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2010.12.28 前編
朝5時半、起床。
昨夜は伝統的なネパール料理のレストランでニマさんの従兄弟たちと食事をしたが、どうやらその中のラクパさんという人が、今回私たちをサポートしてくれるガイドのようだ。
しかも、ラクパさん、相当凄腕の登山ガイドらしい。
ホテルで朝食をとった後、昨日いたはずのトリブヴァン空港に連れ戻されると、そのラクパさんが笑顔で出迎えてくれた。
でも、このとき私は、正直こんな笑顔には到底なれない精神状況だった。
それはなぜか・・・。
理由は、これから乗る飛行機にあった。
この日の予定は、カトマンズからルクラへのフライト。
ルクラは標高2,800m。
エベレスト街道の玄関口とも言うべき、ヒマラヤ登山を語る上では欠くことのできない村である。
そんなルクラにある、テンジン・ヒラリー空港(旧称ルクラ空港)までは、ここカトマンズから国内線で30分から40分程度。
30分のフライトと書くと、え~、な~んだ、そんなものかと思われるかもしれないが、この30分が世にも恐ろしい30分なのである。
今回の旅において、実はなによりも一番怖いイベントがこれからはじまろうとしていた。
どうして、私がここまで拒絶しているかというと、このルクラ行き、毎年落ちているのである。
え?なにが?
もちろん飛行機です。
墜落事故が多発する原因として、プロペラ機自体の性能も挙げられるが、やはり一番は、着陸するルクラのテンジン・ヒラリー空港の滑走路の難度である。
山の斜面を削り取り作られた滑走路の長さはわずか460m、幅も20mしかない。
加えて、不安定な山岳地帯上空を常時有視界飛行という、極めて難しい条件で飛ばなければいけない。
高地で山に囲まれている。
空気が薄く乱気流が発生し、高地なので飛行機のエンジン出力も落ちる。
滑走路も極端に短い。
滑走路の南端は、深さ600mの谷底。
もう一方の先は行き止まり。
滑走路自体も12度の勾配があり、これは10階建てのビルの高さとほぼ同じである。
したがって、オーバランも着陸復行も望めないのである。
つまり、パイロットの経験と技量がものを言う、完全ガチンコフライト一発勝負なのである。
皮肉にも、2004年から2010年までで、実に6件の事故が発生し35名の尊い命が奪われていることによって、その難度が実証されてしまっている。
そんなプロペラ機に乗らなければならない私の心情を想像してみて欲しい。
でも、この飛行機に乗らなければ、今日ルクラに辿り着くことはできない。
半ばやけくそになりながら、飛ぶならサッサと飛んでしまいたい心境だったが、そうは問屋がおろさないのが、ここネパールというお国柄。
空港に着いてから待つこと、実に4時間以上。
真っ暗だった空も、すっかり明るくなり、そろそろお昼に差掛かろうとしている。
空港職員なのか、それとも全然関係ない人なのか、うろうろしている人は沢山いるが、仕事をしている様子は見受けられない。
のん気にコーヒーをすすりながら、皆おしゃべりしている。
これには、滅入った。
ニマさんもイライラしている。
「こいつら、なんで仕事しないかな!チキショウ」
「なにやってんだまったく、こいつらバカじゃないか」
今日は、さすがに飛ばないのかなと諦めかけたそのとき、
「レッツゴー!」
突然、ラクパさんから合図が!
キターーーーーーーーーーーーーーーーー!
さっきまでのんびりしていたネパール人たちが、堰を切ったかのように、皆一気に動き出す。
再び激しく胸打つ鼓動。
よし、乗る覚悟を決めるぞ・・・という間もなく、搭乗口にゲートイン。
でも、再びロビーで停滞。
・・・と、ラクパさん「オーケィ、レッツゴーアゲイン!」
また、皆慌しく並びだす。
飛行機まではバスで移動。
アスファルトはガタガタの穴ぼこだらけで。
一抹の不安がよぎる。
だだっ広い滑走路の脇にバス止まる。
飛行機はどこ?
まだ着てないとのこと。
ここで再びしばらく停滞。
一体いつになったら飛行機に乗れるんだか・・・。
つづく