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「洗脳ーブレインコントロール」のカルテ(クソカード医学会用資料52)
まえがき
昨日の記事は短くて内容もアレだったので連日投稿です。
「洗脳ーブレインコントロール」は原作勢にはもはや説明不要、遊戯さんが度々使用したコントロール奪取魔法ですね。
孔雀舞戦では「ハーピィズペット竜」を奪って「カタパルト・タートル」で発射、ペガサス戦では「サクリファイス」を奪って吸収されていた「タイム・ボマー」を生贄にして自爆を防ぐなど、コントロール奪取のお手本のような使い方をされ、そして今なお遊戯王史上屈指のベストバウトに挙げられる人形戦では「オシリスの天空竜」突破のキーカードとして活躍しています。他にはエスパー絽場も使用してるカードですね。
OCGでは同様の効果の「心変わり」がすでにあったためかカード化が遅れましたが、『THE LOST MILLENNIUM』でついにカード化。「ハネクリボー」や下級E・HEROなどGX初期組と同期なので、王国編から登場していたカードにしてはかなりの後発です。
「心変わり」の禁止化以降はその代替として活躍し、シンクロ召喚が隆盛を極めた2010年9月に「レスキューキャット」と同時に禁止化。「心変わり」の下位互換とはいえ、汎用魔法カードとしては一流の経歴と言えましょう。
そして2017年1月にエラッタされて制限復帰。しかしその年内には無制限となり、特に話題とならないまま今に至ります。
「心変わり」すら禁止解除な現代においては仕方ないとはいえ、流石にかつての禁止カードがこの有様とは……いったいどんなエラッタなんだ……。
というわけで、かつて神殺しを達成した原作出身の元禁止カードを診断しようと思います。
洗脳ーブレインコントロールについて
エラッタ前はこんな効果でした。
800ライフポイントを払って発動できる。
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
エンドフェイズ時までコントロールを得る。
「心変わり」の調整版といった塩梅で、以下はその比較対象。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)
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「心変わり」と比較すると、
・ライフコストが必要
・奪えるのは表側表示モンスターのみ
という違いがあります。
同じく「心変わり」の調整版の「精神操作」とはやはり上記二点で劣る代わりに、
・奪ったモンスターで殴れる
・奪ったモンスターをリリースできる
点で勝っていました。
さて、そしてそんな患者のエラッタ後の性能は以下の通り。
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800LPを払い、相手フィールドの通常召喚可能な表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。
奪えるのが通常召喚可能なモンスター限定になりました。
かつて出来ていたシンクロモンスターを奪ってシンクロ素材にしたりできなくなったわけです。現代環境でいえばエクシーズモンスターを奪ってアーゼウスを重ねたり、リンクモンスターを奪ってリンク素材にしたりできない。「深淵の獣ルベリオン」や「究極伝導恐獣」のような特殊召喚モンスターも奪えない。
それだけコントロール奪取効果が警戒されていた、パワーがあったということなのでエラッタ自体の意味はわかります。
意味はわかりますが使い所がないです。
【ふわんだりぃず】や【ラビュリンス】や【ウォークライ】など、EXデッキに頼らないデッキも確かにまだありますが、大半のデッキは切り札にEXデッキのモンスターを据えています。
相手がモンスターを展開し、こちらのターンに回ってきた状態で「洗脳ーブレインコントロール」を使うにしても、奪う相手がいないor奪いたい相手に使えない可能性が大です。対象耐性持ちが増えている点も辛いですね。
また、競合先の「心変わり」や「精神操作」は特にエラッタされず現役という点も問題です。環境が加速し、カードパワーも増加した結果、「心変わり」ですらMDでは準制限です。
そんな現代において、ただでさえその「心変わり」の下位互換気味だった上にエラッタされた「洗脳ーブレインコントロール」がそれら2枚を差し置いて投入されるかというと……。
問題点をまとめると、
①対象が限定されているせいで効果が通りづらい
②その他の点でも「心変わり」「精神操作」の下位互換気味
となります。いつもより問題が少ないですが、下位互換問題は厄介です。
さてどうするのか。
まず下位互換からの脱却を成し遂げないことにはどうにもなりません。
洗脳が「心変わり」や「精神操作」に勝っている点は一見ない……ように見えますが、あります。
洗脳は"800LP払って発動する"カード、それが上記2枚にまさる唯一の点です。
コストがあるのは劣っている要素でしょ? と思われるかもしれませんが、いいえ、違います。
手札を捨てるコストは墓地肥やしができるのと同義。
ライフを払うコストはライフを自ら減らせるのと同義。
【活路エクゾ】、【ダイノルフィア】、そして昨今の海外テーマ【GP】など、ライフを減らすことをメリットにできるデッキはいくつか存在します。
さらに、ライフが相手より低いことで追加効果を得られるカードもまた存在します。それらのカードを使用する場合において、自らライフを減らせる洗脳は「心変わり」に勝るのです。ライフコストがなければ完全下位互換になってたのは皮肉。
で、具体的に言えば、特効薬はこのカードになります。
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洗脳幽合
「幽合ーゴースト・フュージョン」は"アンデット族モンスターを素材にする融合モンスター"専用の融合カードで、本来ならフィールドのモンスターしか素材に出来ません。ですが、ライフポイントが相手より少ない場合に限り手札・墓地、そしてデッキからも1体素材にできるようになります。
主に出すのはアンデットモンスター2体を素材とする「冥界龍 ドラゴネクロ」。
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「洗脳ーブレインコントロール」でライフを消費すれば後攻1ターン目からでも「幽合ーゴースト・フュージョン」の追加効果を発揮でき、「アンデットワールド」があれば奪った相手モンスターも素材にできます。
フィールド以外から素材にしたモンスターは除外されてしまいますが、「霊道士チャンシー」なら墓地のアンデットを除外して特殊召喚⇒さらに墓地肥やしが可能。「シノビネクロ」を予め墓地に送っておけばレベル8シンクロ召喚まで繋がります。
「混沌魔龍 カオス・ルーラー」を出して墓地肥やし、ドラゴネクロとカオスルーラーで「真血公ヴァンパイア」までつなぐことができればさらに墓地肥やし。墓地リソースは盤石となります。
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しかし問題点①である洗脳の通りの悪さがここで問題となってきます。相手モンスターを奪えないことにはこのコンボは成立しないのです。
相手の場に通常召喚可能なモンスターがいるとは限らない……のならば、こちらから用意してあげましょう。
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「ヴァンパイア・サッカー」は相手の場にモンスターを特殊召喚可能なリンクモンスターで、アンデット族2体でリンク召喚が可能です。
このカードで相手が使用した素材や手札誘発モンスターを蘇生し1ドロー、その後に洗脳で奪えば効率的です。
アンデット族なら「洗脳ーブレインコントロール」とすべてが噛み合う。
【洗脳幽合】デッキです。
相性のいいカード
アンデット族と汎用シンクロ中心。
・「未界域のジャッカロープ」
・「未界域のツチノコ」
墓地を肥やさないと始まらないアンデット族において、手札のカードを捨てつつ展開できる点で相性良し。レベル3なのは「ユニゾンビ」の効果が防がれたらレベル6の「イモータル・ドラゴン」を、通ればレベル8のカオスルーラーを出せるように。
・「劫火の眠り姫 ゴースト・スリーパー」
どこからでも墓地に送られると「幽合ーゴースト・フュージョン」をサーチ可能。墓地効果も「馬頭鬼」などを回収しつつ手札を捨てられる。
・「超融合」
ご存知「アンデットワールド」があればお前とお前で超融合、ドラゴネクロを出せる。
・「交血鬼ーヴァンパイア・シェリダン」
・「真血公ヴァンパイア」
コントロール奪取したモンスターをエクシーズ素材にできる。効果も強い。
デッキ構築
基本的にはアンデットデッキとして機能するので、「ユニゾンビ」起点に墓地肥やしから入る。先行で妨害を立てづらく、後攻のほうが洗脳は当然使いやすいので、もっと捲くりに寄せてもいいかも。
使用感は上々。墓地が肥やせるかどうかにかかっているものの、ハマったときの爆発展開はすごく面白い。
ただ、アンデットデッキ自体が主要な汎用妨害がほぼ全て刺さる上にクシャトリラに弱いのでランクマはだいぶ厳しい。しかしソロモードでは過剰なくらいには強い。重症度は3.5くらいか。
実績……というか回し方の例。
【洗脳幽合】エラッタされた上に心変わりの緩和で立つ瀬のなくなった「洗脳ーブレインコントロール」は、コストでライフを消費するのでゴースト・フュージョンの追加効果条件を能動的に満たせる。奪取対象が限定される点もヴァンパイア・サッカーで相手のうららとか蘇生すればOK。 #マスターデュエル pic.twitter.com/wlHu4iCwaJ
— 幸記アキミ@good_sky (@koki_akimi) November 15, 2023
あとがき
ライフコストをメリットにできるデッキを考えてたら、手札コストをメリットにできるアンデット族に行き当たったのはなんか面白かったですね。
色々な点で洗脳が噛み合っていて、上手く収まった感じがするので個人的にはかなり好きなデッキです。
次回は「灼熱王パイロン」ですかね。モルガナイトが3枚揃ってないのでいつになるやらですが。
そのモルガナイト確保に全ジェムを費やしているので、他の治療デッキもしばらく先になりそうです。アンデット族は安上がりで助かった。