名探偵と大大阪
横溝正史を読んだことはありますか。
金田一耕助ではなく、由利麟太郎という名探偵はご存知ですか。
『蝶々殺人事件』を解決するのが由利探偵、金田一よりも前、戦前の横溝作品は由利先生が活躍していたのです。
蝶々、その事件の舞台は、大大阪時代の中之島公会堂、そこで何が起こったのか、それはぜひ作品を読み、お楽しみください。
私は読み進んでいくのと同時に、現場となった中之島公会堂とは、どんなところ?架空の建物ではない、戦前の、100年も前に建てられたものだから、もうない?ある!現存している!ならば、見に行かなければ、となった。
私の読書は、作品に寄り添って、登場人物たちに自己投影するのではなく、登場する場所へ行きたくなってしまうのです、その場所へ行き、思いきり息を吸い、小説のなかにいる空気を感じたい。
調べてみると現在は中之島公会堂ではなく、大阪市中央公会堂と呼ばれ、館内ガイドツアーまであることがわかりました。行かねば、ツアーとホテルを予約して、高速バスで大阪へ。
ツアー前日はまず場所の確認と、公会堂以外の建物を見ることに、これはまた別の機会にまとめることにいたしましょう。
ツアー当日、思えば建物ガイドツアーは初体験、ドキドキするなぁー、ガイドさんは関西弁なのかしら、とそわそわしているうちに集合時間、すぐに案内、説明が始まった。撮影も写真の投稿の許可もでて、なんだか夢中で撮りに撮りました。建物に興味を持ち始めたばかりで構図のキメ位置が分からず、スマホで同じところを何枚も何枚も、縦にしたり、横にしたりと何枚も写した、あっという間に夢のような時間が終わった。
私は建築について学んだことはなく建築用語を知りません、ただ建物を見るだけで満足できるのです、今から用語を学ぶ自信がない言い訳でもあります、学ぶことを諦め、ただ愛でることに集中するのみ。そんな私の、そのときの写真をあげておきます、2019年春のことでした。
探偵の由利先生は見事に事件を解決していきます。私は犯人を見つけることもできず、トリックなど解明できず、以前写した下手な写真を整理するだけ。それでも、建物の魅力という迷宮の入り口に立ったのかしら…… あの日、そんな幻のような感覚に陥った、それだけはしっかりと覚えています。
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