できます。ワームビーストが戻るのはエンドフェイズなので、そのままラッシィの②の効果も使えて無駄がないですね。
また、メルフィーモンスターは自分エンドフェイズに手札から特殊召喚し、相手モンスターの召喚もしくは攻撃対象に選択された場合に手札に戻ります。手札に戻るんです。
メルフィーなら相手ターンで、「エレメントの泉」による連続回復が可能というわけです。
噛み合ってる……! なんか噛み合ってきてる! キモいワームと可愛いメルフィーが!
大まかではありますがワームビーストデッキが形にはなってきました。
あとはこの回復を如何に勝ち筋に絡めていくかですが……。
邪悪なるアロマメルフィー
回復と言えばアロマ。アロマセラフィですね。
「アロマセラフィースイート・マジョラム」は「メルフィー・ラッシィ」からシンクロ召喚できる偶数レベルのアロマセラフィで、自分のライフが回復する度に相手フィールドのカードを1枚破壊可能です。
またS召喚時にサーチできる「渇きの風」もライフ回復の度に相手モンスターを破壊可能。これらと「エレメントの泉」を組み合わせると、相手ターンにメルフィーが手札に戻ると回復⇒破壊となります。
従来のメルフィーデッキではそれで終わりですが、ワームビーストがいれば自分のターンでも回復⇒破壊の流れを行え、ライフアドバンテージを得つつ相手の盤面を更地とする事が可能です。
さらにワームビーストは地属性レベル3の獣族。「レスキューキャット」で同じくメルフィーと相性のいいレベル2獣族チューナー「森の聖獣 ヴァレリフォーン」とともにリクルートすれば「ナチュル・ビースト」に化けます。
さらに「魔獣の懐柔」とワームビーストが初手にあった場合は、ヴァレリフォーン含む獣族レベル2モンスター3体をリクルートすることでナチュビと「森のメルフィーズ」を並べることも可能です。魔法無効にモンスター1体の効果&攻撃永続無効となかなか厄介な盤面になります。
もちろん、このシンクロ素材としての用途自体は他の地属性レベル3獣族なら誰でも可能です……が、上記のアロマ盤面と合わせて先行後攻手札の状況で柔軟に動けるようになるのがワームビースト独自の強みとなります。
つまるところ、「邪悪なるワーム・ビースト」の役割というのは…………シンクロ軸メルフィーの潤滑油だったのです!
気ッ持ち悪い潤滑油により様々な盤面へと対応できるようになった新機軸メルフィー……【邪悪なるアロマメルフィー】の完成です。
相性のいいカード
ランク2と偶数シンクロはだいたい友達。
・「魔獣の懐柔」
・「レスキューキャット」
展開の要。懐柔は地味にターン1がない。
・「獣王アルファ」
ワームビーストと同じく手札に戻る獣族。相手モンスターのバウンスも「エレメントの泉」のトリガーになる。特殊召喚が条件付きなのでワームビーストの上位互換とはならない。
・「ホップ・イヤー飛行隊」
手札から発動し、場のモンスターと相手ターンにシンクロする。効果使用済みのカラントーサや効果無効化されたメルフィーの再利用に。
・「メルフィーとにらめっこ」
ラッシィまたはワラビィのサーチ用。手札に来てほしくないカラントーサなどをデッキに戻すのにも使用。打点で懸念が残るナチュビやマジョラムをデバフで守ることも。
・「虹光の宣告者」
・「うきうきメルフィーズ」
レベル4シンクロ。とりあえず出すのに便利。
・「フルール・ド・バロネス」
・「砂漠の飛蝗族」
・「ハーピィ・レディSC」
うきうき勢。自分ターンはもちろん、相手ターンの妨害もできるメンツ。SCのバウンスも地味に効く。
・「FNo.0 未来皇ホープ」
・「FNo.0 未来龍皇ホープ」
・「天霆號アーゼウス」
わくわく勢。シンプルに強い。こっちはナチュビと組むことがおおい。
デッキ構築
魔法無効のナチュビ+森メルフィーか未来皇のモンスター効果無効でコントロールするか、アロマとシンクロ勢で徹底的に盤面を構えさせないよう動くか。
他の強力なシンクロモンスターを足してもいいけど、「魔獣の懐柔」の縛りなどを考えるとエクシーズも用意してないとキツイ。
使用感としては「メルフィーの嫌がらせえっぐ」って感じですね。邪悪。
相手がメルフィーを警戒して動かないところにワームビーストからのバロネスとか出せて面白かったです。
ただ、ナチュビとか未来龍皇とか並べるとサレンダーとかされるし、いったん盤面できちゃうともうワームビーストの仕事ほぼないので、実績がなかなか……。「ワームビーストいたから勝てた!」みたいな実績をいつか撮りたい……。
実績。(2023/06/29追記)
あとがき
やっぱ第1期のカードはしんどい。「エレメントの泉」みたいなトリガーのカードが増えれば選択肢も増えますが、今はこれが限界です。「邪悪なるワーム・ビースト」はともかく、メルフィーは強いので重症度4くらいですね。
次はガーディアンの中では軽症な「ガーディアン・シール」か、「暗黒恐獣」の系譜を継ぐ「ドリラゴ」で考えてます。
黒蠍は……どうしよう。
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